駒子の備忘録

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ゲキ×シネ『薔薇とサムライ』試写を観ました!

2011年05月14日 | 日記
 2010年に公演された劇団☆新感線の舞台を「映画のように楽しめる作品」として映像化したもので、舞台中継映像とは一線を画す、とのことでしたが、まさしく!でした。

 作品としては『五右衛門ロック』のパラレルストーリーで、こちらは私は新宿コマ劇場で観ましたが、楽しかったんだけど音響が悪いのに閉口したのと、とにかく長いなと思ったのが印象に残っているのです。
 今回もまあ長いは長いんだけど、そして元の舞台を観ていないので比べられないのだけれど、断然観やすくなっているのではないかと思うのですよね。

 舞台はどうしても客を選ぶというか、ぶっちゃけこの公演も超プラチナチケットだったわけで、特に地方の方なんかは観に行きたくてもいけないということもあると思うですが、映画だったらまだハードルは下がるし、もちろん生の舞台の迫力とか楽しさとかとはまた別物になってしまうのだけれど、でもやはりより洗練されてわかりやすく大衆的にメジャーになっている仕上がりだと思うのですよ。
 また映画館でも観たい&DVDが出るなら舞台の中継ではなくこのゲキ×シネのDVDが私は欲しいです。

 『五右衛門ロック』では主人公というよりはほとんど狂言回しのようだった五右衛門(古田新太)が今回はちゃんとヒーローとして立っていたのもイイ。
 ヒロイン…というか女主人公はユリちゃんこと天海祐希演じるアンヌ、女海賊アンヌ・ザ・トルネード。序盤は眼帯ですよ!
 五右衛門はアンヌの用心棒。五右衛門はアンヌに惚れているようではありますが、基本的にはラブストーリーではなく、冒険活劇です。
 アンヌがとある小国の王位継承者だと判明するところから始まる物語なので、まあ彼女が主人公ではあるわけです。

 私は、たとえば貴種流離譚ってとってもよくある物語なわけで、それだけロマンを誘い愛されている物語なのだとは思うのですが、安易なものも多いと思っていて、たとえばそれまで一介の民間人だった者がふいに王座につけられて、それではたしてそんなに簡単に王になれるものなのか、つまり王位にふさわしい人間に変われるものなのか、いやそんなこたないだろうとかすごく考えてしまうんですね。
 私は、王には帝王教育というものが確かに必要で、ノーブレス・オブ・リージュというものも確かに存在して、帝王たる者には絶大な権力や富や栄光が与えられる代わりに犠牲にするものも多く、庶民的な普通の幸せなんかは望むべくもない(『エリザベート』でフランツがプロポーズの歌で歌うようなことですね)ものだと思っていて、だからこそ萌えるのだ、と考えているのです。
 地位とかに縛られて、それでもそれをまっとうしようと痩せ我慢する姿に萌えるの(^^;)。
 あくまでフィクションとして、ということですが。
 で、こういうネタに付随して、入れ替わりものとか、成り代わりもの・身代わりものとかがよくあるわけですが、こういう私にはなんかイージーに感じられるものが多くて、今まで納得した、感動した、これが私の見たかったものだ!というような作品に巡り合ったことはないような気がするのですよ、えらそうですみませんが。

 でも、この作品はよかった。
 二転三転、いろいろあったけれど、アンヌはもともと親分肌で仲間に慕われる女海賊だったわけだし、舞台が国政に変わってもその才能を変わらず発揮していくことでしょう、とストレートに思えたのです。

 ただ、王者であることで犠牲にされる小さな幸せの筆頭は恋愛だったりするわけで、このお話ではそこはスルーされているので本当はその問題はあるかもしれません。
 アンヌと五右衛門が恋仲だったりすると、立場が変わることで一緒になれない愛し合うふたり、相手の幸せや自分の義務のために恋を捨てざるをえないふたり…みたいな形になるわけで、当然だしせつないんだけどやはりしょっぱくなる。
 このお話はそこは華麗にスルーしていて、だからこそ清々しかったのかもしれません。
 犠牲にするものを描かなかったことで、犠牲がなくても幸せが得られることもありえる、この先お互い自分の立場に合った伴侶と巡りあい恋に落ち結ばれることだってあるわけだからさ、と夢見る余地が残されたからです。

 「恋すれば女は薔薇、男はサムライ」みたいなことが主題歌で歌われ、タイトルはそこからきているのでしょう。
 恋をしたら女は美しく咲き、男は凛々しく立つ、ということかもしれません。
 しかし主役のふたりは恋仲ではないので、私はむしろ、男性が騎士として、支えとしていてくれれば、女は十分王者として咲ける、立てる、ということなのかな、と思ってしまいました。
 リーダーはいつも男で、女はそれをサポートするだけ、あるいは家庭で支えて待っているだけ、とかではなくて。
 女だってリーダーになれる。むしろ公正で公平で賢いリーダーになるには女の方が向いているのかもしれない。
 突き詰めれば私はアマゾネスの国には戦争がないと思っているし、妊娠や出産が科学的にコントロールされるような未来にはぶっちゃけ男はいらなくなるかもしれないけどねとか男がいなくなった方が戦争がなくなって世の中平和になっていいだろうけどねくらい考えているのですが、その一方で少女漫画的恋愛を信じているロマンティストでもあるので、女が王になりえる条件として「男の支えがあれば」とつけたしたくなる、ということです。
 支えといってもいろいろありますが、それこそ見守ってくれているだけでいいのですよ、貴婦人に仕える騎士ですよ、サムライってことですよ。
 精神的な支えとか、ぶっちゃけ愛人がいれば、女はけっこう仕事ががんばれちゃうものだと思うのですよね。
 これは、そんな物語のように、私には思えました。

 というワケで、前置きが長くなりましたが、ユリちゃんですよ!
 まあ銀幕のアップに耐える耐える!! 美しい、凛々しい、カッコいい!!!

 「リアル・オスカル」とはよく言ったもの、一幕ではブルネットなのですが、二幕で女王に就任するとブロンドになって、だけど軍服着て戦闘の先頭に立っちゃうわけですがそれがホントにオスカルなの! アンタ『ベルばら』ではアンドレやったやん!みたいな意味不明な突っ込みをしつつキャーキャーもだえました。
 惜しかったのは足元がスターブーツじゃなかったことだよね…のちの場面の着替えのこともあるけれど、少なくとも白のブーツでよかったと思うよ…
 歌も現役のころよりかなり上手くなっていて、卒業後は映像の仕事が主でほとんど舞台で歌っていなかったはずだけど…まあ編集もしてるだろうしね、と感心していたら、バラードのいいところで一箇所歌がヨレたので、むしろ安心しました(^^)。
 年齢的にも確かオスカルって享年34とかの立派なアラサーだったわけで、いやユリちゃんはもうアラフォーだけどそこは時代を考えて、ホント「現代の生身のオスカル」ってこのことかしらん…と見惚れました。
 とってもいい作品だけれど、ユリちゃんあってのものにも思えるし、再演は難しいかもねー(^^;)。

 浦井くんの王子もすばらしかった。キレてたわー、よかったわー。一幕の流れではまさかこのまま歌わせてもらえないのかと恐れていたけれど、大ナンバーがあって堪能したわー。
 のちに沙也加ちやんプリンセスと結婚してもいいんじゃないでしょうかね。そうしたらアンヌはまた海に戻れたりしてね…
 その沙也加ちゃんもすばらしかった&時々歌声がママそっくり! ぶっちゃけ世代なもんできゅんきゅんきました!! いい舞台女優さんになったよね。

 そしてミハルですよ!
 新感線の常連とはいえ、この役にキャスティングしてくれてありがとうありがとう!!
 ちょっと太っちゃったけど美声はあいかわらずで、キュートでちょっとエキセントリックで激チャーミングで、もーたまらんかった!
 ラブはない話だがアンヌ×エリザベッタではあるよね!!!
 同時代に組は違えど宝塚のトップを張っていたふたりですよ…感涙…!!!!

 橋本じゅん、高田聖子、粟根まことがすばらしいのはもちろん、出てくる役者さんがみんな芸達者でまーすばらしい。
 もちろんハイトーンシンガーもね!

 6月25日公開です。
 ああ早くまた観たい、これはマジでまた映画館に行っちゃうな私…
 あ、上映時間は196分(!)です。


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