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駒子の備忘録

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村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)

2015年01月10日 | 大空日記
 1982年秋、専業作家としての生活を開始したとき、著者は心を決めて路上を走り始めた。それ以来25年にわたって世界各地でフル・マラソンや100キロ・マラソンや、トライアスロン・レースを休むことなく走り続けてきた。旅行バッグの中にはいつもランニング・シューズがあった。走ることは著者の生き方をどのように変え、書く小説をどのように変えてきたのだろうか? 日々路上に流された汗は何をもたらしてくれたのか? 村上春樹が書き下ろす、走る小説家としての、そして小説を書くランナーとしての、必読のメモワール。

 あけましておめでとうございます。新年初の更新です。今年もよろしくお願いいたします。
 さて、こちらの本ですが、年末の大空さんフェスタでじゃんけんに勝ち抜いてクリスマス・プレゼントとしていただいたものです(笑)。『華クラ』大劇場お茶会でもじゃんけんに勝って赤いバラを一輪いただいたことがあったのですが(ちゃんと東京まで持ち帰りました)、そのときと同様、なんとなく大空さんとシンクロして「次はコレ出すな、ってことはアレ出せば勝てるな」ってのがわかって、それでゲットしました。
 フェスタでも「最近読んでおもしろかったのはシュタイナーの食物論みたいなの」とか言って会場中をぽかんとさせたくらい(自分が体調を一定に整えるために自己流でやってきた食事法みたいなものが、その本の理論で裏打ちしてもらえた気がしたらしい…)、読書家ですが乱読で読書傾向が一般的な流行とかとはかなり違っていることがファンにも有名な大空さんですが、プレゼント用にセレクトした10数冊はまあまあ一般的でした。以前読んでおもしろかったので勧めたいものや今興味があって自分も読みたいと思っているものなど、そのラインナップを見ているだけでも大空さんの人柄やものの見方、考え方が窺えておもしろかったです。
 私自身は村上春樹は昔に初期の何冊かを読んだだけで、特になんとも思わなかった記憶しかなく、その後大ブレイクしても「みんなが読んでるなら私はいいや」みたいな感じで素通りしてきたので、こういう機会に触れられてよかったです。しかもこれは小説ではなくエッセイなので、作家の考え方がダイレクトに表れますし、それを大空さんがどう捉えてどこをどうおもしろがって何故人に勧めたいと思ったのかがとてもよくわかって、おもしろい読書体験となりました。好きな人が読んでおもしろかったと言っている本を当人から勧められて読むなんて経験はなかなかないことですよね。そもそも人に本を薦めるのって意外と難しいものですし。でもそれをあえてやっちゃう大空さんが本当に愛しいし、そんな機会に恵まれてとても幸運でした。

 というわけでこの本ですが、確かにエッセイというよりはメモワール、でした。人生すべてについての回顧録ではなく、走ることに関してのみではありますが、覚え書きというか自分語りというか、なのです。
 著者はある日、小説が書きたくなって、書き上げて、応募して、受賞して、デビューして、売れちゃって、職業作家としてやっていくことにした…のだそうです。で、小説家として長くやっていくにあたり、作品をコンスタントに書いていくためには体力が必要だし規則的な生活が必要だ、ということで走り始めたようです。ものすごく勝手な要約ですが。
 で、単なるランニング程度だとアレなので、年に何回かレースに出ることを目標にコンディションを整えていくようになって…ということで、今もストイックなまでの生活を続けているようです。
 このあたりが、大空さんの日々の暮らしに通じるものがあるのかな、と私は思いました。著者はあくまで小説家を本業としていて、その生活というか精神を支えるために走っていて、その課程にレースがあるのですが、大空さんにとってはこのレースが公演で、それに向けて日々コンディションを整え走るランニングがお稽古にあたるのかなあ、と。日々のランニングや年数回のレースの先に、著者の最終的な目的としていい小説を書くことがあるように、大空さんにとっては日々のお稽古と年数回の公演の先に「大空祐飛」なるものを作り上げることが最終的な目標としてあるのかな、とかね。
 大空さんは、現役時代にそれをずっと作ろうとしていて、自分がそれらなろうとしてきて、ついにやっと自然にいられるようになったから卒業を決めた、みたいなことをフェアウェルなどでも語っていました。
 今の「大空祐飛」は宝塚歌劇団の生徒の、とか宙組トップスターの、という枠はなくなっても、本名の大空さん(ヘンな言い方ですが)と表裏一体というかまさに一心同体として今もあって、今後もその名前で役者として働いていき生きていくのだ、と決心したからこそまた舞台に戻ってきてくれたのだろう、と私は思っているのです。
 大空さんがこの本を読んだのが最近なのか現役の頃なのかはわかりませんが、おそらくシュタイナーのときと同じで、自分にとってベストの方法であろうものをずっと自己流に模索してきてある程度つかんだと思えたものがあって、それと同じようなことを他の人もしていてやっぱりどうやら正しい方法らしい、と思えた喜びがこの本を読んだときにあったんだろうな、と思うと、その「そうそう、そうなのよ!」と膝を打ちながら読書する大空さんを想像するだけで微笑ましくて私は幸せになってしまうのでした。イヤあくまでこちらの勝手な想像なんですけれどね。
 翻って自分自身を見れば、好きな仕事について日々楽しくまた苦しく働いていますが、自分の名前を出して自分だけの力量で勝負するというよりはやはり組織の一員として円滑に業務を回すことに専心するタイプの仕事ですし、仕事があるから食べていけてそれで幸せに生きていくつもりですが、最終的になにものかになろうと目指しているとか日々研鑽しているとかはない怠惰な流され人生でもあるわけで、著者のストイックな姿勢にも感心はするのですが共感はしづらいというか「すごいねえ、そういう人もいるんだねえ」って感じで、お恥ずかしい限りではあります。
 でももちろんだからこそ大空さんのような人にシビれるのだろうし、素敵だなと思うわけですけれどね。せめてファンとして見苦しくない程度にはありたいと思いますが、今さら性格も生き方も変えられないでしょうし、今後も私はゆるゆると人生をいき、ゆるゆると好きな人の才能を応援をし続けたいと思っています。
 なんか読書の感想じゃないな、これは大空日記カテゴリーかな。
 まあでもいいや、そんなこんなで今年もゆるゆるとよろしくお願いいたします!





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