prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ショウほど素敵な商売はない」

2007年02月09日 | 映画
マリリン・モンローの主演作みたいな扱いされているけれど実質的にはゲスト出演で、本筋はエセル・マーマンやダン・デイリーなどが扮する旅芸人一家のドナヒュー一座の話。

公開当時、双葉十三郎がモンローについて歌も踊りも頑張っているが味がなく、マーマンらとの違いは「トランクの中で生まれたのと外で生まれたのとの差である」と評していた。
「見せる」芸人と「見られる」人との違い、生の観客の目にさらされてきたのと演出家の目を意識してきたのとの違いとも見える。

つまりものごころつくころから観客の前に立っていたのとそうでないのとの差で、その根っからの芸人たちの旅巡業に使われる「トランクの中」を描いているのがこの映画というわけ。
もっともその扱いは昔のハリウッド映画らしくピューリタン的マジメさが先に立っていて、いかがわしさがまるでないのが物足りない。息子があろうことかコメディでなしに神父になろうとするのですからね。ただ、信仰を文字通り歌い上げるナンバーが白人がやっていてもゴスペルがかって見えるのが面白かったりする。

それと1899年生まれのフレッド・アステアが学校と名前のつくところにはのべ三ヶ月しか通わなかったような生活様式が主に子供の教育に問題があるという点で崩壊していく時代の話でもある。
映画の中で軍人が大きな顔をしていく描写と、国家体制の確立という意味で軌を一にしているのだろう。

ミュージカル・ナンバーとすると前半の「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」があまりに盛大なので後がちょっとひっこんだ感じになるのが残念。
(☆☆☆★)