駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『ベイマックス』を見ました

2015年01月22日 | 日記
 先日『ベイマックス』を観てきました。
 私は舞台に比べたら映画は全然観ていないのですが、これでも仕事柄、一応は話題作は押さえておこうと思ってはいるのです…(この言い訳の「は」多さよ!)
 それはともかく。
 『アナ雪』ほど世間は盛り上がっていない気がしましたし、あまり期待して行かなかったせいか、かえって私はとても楽しく観てしまいました。SF心が揺さぶられました。
 お話はサンフラントウキョウという架空の近未来都市を舞台にしていて、それはアメリカ人が考える日本、東京というよりは、SFファンが考えるもっと古くからある近未来都市のイメージに私には思えて、そういうのも楽しかったです。たとえば『ドラえもん STAND BY ME』で描かれていた未来の東京とほとんど同じでしたものね。クラシックで、かつ中二っぽい(笑)。
 あと、お店の看板とかに出てくる漢字なんかが正確なのがよかった(笑)。せっかく日本やらアジアやらを模しているのに漢字がウソ絵柄みたいになっていたりするのは本当にしょんぼりするので。そういうディテールのリアリティーこそ大事だと思っているので。
 また、キャラクターの芝居、特に主人公ヒロの表情がとても豊かで繊細だったのがよかったなあ。組む相手がいないのでそういう意味で萌えられなかったのは残念でしたが(オイ)。私は日本のリミテッド・アニメももちろん愛しているけれど、やはりディズニーアニメーション(ピクサーアニメというべきなのかな? くわしくなくてすみません)のこの動きはそれはそれで素晴らしいと思うのでした。
 キャラクター造形もよかったです。ストーリーは単純だけれどね。才能に恵まれているが未来が見えない主人公、というおもしろいところからスタートしているのに、仲間とチームを組んでスーパーヒーローになって悪を倒すって流れになるところがなんとも古いアメリカンコミックで、斬新さや哲学的なところがなかったのは残念でした。だから『アナ雪』のような爆発力は持てなかったのでしょう。
 まあでもわかりやすくていいんじゃないですか?って感じでした。それより私が震えたのは、この作品に通底する「ロボット観」みたいなものです。私はベイマックスに鉄人28号を見ました。
 これは漫画家のゆうきまさみさんがどこかで語っていたことなのですが、日本は八百万の神の国で物にも魂が宿ると考えがちだし、『鉄腕アトム』のように心を持つロボットすら生み出してしまう国です。
 でも鉄人28号はあくまでロボット、純粋な機械です。だからコントローラーが悪役に奪われたりすると、悪役の命令のままに動いて悪さをしちゃったりするのです。それが幼き日の自分にはすごくクールに思えた、人間みたいなロボットが安易なくらい多かった当時にそれを描いた横山光輝先生はすごい…というような話です。
 だから彼は『機動警察パトレイバー』をああいう形に描いたのでしょうね。あくまで機械であり乗り物でもあるロボットと、それに名前をつけて可愛がって乗る主人公。
 私は実は『鉄腕アトム』も『鉄人28号』も原作漫画もテレビアニメも見たことがなくて、SF世代としてはゆうきさんよりひとつないしふたつあとの人間です。ロボットアニメを見て育ちましたが、子供時代を脱して考えながら見るようになった最初の作品は『機動戦士ガンダム』という世代です(もちろんいわゆるファーストです)。
 アムロはガンダムにこだわったけれど、それは「僕が一番ガンダムを上手く操縦できるんだ!」という形でであり、野明がイングラムを愛したように愛したわけではありませんでした。その違いもおもしろい。それは主人公の性別の違いによるものではなく、作品が生まれた時代の空気の違い、思想の進化によるものだと思います。
 そして人間側の立ち位置は違っても、どちらも機体は心を持ったり人間に応えたりはしません。あくまで機械。そこがまたいい。
 ベイマックスはふかふかだしのんきな行動をするし、一見とても人間っぽいユーモラスなロボットです。でもそれはタダシのプログラムに従って動いているからであり、ヒロが攻撃的なプログラムで動かせば攻撃的に動いてしまうのです。その怖さ、恐ろしさ。こういう視点はとても大事だと思いました。
 そしてケアロボットのくせに、人間が大丈夫でないときにも「大丈夫」と言ってしまうことがあることを理解できず、そういう悲しい寂しい嘘が見抜けず、言葉どおりに受け取ってしまう機械ならではのダメさ加減を持っている…愛しかったです。
 機械に心が簡単に芽生えてしまったらそれはファンタジーになってしまう。SFってそういうものじゃない。もっとクールなんです(「涼しいわけではありません、ロボットですから」!)。
 そこがとてもよかった映画だと、私は思いました。



 

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