prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ハッピー フィート」

2007年04月16日 | 映画
主人公の両親の名前が「メンフィス」と「ノーマ・ジーン」というのだからびっくり。もちろん前者はエルヴィス・プレスリーの出身地、後者はマリリン・モンローの本名で、エンド・タイトルでもプレスリー風の歌はイミテーションだという断りと、モンローの権利(どんな?)もクリアしているらしい表示が出ていた。

冬を耐えるペンギンたちの姿にちらっとヘブライ風の音楽がかぶさるので、「アイス・エイジ」みたいに聖書ネタになるかと思ったら、長老の名前が「ノア」ときた。
長老たちがしきりと踊りを快楽に溺れるものだと攻撃するのは「フットルース」(一応、これ実話ネタ)で、ラブレイスという教祖ペンギンの喋り方や歌は明らかに黒人教会風。

アメリカ映画はこういうキリスト教的な物語の原型を使えるのが有利な点なのだが、一方でパターン化や説教臭さにつながったりする。

ところが、これは後半人間が絡んでくるあたりで「2001年宇宙の旅」さらには「未知との遭遇」風の展開を見せ、さらにエンド・タイトルは「スター・ウォーズ」の冒頭とは逆に近づいてくるにつれ文字が大きくなるローリング・タイトルという調子で、道具立てというより展開の飛躍ぶりがSF的でびっくり。それでいて原型は外していないのでバラけない。
3D-CGアニメだと人間のキャラクターが作り物じみて気持ち悪くなる欠点があるのだが、こういうクリアの仕方をするとは思わなかった。

もちろんミュージカルとしての音楽と踊りもたっぷり、しかもその音楽があきれるくらい多様なジャンルにわたっていて、ほとんどポピュラー音楽の展覧会みたい。

プロダクションの名前のケネディ・ミラー・プロというのは「マッドマックス」で売り出した頃にジョージ・ミラーと組んでいたバイロン・ケネディと合わせてつけた名前だが、ケネディは1983年にヘリコプター事故のため31歳で亡くなっているのを、今でもプロの名前に使っているのだから、義理堅い話。
(☆☆☆★★)