駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇星組『オーシャンズ11』

2012年02月04日 | 観劇記/タイトルあ行
 東京宝塚劇場、2012年1月4日ソワレ、15日ソワレ、31日ソワレ。

 服役中の天才詐欺師ダニー・オーシャン(柚希礼音)が晴れて仮釈放となるその日、ダニーの妻テス(夢咲ねね)の弁護士が離婚届を手に面会に訪れた。テスはラスヴェガスのホテル王テリー・ベネディクト(紅ゆずる)が新たに建設するホテルのショースターに抜擢され、ベネディクトの新しい恋人だとも噂されていた。今でもテスを愛するダニーはある壮大な計画を思いつく…
 脚本・演出/小池修一郎、作曲・編曲/太田健。日本では2002年に公開されたアメリカ映画の初ミュージカル化。

 今年の観劇初めとなりました。
 大劇場公演中から評判は聞いていましたが…たとえばベニーの扱いについてなど。年末の組替え発表もあり、この先のこの組の体制が見えるようでもありましたが…
 スターに関しては、ちゃんとオヤジ臭くでもカッコよくできていて素晴らしいチエちゃん、ダンナとケンケン喧嘩する気の強い女を生き生きのびのびやっているネネちゃん、これまた楽しそうにやっているトヨコさんと安定感抜群。
 ともみんは…たとえば『ノバ・ボサ・ノバ』役替わりでは私はやっぱりこの人が一番上手いなと思ったのですが、でも単純に好みとして好きでも嫌いでもない生徒さんでもあり、新天地・雪組での活躍を期待して見送りたい…という感じ。
 ベニーは…かなりがんばっていたけれどもっとがんばらないと正二番手としてはつらいと思うし、さらに言えば本当に次期トップスターを狙うなら本当にもっともっとがんばらないとねえ…とは思います。がんばれ!
 そしてユリカちゃんはそれこそホントにいろいろまだまだなのですが(センターもらっているフィナーレだって、しーらんやみっきーの方が明らかに上手いからねえ!)、でもやっぱり上背があるのは武器だしスターオーラがあるもんねえ、たいしたもんだよねえ。今回も何人か初心者を同伴しての観劇でしたが、みんな彼女がいいって言ったもんねえ。台湾公演もあって来年春まではチエちゃん体制なら、その次はもう100周年なんだし、次はユリカちゃんってのも若返りにはいいんだろうけれどねえ。
 と、特別ファンでないだけに冷静にいろいろ言ってしまうのでした…
 もちろんれみちゃんの実力者っぷりもすばらしい。
 しーらんやみやるりはプロローグなんかではやっぱり目立つし、どいちゃんなんかも素敵でした。
 そしてパレードでひときわ大きな拍手を一身に受ける、これでご卒業のマヤさん…私にとっては花組組長の印象が強い偉大なるベテランさん。涙、涙です…

 で、舞台としては…いかにも小池先生っぽいなあ、と。
 役を増やすためにいろいろ工夫しているところは素晴らしいし、その分庶民くさくなったというか典型的ハリウッド・ピカレスクロマン感は薄くなりましたが、現代の日本で公演するのにはこれくらいの説得力はあったほうがよかろうという考え方もわかります。
 テスを歌手にしたのはいいとして、エコロジー云々とかはやや失笑ものですし、過去の小池作品を思われるものもありますが…ま、それも含めて個性ですしね。
 お得意のはずの舞台転換も今回はやや雑に手抜きに感じるところもなくもないのですが、いろいろ大変だったのかもなあ、ということで。
 エデン、パラディッソ、アダムとイブに蛇…というイージーなイメージの連鎖も、まあいいか(^^;)。
 アトラクションのようなミュージカルとして、楽しかったからいいかなと思いました。

 ただフィナーレは、二番手役者の銀橋ソロの定番の形はいいにしても、本編でベネディクトを演じた役者にまたテスへの歌を歌わせるってのはかわいそうなんでないかい?とちょっと思ったり…
 ユリカちゃんの場面のお衣装も、ストリート系ダンサーってこういうもの?って感じだったし、男役群舞も振付は素敵だと思ったんだけれどお衣装が微妙に感じられ、競技会のラテンダンサーカップルみたいだなと思ったデュエダンのお衣装も私には微妙に感じられました…ネネちゃんのミニスカは素晴らしいと思うんだけれど。
 番手の微妙さから言って苦肉の策とはいえ、エトワールがトヨコってのもひっかかるよねえ…ちゃんと歌姫を使ってあげてほしいです。意地悪な言い方だけれど、まさこが行ったらトヨコへのこんなにものな優遇は加減されたりするのかなあ…?

 でも、これもまたこのときだけのこのメンバーでの唯一の大切な公演。そして宝塚のひとつの財産になったと思います。連日大入りのようですし、リピーターだけでなく普通の人もたくさん観てくれたんだといいなあ…




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宝塚歌劇宙組『仮面のロマネスク/Apasionado!!Ⅱ』初日遠征雑感

2012年02月01日 | 日記
 中日劇場、2012年2月1日マチネ。


 初演は東宝で一度観ています。そのあとはわりと最近(でも再演決定以前)にスカステで放送を観たきり…かな。
 ただ、原作小説も読んだし、映画や舞台もいくつか観たし(韓国映画『スキャンダル』なんておもしろかった! 時代を李氏朝鮮に移したペ・ヨンジュン主演作。参考にオススメです)、さいとうちほ先生が漫画化したものも読みました。
 そういうわけで、大好きな作品なのです。
 観ればいろいろ思い出し、比べたり考えたりで心乱れ…
 でもでもとても楽しく刺激的な観劇でした。名古屋だしそうそう通えないけれど、マジでバンバン追加したいわー。せめて毎回心込めてガン観していこう…
 以下、ガンガンネタバレで語りますので、未見の方、ストーリーをご存じない方はご留意くださいませ。

 大空さんのジャン・ピエール・ヴァルモン子爵。
 白い軍服にマントの後ろ姿で上手からセリ上がり、振り返って物語が始まる…ううう美しい。
 先行映像などではちょっとくりんくりんすぎない?とも思っていた黒髪は実際に観ると素敵でしたが、やはりちょっと頭が重たく見えてしまっていたかな?
 お衣装はとれも素敵だったなー。ホントにビジュアル力がハンパないですよね。
 演技は、スミカがわりと大芝居をやっているので、珍しく噛み合わなく感じないでもないでもない…みたいな気が正直私はしたのですが、すぐチューニングしてくるんじゃないかなー。
 というか、どうしても舞台全体がバタバタしていたところはすぐまとまってくるでしょう。それでお芝居ってまたぐっと違ってくるものですしね。

 スミカのフランソワーズ・メルトゥイユ侯爵夫人、よかったと思うの! すっごくすっごくこの役になりきっていたと思いました。
 あとはなー、歌がなー、なんかホントもうちょっとどうにかしてくれるとなー…
 仮面舞踏会の時のドレスがなんかやたら安っぽい赤に見えて(素材のせいかな?)、ちょっと残念でした。

 なんかこう、全体としては、たっぷりしたコスチューム・プレイの部分と、緻密で繊細でリアルで人間臭い心理ドラマの部分が、まだ綺麗に融和しきれていないようにも見えました。
 でも、それが上手くハマると本当にいい舞台になると思います。
 そもそもこの作品自体が、ただの恋愛遊戯メロドラマだけでなくて、そこに革命を重ねているところがよりドラマチックで重層的で深い物語になっている部分でもあるので、そういったものもくっきり見せられるようになると本当にいいと思うんですよねー。
 現状は、なんかまだまだコマ切れ感がする場面転換もけっこう多く、
「こんなにバタバタクルクル慌ただしかったかな? 完全に初見の人はストーリーを追うのにけっこう一生懸命にさせられちゃいそうだなあ…」
 と心配してしまったので。
 そこらへんはあまり観る方の慣れを要求するのもアレなはずなので、もしかしたら演出的に何か手を加えられるならもう少しなんとかしてもいい部分なのかもしれません…

 プロローグのダンスニーの口上は、ちょっと皮肉が強すぎたかも。
 ただお話に入って純朴な好青年を演じ出すと、もちろんみっちゃんは手堅く安定感抜群でした。
 ニンとして、ちょっとまさこロベールと逆配役でも観てみたかったかも…なんて。ロベール大好きなんですよね。イヤまさこロベールも忠義者っぽくて良かったのですが。

 幕開きの夜会、もっさんジェルクールがそれはもう色気ダダ漏れで、嫌がるように顔を背けながら踊るれーれセシルが本当に可憐でいじらしげで清潔感にあふれていて、すっごく構図がわかりやすかったです。
 れーれはヘンに芝居しようとして妙に色気が出すぎるときがあると私は思っているのですが、今回のセシルは清潔でよかったわー。
 ダンスニーの名を呼びながらヴァルモンに抱きつくあたりの、心をなくした感じとかもとてもよかったです。

 ドゥミ・モンド役のえつ姉がさすがのお仕事。
 せーこヴィクトワールも、わりと地味目に作っていたと思うのだけれど、きちんとしていてとても好感が持てました。

 アゾランのカチャは新鮮味がなかったかも…トムと同じに見えちゃったかなあ。
 ジュリーのアリサちゃんは口舌が良く気持ちよかったです。
 ベルロッシュも出番はそんなにない役なんだけれど、大ちゃんはいい雰囲気を醸し出してたなあ。仮面舞踏会でヴァルモンとメルトゥイユから顔を背ける芝居とか、すごくよかったです。
 あっきーやひかるんもちらちらと台詞とポジションをもらっていましたが、まだこれからかな。
 ブルジョワジーや使用人たちも、ね。

 そしてマリアンヌ・トゥールベル法院長夫人えりぃ、絶品だったわ!
 歌も良かったしなー。なんだろうなあ、ユリちゃんよりカタそうというか本当に貞操堅固そうで信心深そうで、でも根っからそうなんじゃなくて努めてそうあろうとしている…というのがよく出ていて、いじらしくて素敵でした。
 ラブシーンはどれも良かったし、すっしー方院長にもお姫様抱っこしてもらって…きゅんきゅんでした!
 幕開きの夜会の紺のドレスの美しいこと似合うこと! ヴァルモンに屈しかける(というかヴァルモンが寸止めしてくれるわけですが…何故ならそこに本当に恋が生まれてしまったからで、このあたりが実はキモなのですが、わかりづらかったよねー…)場面のブルーのドレスもいいよね。
 ヴァルモンの足にすがりつくくだり、どうしてもポーズ的にモロに顔を相手の下腹部にこすりつけるような感じになるので、あわわわわ…でした。勃つもんないけどネ!(オイ)

 最初にトゥールベルをヴァルモンがかきくどく場面ではヴァルモンが紅色の燕尾服を着ているので、なんか『NICE GUY!!』の棘さまが人間になって現れたようにも見えました(*^o^*)。
 色っぽいキスシーンだったなああ…エロネスクだわホント(ほめてます)。

 その寸止め後。
「さあ、次はセシルだ」
 の台詞がカットされたのは楽しみにしていただけに残念だったのですか…先ほどここがキモと言った、要するにこのくだりのモノローグの芝居がなかなか難しく見えました。
 ヴァルモンはトゥールベルを逃がしてやった自分に動揺しているんですよね。それが真実の恋故の行為だとは認められない。で、ちょっと煮詰まって、とりあえず棚上げにして、目の前の仕事を片づけにいく、という感じでセシルの寝室に向かうのです。
 この台詞は、そんな自分への景気づけとかテレ隠しとかいろいろなニュアンスがあるものだったと思うので、無言で向かっちゃうと、ちょっとなんか違うかなあ?と思ってしまったのだけれど…ううーむ。

 ヴァルモンがトゥールベルに対して本気になっていることを見抜き、牽制するメルトゥイユ。それはもちろん嫉妬故のもので、メルトゥイユもまた本当はヴァルモンを愛しているし、ヴァルモンの「ただひとりの人」であり続けたいと思っているのです。
 その他大勢扱いされるのはプライドが許さない。それくらいなら勝負から下りたい。だから
「お友達でいいじゃない」
「友達は嫌だ。彼女を捨てればいいんだろう!」
 きゃーっ!! たまらん展開ですよねー、萌えるわー!!!
 「恋の行方」のダンス場面も素晴らしかった、台詞が聞こえるような踊りでしたよ…!

 ヴァルモンはメルトゥイユ邸の仮面舞踏会で夫と踊るトゥールベルを相手から奪うようにして踊り、あげくに捨ててメルトゥイユと踊り出してみせる。くずおれるトゥールベル…

 ヴァルモンは報酬をもらいにいきますが、メルトゥイユは拒みます。ヴァルモンの心がまだトゥールベルにあるように思えるから。
 あるいは、本当に彼女のことは忘れて、自分のところに戻ってきてくれたのかもしれない。けれど信じられない。信じてまた裏切られるのが怖いから、傷つきたくないから、信じたくない。
 メルトゥイユもまた煮詰まって、ダンスニーを引き入れるどころか、ヴァルモンがセシルに仕掛けた策略まで明らかにし、結果ダンスニーはヴァルモンに決闘を申し込みます…

 街は革命騒ぎで騒然としています。
 かねてからの手はずどおり、メルトゥイユは家財を処分して国外へ亡命する支度をすませ、ひとりサロンに佇みます。この白いドレスがいいんですよね、喪服のようでも花嫁姿のようでもある。
 ひとり自分の心に向かい合ったメルトゥイユは、ヴァルモンの訪れを待っているのでした。決闘の結果がどうであれ、彼は必ず自分のところに戻ってくると信じて…
 そしてヴァルモンが現れる。
 宮廷と国王の運命が傾きかけている今、ヴァルモンは近衛武官として、負けるとわかっていても国王のために戦いにいきます。それが貴族の矜持だから。彼らしい生き方、そして死に方だから。
 彼はこの戦いで死ぬでしょう、そしてメルトゥイユは外国へ無事に逃げ落ちるでしょう。
 けれどそれは、ただ生きながらえたというだけのこと。
「あなたもいなくなる今日、私の命も終わるのよ」
 こんな状態になってやっと仮面がはずせて、素直になれるふたり。
「あなたが好きだったわ」
「僕も、君がいたから生きていられた」
 それはやっと吐露できた本心。今までは隠していないと社交界を生き抜けなかった真実の想い。
 ロベールが出立の時を告げます。でも、
「そうっとしておいて、私たちの時間よ」
「もうしばらくで、僕もお暇するよ」
 砲声が響き、周りに火の手が上がる中、静かに見つめあったまま踊り続けるふたり。幕。
 くーーーーーっっっ!!!!

 いやーん早くまた観たい。次は日曜日ですえーん。


 ショーは…楽しかったです。短く感じたな!
 子供の作文みたいですみません、こちらに関してはまたおいおいに…(^^;)



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