2021年MBC、全17話。原題は『オッソメ 赤いクットン』で、クットンとは女官の衣服の袖の先、他の布などを当てて色が変わっている部分のことだそうです。なのでこの邦題になっているわけですが、「オッソメ」がそもそも袖先のことなのかな…? ともあれ、BSフジの放送で全27話で見ました。
主人公はジュノ演じるイ・サン。王さまの孫息子で、いわゆる王太子です。ヒロインは彼に使える女官ドギムで、『医師ヨハン』でも見ていたイ・セヨン。
ジュノは2PMの人で(アイドルグループ名…? よくわかっていません、名前しか知りませんすみません)、除隊後初の復帰作として話題となったドラマのようです。私はこういう涼しげな顔立ちの男優さんが好きなので(笑)、萌え萌えで見始めました。が…アレレ?
イ・サンというのは李氏朝鮮第22代王の正祖のことだそうで、父親とか祖父とかとのくだりは史実のようですね。ただ、カットもあるのかもしれませんがドラマの中ではきちんと、また効果的に説明・描写されていたとは言えず、中途半端でもったいない気がしました。
物語は子役時代から始まって、主人公とヒロインにこのころから関わりのエピソードがあるのはいいとして、とにかく主人公の立ち位置がよくわからないのです。サンの祖父が王さまで、つまりサンは王さまの息子の息子なんだけれど、そして普通なら王の息子が跡継ぎの太子として立てられているはずなんだけれど、父親に反抗的だったのかはたまた本当に反乱でも犯したのかそれとも何かしらの精神的な障害なんかがあったということなのか、とにかく廃嫡され、処刑されたのかとにかく亡くなっているようで、なので孫であるサンが世孫として太子扱いなんだけれど、でも子供だしまだ立太子されているわけでもないし、何かと不安定な境遇のようなのでした。正妻の子でもないようですしね…まあこれは祖父も父も母親は王妃ではなく側室のようなので、王室あるあるとして特に問題ではなかったのかもしれませんが。
で、この祖父である王さまはお年寄りなせいもあるかもしれないけれどワンマンでちょっと癇癪持ちで、全然英明だったり公正公平な感じはなく、後添いの王妃や娘である王女や孫息子に対してもややモラハラ気味で、何かと疑心暗鬼にかられては罵倒したり遠ざけたりしたかと思えば、猫撫で声で呼び寄せて甘やかす…という感じで、正直何がしたいのか、何を考えているのかよくわからないキャラでした。まあ韓ドラあるあるのモラハラ家長、ではあるんですけれどね。でもドラマの中の立ち位置がナゾなのはよくないよ、脚本の不備だと思うのよ…
そういう境遇で育ったサンは、未来の王として周りから望まれる者になろう、と子供ながらに心がけている、というかそう生きざるをえない、でないといつ祖父の逆鱗に触れて処刑されてしまうかもしれないという日常をびくびくと怯えて、しかしその怯えをなるべく表に出さないようそつなく生きる、生真面目でもの静かな少年になっていったのでした。これはせつないし、いい設定だと思いました。
でも彼が父親のことを本当はどう思っているのか、などもきちんとは描かれていず、やはりもったいなかったです。韓国では歴史的に有名なネタで、もう一定のイメージがあるということなのかなあ…でも、祖父の手前父を嫌ってみせているだけで、本当は父を尊敬していたし慕っていたので、傲慢でわからずやの祖父に敬服する振りをしつつも本当は逆らいたかったのだ…ということだと思うんだけれどなあ。そのあたりをドラマとしてもっと丁寧にきちんと描いてもいいのに、と思いました。
で、サンにはこのころから、カン・フン演じるホン・ドンノという学友がいて、彼はのちに側近として文官の長みたいなものになっていくのですが、このあたりの設定や説明もあまりなくて、ちょっとワケわかりませんでしたね…彼はどんな血筋の、どんな立場の者でこの立ち位置にいるのか、彼の真の望みは何で、それはサンの考えとどう対立するのか、なんかよくわからないままずっとモメ続けるんですもん…サンが何故ああまで彼を重用しなければならなかったのかも、よくわかりませんでした。親友だから見限れなかった、って感じでもなかったし…ナゾ。原作ありのドラマだったようなので、そのあたりに頼って説明不足で済ませたのでしょうか?
ヒロインのドギムも、中盤くらいで発覚するのですが実は父親がサンの父に仕えていた武官で、だから逆臣の家族として処刑されそうだったところをサンの生母に庇護されて、それで女官になったし彼女のスパイとして働かざるをえなかった…ということのようでしたが、なんか中途半端だし、このドラマにおける権力勾配がよくわからないので何が主役ふたりのラブのネックになっているのかよくわからず、障害の設定として中途半端でとてももったいなかったです。
また彼女は能筆で、写本が早くて得意で重宝されていて、朗読も得意で流行りの小説なんかを披露するので女官たちの人気者…みたいな設定があるんですが、これがまた後半全然機能しないんですよね。ああもったいない。せっかくのヒロインのキャラ、特性なのに…
東宮でも大殿でも、そこで働く女官はもちろんさまざまな業務をこなしてはいるんだけれど、要するに「王の女」で、お手つきとなって側室となり息子でも産めば一生安泰、みたいなコースをほぼ全員が夢見ているわけです。けれどドギムはそうではない、何故なら…というところがキモの設定なのに、全然効いてこないんですよ。ああぁもったいない…
サンの王位争いもドギムのラブ争いも、ライバルキャラが立てられていないので不発、というところもいかにも脚本が弱いのです。だからそこまで盛り上がらない。王女その他が反サン運動をしても(何故そんなにもサンを王にしたくないのかがまたなソナのですが)、対抗馬が擁立できていないので不毛なんです。この王さまには他に息子も孫もいないように見える。サンの異母弟みたいな存在がのちに台詞でだけ出てきますが、台詞だけで存在感はまるでありません。普通は太子たる主人公に叔父とか従兄弟とか兄弟とか甥とかが王位争いのライバルとしているからこそ、争いは盛り上がるのに、所詮王さまの血筋の男児はサンしかいないんだから何がどう騒がれてもサンが継ぐしかないんじゃん、としかならないわけです。それでは視聴者はハラハラしないし盛り上がらないのです。
サンの側室に関しても同様で、普通はもっと側室になりたがっている同僚女官がいるとか、あるいは正式な太子妃になれる身分の高位の家のお嬢さんキャラなんかがいるからヒロインのライバルになって争いが盛り上がるのに、そういうキャラが全然出てきません。あげく、サンはいつの間にか由緒正しき正室をもらっていて、ドギムの懐妊がわかった日に気を遣ってそっちに泊まりに行ったりしている…なんやねん、って感じです。
そう、このドラマの最大の謎は、普通はこういう設定の物語って、身分違いの恋を成就させるとか、そういうところにテーマというかゴールがあるものだと思うのですよ。王位継承者と一女官(しかも逆臣の娘、しかし実は彼と彼の父の味方だった男の娘)の恋、という物語なのですから。けれどドギムは、サンを恋するようになりこそすれ、側室にはなりたがりません。それはそれでいいですよ、ドギムを恋し側室に迎えたがるサンと、サンに恋ししかし側室にはなりたくないドギム、というジレンマでドラマは盛り上がるわけですからね。
でも、ドギムが何故側室になりたがらないのか、は明示されません。なので視聴者も彼女に感情移入できず、事情が謎のままでポカンとするしかなくて、盛り上がらないのでした。ああぁもったいない…
父親が逆臣とされているから、とか自分がサンの生母のスパイまがいのことをしているから、とかを引け目に感じているから…という理由ならそれはそれで、それが解決されてラブラブになっていく過程をこそ見たいものじゃないですか、視聴者は。でも、そんな展開にはなりません。またドギムは、側室になってしまうと自分が自分でなくなるような気がする、みたいなことも言ったりして、それは現代のフェミニズム思想なんかにも通じるので十分わかるしいいんですけれど、でもこれも口で二、三度言うだけで具体的に何がどう、ということではなく、そして解決もされないまま結局なし崩しに彼女は側室にされてしまうので、なんかワケがわからないわけです。そして彼女が本当にサンを愛しているのかも、どうも場面ごとにすら揺れているようで、毎話脚本家が違うのか?てか一話の中ですら整合性が取れてなくないか?と見ていて不安になるレベルなのでした。サンは一心にドギムを愛し求め譲歩もしてくれるし待つとも言ってくれているのに、なんか全然スッキリしないのです。それはドギムが迷っているとか、愛のためにでも捨てきれないものがあるとかそういうことではなくて、単にドラマとして中途半端にしか描かれていないので視聴者はイライラするしワケがわからなくて混乱し不安になり全然おもしろく感じられない、という意味です。
愛人のひとりに成り下がるのなんて嫌だ、とか、職業婦人として自立して生きていきたいのに、とか、束縛ばかりの籠の鳥の暮らしなんて非人間的だ、とか、なんでもいいからドギムの心理をもっときちんと表現してほしかった。でもサンを愛している、彼のそばにいたい、即位してもいろいろとしんどい政治活動のただ中にいる彼を支えてあげたい…となるなら、ではどうするか、というその解決とラブラブのハッピーエンドへのドラマを、視聴者は求めているんだし、脚本家はそれに応える義務があります。でもドギムはただ不満げにフラフラするばかりなんですよ…これは演じる女優もつらかったのではないでしょうか。後半、笑顔が全然なくて、そうしたこともテンションを下げました。そもそももっとおバカめのラブコメっぽいターンだって途中にはあったのに、いったいなんなの…(ToT)
あげく怖いのがラストです。ほとんどホラーでした。ドギムが息子を産み、しかし流行病で亡くした、というのは史実なのかもしれませんし、その後ドギム自身も早くに亡くなった、というのも史実なのかもしれません。でも彼女が今際の際に会いたがったのは親友の女官たちで(これまた3人ともいい感じにキャラ立てしていたのにこれまたなんら機能せず、ナゾの存在でしたね…)、しかしサンが彼女の死を看取り、彼女はそれを無念に思ったまま、夫を恨んだまま死ぬのです。まるで光源氏に出家の願いを許してもらえず、無念のうちに死んだ紫の上のようでした…ヒロインがこんなふうにかわいそうに死ぬドラマって、なかなかない。たとえ若くして身はかなくなろうとしても、愛の中で死ぬものじゃないですか普通…
しかもさらに怖いのが、その数十年後、今度はサンが亡くなるときに、それまでも彼はずっとドギムのことを愛していて、若かりしころのラブラブだったふたり、みたいな場面を思い出し夢に見ながら目を閉じるのですが、しかしその場面も、本当はドギムの側ではサンのことは好きでもその暮らしのことは耐えがたく思っていたころのものであり、実は全然ラブラブではなかった、ということがドラマでは改めて描写されるんですよね。でもサンは記憶を捏造して、ふたりの愛に満足して死んでいく。そしてドラマは若かりしふたりのラブラブ回想ストップモーションで終わる…いやマジでホラーだろコレは!!! こんな視聴者への裏切りってないと思うんですけど!? これでいいの!? よくないよねえぇ!?!?
…というわけで、とてもとても消化不良のまま見終えたドラマだったのでした。上手くやればもっといいラブロマンスに仕上がったはずなのに、主役ふたりの顔は好みで楽しく見てたのに、サンのドギムへの愛はいじらしくてせつなくてよかったのに、ぐぬぬ…というのが、感想です(><)。
主人公はジュノ演じるイ・サン。王さまの孫息子で、いわゆる王太子です。ヒロインは彼に使える女官ドギムで、『医師ヨハン』でも見ていたイ・セヨン。
ジュノは2PMの人で(アイドルグループ名…? よくわかっていません、名前しか知りませんすみません)、除隊後初の復帰作として話題となったドラマのようです。私はこういう涼しげな顔立ちの男優さんが好きなので(笑)、萌え萌えで見始めました。が…アレレ?
イ・サンというのは李氏朝鮮第22代王の正祖のことだそうで、父親とか祖父とかとのくだりは史実のようですね。ただ、カットもあるのかもしれませんがドラマの中ではきちんと、また効果的に説明・描写されていたとは言えず、中途半端でもったいない気がしました。
物語は子役時代から始まって、主人公とヒロインにこのころから関わりのエピソードがあるのはいいとして、とにかく主人公の立ち位置がよくわからないのです。サンの祖父が王さまで、つまりサンは王さまの息子の息子なんだけれど、そして普通なら王の息子が跡継ぎの太子として立てられているはずなんだけれど、父親に反抗的だったのかはたまた本当に反乱でも犯したのかそれとも何かしらの精神的な障害なんかがあったということなのか、とにかく廃嫡され、処刑されたのかとにかく亡くなっているようで、なので孫であるサンが世孫として太子扱いなんだけれど、でも子供だしまだ立太子されているわけでもないし、何かと不安定な境遇のようなのでした。正妻の子でもないようですしね…まあこれは祖父も父も母親は王妃ではなく側室のようなので、王室あるあるとして特に問題ではなかったのかもしれませんが。
で、この祖父である王さまはお年寄りなせいもあるかもしれないけれどワンマンでちょっと癇癪持ちで、全然英明だったり公正公平な感じはなく、後添いの王妃や娘である王女や孫息子に対してもややモラハラ気味で、何かと疑心暗鬼にかられては罵倒したり遠ざけたりしたかと思えば、猫撫で声で呼び寄せて甘やかす…という感じで、正直何がしたいのか、何を考えているのかよくわからないキャラでした。まあ韓ドラあるあるのモラハラ家長、ではあるんですけれどね。でもドラマの中の立ち位置がナゾなのはよくないよ、脚本の不備だと思うのよ…
そういう境遇で育ったサンは、未来の王として周りから望まれる者になろう、と子供ながらに心がけている、というかそう生きざるをえない、でないといつ祖父の逆鱗に触れて処刑されてしまうかもしれないという日常をびくびくと怯えて、しかしその怯えをなるべく表に出さないようそつなく生きる、生真面目でもの静かな少年になっていったのでした。これはせつないし、いい設定だと思いました。
でも彼が父親のことを本当はどう思っているのか、などもきちんとは描かれていず、やはりもったいなかったです。韓国では歴史的に有名なネタで、もう一定のイメージがあるということなのかなあ…でも、祖父の手前父を嫌ってみせているだけで、本当は父を尊敬していたし慕っていたので、傲慢でわからずやの祖父に敬服する振りをしつつも本当は逆らいたかったのだ…ということだと思うんだけれどなあ。そのあたりをドラマとしてもっと丁寧にきちんと描いてもいいのに、と思いました。
で、サンにはこのころから、カン・フン演じるホン・ドンノという学友がいて、彼はのちに側近として文官の長みたいなものになっていくのですが、このあたりの設定や説明もあまりなくて、ちょっとワケわかりませんでしたね…彼はどんな血筋の、どんな立場の者でこの立ち位置にいるのか、彼の真の望みは何で、それはサンの考えとどう対立するのか、なんかよくわからないままずっとモメ続けるんですもん…サンが何故ああまで彼を重用しなければならなかったのかも、よくわかりませんでした。親友だから見限れなかった、って感じでもなかったし…ナゾ。原作ありのドラマだったようなので、そのあたりに頼って説明不足で済ませたのでしょうか?
ヒロインのドギムも、中盤くらいで発覚するのですが実は父親がサンの父に仕えていた武官で、だから逆臣の家族として処刑されそうだったところをサンの生母に庇護されて、それで女官になったし彼女のスパイとして働かざるをえなかった…ということのようでしたが、なんか中途半端だし、このドラマにおける権力勾配がよくわからないので何が主役ふたりのラブのネックになっているのかよくわからず、障害の設定として中途半端でとてももったいなかったです。
また彼女は能筆で、写本が早くて得意で重宝されていて、朗読も得意で流行りの小説なんかを披露するので女官たちの人気者…みたいな設定があるんですが、これがまた後半全然機能しないんですよね。ああもったいない。せっかくのヒロインのキャラ、特性なのに…
東宮でも大殿でも、そこで働く女官はもちろんさまざまな業務をこなしてはいるんだけれど、要するに「王の女」で、お手つきとなって側室となり息子でも産めば一生安泰、みたいなコースをほぼ全員が夢見ているわけです。けれどドギムはそうではない、何故なら…というところがキモの設定なのに、全然効いてこないんですよ。ああぁもったいない…
サンの王位争いもドギムのラブ争いも、ライバルキャラが立てられていないので不発、というところもいかにも脚本が弱いのです。だからそこまで盛り上がらない。王女その他が反サン運動をしても(何故そんなにもサンを王にしたくないのかがまたなソナのですが)、対抗馬が擁立できていないので不毛なんです。この王さまには他に息子も孫もいないように見える。サンの異母弟みたいな存在がのちに台詞でだけ出てきますが、台詞だけで存在感はまるでありません。普通は太子たる主人公に叔父とか従兄弟とか兄弟とか甥とかが王位争いのライバルとしているからこそ、争いは盛り上がるのに、所詮王さまの血筋の男児はサンしかいないんだから何がどう騒がれてもサンが継ぐしかないんじゃん、としかならないわけです。それでは視聴者はハラハラしないし盛り上がらないのです。
サンの側室に関しても同様で、普通はもっと側室になりたがっている同僚女官がいるとか、あるいは正式な太子妃になれる身分の高位の家のお嬢さんキャラなんかがいるからヒロインのライバルになって争いが盛り上がるのに、そういうキャラが全然出てきません。あげく、サンはいつの間にか由緒正しき正室をもらっていて、ドギムの懐妊がわかった日に気を遣ってそっちに泊まりに行ったりしている…なんやねん、って感じです。
そう、このドラマの最大の謎は、普通はこういう設定の物語って、身分違いの恋を成就させるとか、そういうところにテーマというかゴールがあるものだと思うのですよ。王位継承者と一女官(しかも逆臣の娘、しかし実は彼と彼の父の味方だった男の娘)の恋、という物語なのですから。けれどドギムは、サンを恋するようになりこそすれ、側室にはなりたがりません。それはそれでいいですよ、ドギムを恋し側室に迎えたがるサンと、サンに恋ししかし側室にはなりたくないドギム、というジレンマでドラマは盛り上がるわけですからね。
でも、ドギムが何故側室になりたがらないのか、は明示されません。なので視聴者も彼女に感情移入できず、事情が謎のままでポカンとするしかなくて、盛り上がらないのでした。ああぁもったいない…
父親が逆臣とされているから、とか自分がサンの生母のスパイまがいのことをしているから、とかを引け目に感じているから…という理由ならそれはそれで、それが解決されてラブラブになっていく過程をこそ見たいものじゃないですか、視聴者は。でも、そんな展開にはなりません。またドギムは、側室になってしまうと自分が自分でなくなるような気がする、みたいなことも言ったりして、それは現代のフェミニズム思想なんかにも通じるので十分わかるしいいんですけれど、でもこれも口で二、三度言うだけで具体的に何がどう、ということではなく、そして解決もされないまま結局なし崩しに彼女は側室にされてしまうので、なんかワケがわからないわけです。そして彼女が本当にサンを愛しているのかも、どうも場面ごとにすら揺れているようで、毎話脚本家が違うのか?てか一話の中ですら整合性が取れてなくないか?と見ていて不安になるレベルなのでした。サンは一心にドギムを愛し求め譲歩もしてくれるし待つとも言ってくれているのに、なんか全然スッキリしないのです。それはドギムが迷っているとか、愛のためにでも捨てきれないものがあるとかそういうことではなくて、単にドラマとして中途半端にしか描かれていないので視聴者はイライラするしワケがわからなくて混乱し不安になり全然おもしろく感じられない、という意味です。
愛人のひとりに成り下がるのなんて嫌だ、とか、職業婦人として自立して生きていきたいのに、とか、束縛ばかりの籠の鳥の暮らしなんて非人間的だ、とか、なんでもいいからドギムの心理をもっときちんと表現してほしかった。でもサンを愛している、彼のそばにいたい、即位してもいろいろとしんどい政治活動のただ中にいる彼を支えてあげたい…となるなら、ではどうするか、というその解決とラブラブのハッピーエンドへのドラマを、視聴者は求めているんだし、脚本家はそれに応える義務があります。でもドギムはただ不満げにフラフラするばかりなんですよ…これは演じる女優もつらかったのではないでしょうか。後半、笑顔が全然なくて、そうしたこともテンションを下げました。そもそももっとおバカめのラブコメっぽいターンだって途中にはあったのに、いったいなんなの…(ToT)
あげく怖いのがラストです。ほとんどホラーでした。ドギムが息子を産み、しかし流行病で亡くした、というのは史実なのかもしれませんし、その後ドギム自身も早くに亡くなった、というのも史実なのかもしれません。でも彼女が今際の際に会いたがったのは親友の女官たちで(これまた3人ともいい感じにキャラ立てしていたのにこれまたなんら機能せず、ナゾの存在でしたね…)、しかしサンが彼女の死を看取り、彼女はそれを無念に思ったまま、夫を恨んだまま死ぬのです。まるで光源氏に出家の願いを許してもらえず、無念のうちに死んだ紫の上のようでした…ヒロインがこんなふうにかわいそうに死ぬドラマって、なかなかない。たとえ若くして身はかなくなろうとしても、愛の中で死ぬものじゃないですか普通…
しかもさらに怖いのが、その数十年後、今度はサンが亡くなるときに、それまでも彼はずっとドギムのことを愛していて、若かりしころのラブラブだったふたり、みたいな場面を思い出し夢に見ながら目を閉じるのですが、しかしその場面も、本当はドギムの側ではサンのことは好きでもその暮らしのことは耐えがたく思っていたころのものであり、実は全然ラブラブではなかった、ということがドラマでは改めて描写されるんですよね。でもサンは記憶を捏造して、ふたりの愛に満足して死んでいく。そしてドラマは若かりしふたりのラブラブ回想ストップモーションで終わる…いやマジでホラーだろコレは!!! こんな視聴者への裏切りってないと思うんですけど!? これでいいの!? よくないよねえぇ!?!?
…というわけで、とてもとても消化不良のまま見終えたドラマだったのでした。上手くやればもっといいラブロマンスに仕上がったはずなのに、主役ふたりの顔は好みで楽しく見てたのに、サンのドギムへの愛はいじらしくてせつなくてよかったのに、ぐぬぬ…というのが、感想です(><)。
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