駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『カラミティ・ジェーン』

2012年02月11日 | 観劇記/タイトルか行
 ル テアトル銀座、2012年2月8日マチネ。

 1800年代。男勝りのジェーン(湖月わたる)は、同じ西部の賞金稼ぎで二丁拳銃のビル・ヒッコック(金児憲史)と出会い恋に落ちる。ふたりはともに賞金稼ぎの旅を続けるが、やがて結婚してデッドウッドの町に居を構える。ジェーンに赤ん坊が生まれ、幸せで平凡な家庭生活が始まるが…
 原作/ジャン=ノエル・ファンウィック、翻訳/浜文敏、脚色・演出/吉川徹。
 19世紀のアメリカに実在した女性、マーサー・ジェーン・カナリーの半生を題材に1950年代に映画化、その後舞台化された音楽劇。2008年に湖月主演で初演されたものの再演版。

 「音楽劇」と言っていましたし、楽しいチャンバラ西部劇アクション舞台が楽しめるのかなと勝手に思っていたのですが、意外に真面目にヒロインの半生を追った芝居になっていたので、ちょっと驚きました。
 しかもその生き様がけっこうせつない。ジェーンは現代女性とまったく同じことをやっています。
 男性と同等に仕事ができていた。楽しんでいた、やりがいもあった、稼いで生きていけていた。
 恋には男でも女でも落ちる。同じ仕事の、理解ある男性で、一緒にいて楽しくて、幸せだった。
 でも身ごもるのは女だけ。赤ん坊と家庭に縛り付けられるのは女だけ。男はあいかわらず仕事をし遊び回り出歩き、あげくに浮気なんかしたりする。
 女は男と別れる。残された子供が可愛くないわけではない、しかし稼がなければならないし、育てきれない。金持ち夫婦に預けて、自分は再び働きに出る。
 しかし時代が変わり、かつての仕事はもうない。生きるためにどんな仕事でもしていくが…
 せつない。せつなすぎます。
 そういうしんどい、せつない、たっぷりした芝居の部分と、アトラクションみたいなショーアップ場面とのバランスが、私には悪く見えました。
 パパイヤ鈴木がノリノリのウエスタン・ショー場面だって、かつては本当に西部で賞金稼ぎをして働いていたジェーンが要するにまがいものの見世物にされているわけで、楽しく手拍子なんか打てません。
 娘と再会するのに舞い上がって突拍子もない言動をしてしまうくだりも、オーバーすぎた。
 老境に差し掛かったジェーンのところに娘が訪ねてくるくだりも、その前の老婦人たちのボケ演技を笑うことなんかできませんよ。
 あそこで笑ったからこそあとで泣ける、ということ? でも笑えないよ。哀れだし、誰もが行く道なんだもん。
 この感覚がシンクロしなかったので、けっこうすすり泣いている観客も多かったのですが、私は浸りきれなかったし泣けませんでした…

 役者は好演。
 ワタルはそらイキイキしていましたし、ピッタリでした。
 初演とキャストが違うビルやバッファロー・ビルも良かったし、岡田達也や伽代子の達者ぶりはほとんど役不足なくらいでした。
 だからこそ、演出がなあ…と残念。
 あ、南海まりのスタイルの異常なまでの良さも健在でした。





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Kバレエカンパニー『シンデレラ』

2012年02月11日 | 観劇記/タイトルさ行
 オーチャードホール、2012年2月7日マチネ。

 演出・振付/熊川哲也、音楽/セルゲイ・プロコフィエフ、指揮/井田勝大、演奏/シアターオーケストラトーキョー。
 全3幕。

 オーチャードホールの二階席って初めてだった気がしますが、全体が見やすくてとても良かったです。
 舞台はセットや装置が美しく、軽妙なキャラクターたちが演じるボディランゲージが十分にわかりやすく、美しいお伽噺が展開していって、夢のようでした…
 シンデレラは松岡梨絵、王子は宮尾俊太郎、仙女は浅川紫織。意地悪な義姉たちは岩渕ももと湊まり恵、とてもよかったです。そして継母はルーク・ヘイドン。
 シンデレラが丹精している薔薇、トンポ、キャンドル、ティーカップが妖精になるのも可愛い。
 馬車を囲むコール・ドが「星」なのにもきゅんとしました。心洗われるようでした…
 どの幕も幕引き直前がなかなか素敵だったのも演劇的で良かったです。
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