宝塚大劇場、2018年2月9日15時(初日)、10日11時。
東京宝塚劇場、4月12日18時半(新公)、19日18時半、5月2日15時半。
有明製薬の青年サラリーマン青柳誠二(珠城りょう)は病気で妻を亡くして以来、未だその運命を受け入れられずに淡々と生きていた。そんなある日のこと、有明製薬とヘルシー・フーズが合併、新会社の設立が決まり、社の新たな展開が次々と発表される。有明製薬のイメージ・キャラクターである世界的プリンシパル高野悠(美弥るりか)を主役に、社長令嬢の紗良(早乙女わかば)が所属する敷島バレエ団で新会社発足の記念公演「白鳥の湖」を上演することも発表され、青柳はバレエ団に出向するが…
原作/伊吹有喜、脚本・演出/石田昌也、作曲・編曲/手島恭子。
初日の感想はこちら。
その後結局あまり回数を観られなかったのは、人気で頼んでいたお取り次ぎがお断りになってしまったせいもあるけれど、お友達から「あるよ」とチケットが回ってきても『カンパニー』を観るのが嫌すぎて『BADDY』のためだけに行くのもなんだかなあと思ってしまって、結局自分から断ったりしたからです。それくらい私は『カンパニー』がつらかったです。『ベルリン』とかが駄作でホント退屈、なんてのとはレベルが違って、とにかく、ひたすら、嫌でした。そういう意味ではめでたくマイ・ワースト作品になった、と言ってもいいくらいかもしれません。
石田先生は(ダーイシ、とある意味の愛称で呼ぶのも嫌なくらい、私はもうこの作家に愛想を尽かしました…)東京公演で脚本にまったく手を入れてきませんでした。エゴサはしない、かまってちゃんの意見なんか聞く価値ない、という主張なのでしょう。だったらあんたの作品にだって観る価値なんか全然ないんだけれど、演じている生徒に罪はないし併演のショーはおもしろいんだから、宝塚歌劇ファンの立場ってホント弱いですよね。もう贔屓組に当たらないことを祈るか、一刻も早い引退を祈るかしかできないなんて、無力だなあ…
原作小説から引いている台詞も多いからか、「ル・サンク」に脚本が掲載されませんでしたが、されていたら赤字で真っ赤にするところでしたしここでねちねち3万字くらいかけてどこがどうダメか語っていたと思うので、しなくてすんでよかったと思うことにします。
そう、台詞さえちゃんとしていてくれれば、作品自体はよくできていると思うのですよ。あの地味な小説を上手く舞台化していると思うし、現代日本のサラリーマンを主人公にした宝塚歌劇、なんてなかなか無茶なものをすごく上手く成立させていると思います。ショーアップも上手いし、といってバレエ公演をまんま見せなかったところも私は評価しています。だってタカラジェンヌはバレリーナじゃないもん、なんちゃってバレエなんか観たくないよ。バレエ場面は今くらいでちょうどいいと思いましたし、逆に原作にない合併記念パーティーの出し方とか、バーバリアンに銀橋渡らせてのミニライブとか、盛り上げるため、見せるためのアイディアや工夫、いい演出がたくさんありました。フラッシュモブは単なる夏祭りジャックになっちゃってたけど、まあ目をつぶれましたしね。よりラブ度の高い改変もよかったと思うのです。
なのに、台詞がもう本当に1分に2回は引っかかる感じで、いかに生徒が上手く言い回しを工夫してくれていてもニュアンスを変えようとしてくれていても私はダメでした。本当に耳をふさぎたかったし、いちいち溜め息ついて目をつぶっていました。嫌な客だったと思います、でもやりきれなかった…
的外れな比喩、不必要ないし不正確な説明、論旨不鮮明な議論、受け答えとしておかしい会話、のオンパレード。そこでそんなこと言わせるとこのキャラクターが無神経な人みたいな見えるからやめて?とか、このキャラクターがアタマ悪い人みたいになるからやめて?とか、それだとこっちが正しく見えちゃうけど話はそっちに行くんだならソレやめて?とか、もうずーっとそんななのです。もう本当に本当につらかったです。
新公なんかもう本当につらかったです。ナチュラル現代劇芝居が下級生にはなかなかハードルが高かった、ということはもちろん、本役さんが技量でどうにかこうにかなんとかしているこれらの台詞への引っかかりを、さすがにどうにもできないでいたからです。
でも、生徒さんたちは本当に大健闘していました。いい経験になったんじゃないかな。
おだちんは、上手いけど私には地味に見えました。でも珠城さんも昔はそうでしたし、シュッとしてきたのは珠城さんよりむしろ早そう。この先が楽しみです。
さくさくは私は贔屓にしているんだけれど、大劇場新公の評判を聞いてちょっと期待しすぎたかな…そしてやはりニン違いだったかなーと思ってしまいました。
いいなと思ったのはあちで、まあこれまた私がわりと好きだからかもしれないんだけれど、でも悠ってキャラクターとして一番きちんとまっとうに描かれているので、ちゃんと演じると一番齟齬がなくて観ていてストレスがない、というのはあるのかもしれません。
結愛かれんちゃんのユイユイが意外にも良かったのも印象的でした。私はあまり買っていないし、最近ちょっと役付きが落ちて見えるけれど、がんばっているのならいいことです。
天紫珠李ちゃんの紗良もなんかちょっと違ったかな、期待していたんだけどな…あと靴があまりにぺたんこなのが美しくなくて残念だったな。はるくんもぼちぼち垢抜けてほしい…いいもの持ってるはずなのに…! 彩音星凪くんは期待の星なんでしょうね、がんばれ! 英かおとくんも別箱で場数踏んでいるからか手堅かったです。
でも一番のヒットはありちゃん専務だったかなー。るうちゃんとはまた違った嫌みっぽさと悪いイケオジっぷり、素敵でした!!
というわけで流れで本役さんの感想も簡単に。
珠城さんの青柳さんの亡妻の名前になれて幸せでした…(笑)それはともかく、真面目一辺倒の地味でなんなら気落ちしていて精彩がないサラリーマン、をそれでも好感度高く演じて見せたのはさすがでした。ちゃんとリーマンっぽかったしね。
ちゃぴも、美波はあがり症で本番に弱いタイプのダンサーで…みたいな描写がきちんとされていなくてやや中途半端なキャラクターになってしまっていたのだけれど、その中でやはりいじらしく見せていたのがさすがでした。
みやちゃん高野さんはポジション的にもキャラクターとしても素晴らしかったです。しかし「プリンシパル」にこそ説明が必要だったと思うけれどね…
れいこ那由多も上手く天然感を出していて、この難しい立ち位置のキャラクターをギリギリで成立させていたと思いました。ありちゃん蒼太も私は役不足だとは思わなくて、こういう役どころをのびのびやっているありちゃんをいいなと思いました。あとダンスがさすがに素晴らしかったです。
としちゃん阿久津さんもキャラクターに求められるところをすごく上手く演じていたと思いました。わかば紗良は本当に絶品。後半喉がかなりつらそうでしたが、この稀代の姫役者のいい退団公演のお役になったのではないでしょうか。車椅子でのキス、毎回泣けました。そしてくらげちゃんのユイユイもとてもよかったです。お芝居ホント上手いよね、ただ地味なんだけどね…(><)
すーさんも京さんも喉をやられてて、みなさん本当にお疲れ様でした。現代が舞台のややガチャガチャしたハートフル・コメディということで、意外とみんなの台詞が多くて大変な
公演ではあったのかな…? 歌の数は少ない方だった印象ですが…ともあれ今週末で大千秋楽ですね、最後までがんばっていただきたいです。
ショー・テント・タカラヅカは作・演出/上田久美子、作曲・編曲/青木朝子、甲斐正人、斉藤恒芳。
ご多分に漏れず実況CDに聞き入っています。どの公演も同じ数だけ作るのかな? 売り切れってあまり聞かない気がしますが、さすがですよね。公演ブルーレイも早めに買わねばね、『カンパニー』は耳ふさいで一回観るだけだとしてもね…
さすがに賛否両論もう出揃いましたよね。確かに台詞も歌詞も多くてそのわりには聞き取れないことも多いと思います。でも全部きちんと聞き取れなくてもそれはそれで、と、そんなに回数観ていない私でも思うけどなあ。だいたいのことがわかれば十分なのでは?
また、舞台の使い方が意外と単調だとか、ちゃぴやとしちゃんが踊りまくる場面は用意できなかったのか、という問題については、プロローグは私は好きなんだけれどブルーラグーン場面は確かにもっと工夫できたかもねと思う一方で、ちゃぴにもとしちゃんにも私はこれで満足です。あのロケット、あのデュエダン、あのカゲソロの素晴らしさの方が替え難い、と思いました。
甘いかもしれないけど所詮ショー・デビュー作だしさ、いっぺんに全部はできませんよ。とりあえずは成功したと言っていいと思うし、次はストーリーなんか全然ない超ダンサブルなショーを作ってくるかもしれないし、さらに景子先生やなーこたんもショーを作ってくれたら嬉しいし、町田先生や栗田先生もまずショーからデビューするかもしれないし、男性ショー作家ももっと違ったものを出してくるかもしれないし、生田先生も参戦したいみたいだしダーハラもショーだけにした方がいいだろうし、そうやってショーやレビューが元気になるなら嬉しいです。そして今までと似たようなものしか作れない人、新しい曲やダンスを取り入れられない人は引退していけばいいと思います。活性化、大事!
そう、犯罪発生件数ゼロだなんて不自然です。そんな平穏は嘘です、作為的すぎる。平和で波風ひとつ立たない世界なんて死んでいるのも同じです。それでこそ人は天国に行けるのだとそこに住む人たちは言うのかもしれません、でも彼らはすでに死んでいるも同然なのだということに気づいていないだけなのです。それは不健全で不健康です。
でも、では月からやっくる悪党たちの方が逆説的に健全で健康的なのだ…というだけの話では、これはもちろんありません。彼らはなんでもアリすぎで、貞操観念もステディな関係もないでしょう。これには私たちのデリケートな精神は耐えられないと思います(笑)。それに彼らとて完全完璧で月で悪を満喫しているわけではないのです。王子が平和に退屈しているように、彼らもまた月での暮らしに物足りなさを感じていて、だからわざわざ地球に乗り込んでくるのです。いじめっ子はいじめる相手がいなくちゃ何者にもなれませんからね。
でも一方が他方を圧倒するなんてことはありえなくて、出会ったふたつの世界はぐるぐるぐちゃぐちゃに混ざり出す。グッディーズたちが誘惑を覚え怒りを知るようになるのと平行して、バッドボーイズたちの悪行はスケールダウンしていく。中詰めのパラダイスはまさしくカオスで、清く正しく美しく死んだように平穏な天国なんかではありません。むしろ享楽的な、堕天使こそが向かいそうな楽園でした。
でも、グッディーズはノーと言う。いつもニコニコ愛らしいことを強いられがちな娘役たちが、ニコリともせず怒りをぶつけて歌い踊るロケットの斬新さは革命的です。バッディは「邪魔だ、どけ!」とのっけからぶちかましますが、グッディーズたちはやっとここで「聞けよ!」と言います。女が命令形でしゃべることのレアさをこういう形で気づかされることもすごいけれど、その言葉が単に「聞け」ってだけなのもすごいよね…ことここに至っても女は控えめなのだし、逆に言えば必要以上の暴力なんかいらないわけで、女が求めていることは単に話を聞いてもらうことだけなのです。でも今なお女の声は黙殺される、同じ言葉を話す同じ人間だと認められていないのです。ちゃんと聞いてもらえていたら、連日のセクハラ報道なんて事態になるわきゃないんです。女も人間だと認めろ、女にも人権はあると認めろ、すべての人間の人権を尊重しろ、人の話を聞け。ごくシンプルなことしか要求していないのに、未だそれが叶えられていない世の中であることがあぶり出されるのでした。
それでも怒る彼女たちの熱さに、だから私たちは泣くのです。もう怒ることにも疲れて投げ出したくなる、あきらめたくなる、泣き寝入りしてしまうことも多い。それでも彼女たちは怒ってくれている。タカラジェンヌはいつでも私たちのロールモデルです、理想を体現してくれているのです。だからありがたくて、励まされて、泣く。そんな素晴らしいロケットだったと思います。
でもそれ以上に私が泣いたのは、さらに熱く激しいデュエダンでした。慈愛と希望に満ちた優しいデュエダン…ではなく、対立し、対決し、己が信念とプライドをぶつけ合い、憎しみをぶつけ合う、両者一歩も引かない戦いの踊り。でも愛している、求めている。殺したくない、殺せない。でも自分も捨てられない、負けたくない。だからともに抱き合って燃え尽きるしかない…天国には行けない、でも地獄へならふたりで行ける。そこでなら結ばれる、たとえ無意味だとしても…
トップコンビが踊るものであり、男役と娘役、つまりは男女の形をしてはいますが、別にこれは異性愛に限った話ではなくて、要するにこういうふうに全身全霊で自分をぶつけられる相手がいるということ、それを肯定している世界観であること、ともに滅ぶという形であってもひとつになることを提示してくれていることに、私は泣けるのでした。人はひとりでは生きられない。相手はきっといる。今生でわかり合えなくても、結ばれなくても、次の世でならもしかしたら、という希望と祈り…
パレードは、言うなれば夢オチみたいなものです。結論は特になくて、要するにピースフル・プラネットも月も無理があったよねというだけのことです。そんなふうに規制してもいいことないし、そもそもが無理。人間だもの、人間を信じようよ。多様性を認めるも認めないもなくて、認めるしかないんだよ。みんな違ってみんないい、簡単なことじゃん…ってだけの話だと思います。
単純だけれどデリケートなテーマでもあって、これを芝居に仕立てるのはけっこう難しかったろうと思います。だからストーリー仕立てのショーでちょうどよかったと思います。もっと情報量を減らしてももちろんよかっただろうけれど、くーみんはこうしたかったというだけのことでしょう。繰り返しますが、それはショー・デビュー作ですから。次はまた全然違うことをやってくれるかもしれませんから。信じて、楽しみに、待ちたいと思います。それは老害の引退を信じて待つ不毛な祈りと違って、希望に満ちていて幸せです。
最後に。マイ楽が月組祭り回で、人生初アフロに当たったんですよ! これでまたこのショーが私の大切な思い出の一作となりました。
月組が主に貸し切り公演などでのお楽しみサプライズとしてショーなどでアフロ扮装をする、というのはいつ頃からの定番なのかなあ? でも珠城さんになってからはやっていなかったんですよね、確か。月組祭り、というのは全FC合同総見のことでFC貸し切りではなかったのかもしれませんが、リピーターが多い回ではあったでしょうから、こういうお遊びも許されて、よかったと思います。通常の企業の貸し切りとかだとそこでしか観ない一見の観客も多くて、何が何やらボーゼン…となりかねなかったでしょうからね。今までは阪急貸し切りでやることが多い印象だったかな? そして私は貸し切りにあまり行くことがなくて、それまで生で観たことがなかったのでした。
歌詞も替え歌になっていたので、これはちゃんとくーみんにも相談しての確信犯的犯行だったのでしょう。ちょい悪レッスンのラスト、バッディが「アフロでおいでなすったぜ!」みたいなことを叫んだので「へっ!?」っとなったら、真っ黄色のヒヨコみたいなアフロを被ったグッディが上手セリをセリ上がったものだからもう大仰天大笑い、拍手喝采でしたね。そこから怒濤のアフロ祭り! グッディーズは白、バッディーズは黒にサングラスを乗せて。ホットがファニーとスパイシーを連れてギラギラのネームプレートを乗せた黒アフロで銀橋を渡り、続いて現れたクールと王女は白黒半分ずつのアフロでこれまたキャラと立ち位置にバッチリ合っていて、でも歌う歌詞は素っ頓狂なことになっていて。さらに王子が紫のパンダ耳みたいなの付けた白のふわふわアフロで現れ、女王の地球儀もアフロで覆われ公爵もじいやも白アフロ。スイートハートのは銀かな? これまた飾りが付いて派手で、そして現れるバッディは特大黒アフロ、グッディはピンクのお花を盛りだくさんに咲かせた特大白アフロ。もう可愛いったらありませんでした! そしてポッキーはレインボーアフロだったらしいんだけど見逃しました、すみません…
中詰めラストが暗転して、でも暗い中でバッディのアフロの電飾がずっとチカチカしてて、拍手が鳴り止まず謎のショー・ストップ状態になったのもめっちゃおもしろかったです。でも実は次に本舞台に出て偽造パスポートを売るポッキーはもうノー・アフロなので、その時間を稼いでいたのかもしれません。照明がついて、グッディがバッディのアフロをさも邪魔そうにしてポッキーの犯罪を見とがめ、追っていく…取り残されるバッディ、スイートハートのとどめの一撃、ガビーン!からのひとりリプライズ、盛り上がりました!
でも続く舞踏会場面ではみんなもう平然とシュッとしていて…素晴らしかったですね。くーみんもしてやったり、となったことでしょう。
「眠られないんだ」とわずかのら抜き言葉も許さないピースフル・プラネットを創作する一方で、タカラジェンヌに「♪もっと大きくて、もっと激しくて」なんて歌わせるという、それこそダーイシがやらかしていたら除名運動を起こすのも辞さなかったくらいのことを女性作家だからくーみんだから、というんでギリギリ目をつぶる、そんなところまで計算して切り込んできているんだよねと思います。
長い目で見ればこれも、そんなショーもあったよねと埋もれていってしまうのかもしれないけれど、今はひとつの爪痕を残した、インパクトある作品だと思います。大千秋楽ライビュは博多座遠征で観られないけれど、盛り上がることを祈っています。
私は、好きです。ショーの見方がずっとよくわからないでいた私に、好きなショーとして挙げる作品名を与えてくれた…それが一番、大きいです。
もっと回数を観てもっと細かく観られていたら、もっとねちねち語れたでしょうが、それは他の方に譲ります。でも私は十分楽しみました、ありがとうございました。次回作も楽しみです。
東京宝塚劇場、4月12日18時半(新公)、19日18時半、5月2日15時半。
有明製薬の青年サラリーマン青柳誠二(珠城りょう)は病気で妻を亡くして以来、未だその運命を受け入れられずに淡々と生きていた。そんなある日のこと、有明製薬とヘルシー・フーズが合併、新会社の設立が決まり、社の新たな展開が次々と発表される。有明製薬のイメージ・キャラクターである世界的プリンシパル高野悠(美弥るりか)を主役に、社長令嬢の紗良(早乙女わかば)が所属する敷島バレエ団で新会社発足の記念公演「白鳥の湖」を上演することも発表され、青柳はバレエ団に出向するが…
原作/伊吹有喜、脚本・演出/石田昌也、作曲・編曲/手島恭子。
初日の感想はこちら。
その後結局あまり回数を観られなかったのは、人気で頼んでいたお取り次ぎがお断りになってしまったせいもあるけれど、お友達から「あるよ」とチケットが回ってきても『カンパニー』を観るのが嫌すぎて『BADDY』のためだけに行くのもなんだかなあと思ってしまって、結局自分から断ったりしたからです。それくらい私は『カンパニー』がつらかったです。『ベルリン』とかが駄作でホント退屈、なんてのとはレベルが違って、とにかく、ひたすら、嫌でした。そういう意味ではめでたくマイ・ワースト作品になった、と言ってもいいくらいかもしれません。
石田先生は(ダーイシ、とある意味の愛称で呼ぶのも嫌なくらい、私はもうこの作家に愛想を尽かしました…)東京公演で脚本にまったく手を入れてきませんでした。エゴサはしない、かまってちゃんの意見なんか聞く価値ない、という主張なのでしょう。だったらあんたの作品にだって観る価値なんか全然ないんだけれど、演じている生徒に罪はないし併演のショーはおもしろいんだから、宝塚歌劇ファンの立場ってホント弱いですよね。もう贔屓組に当たらないことを祈るか、一刻も早い引退を祈るかしかできないなんて、無力だなあ…
原作小説から引いている台詞も多いからか、「ル・サンク」に脚本が掲載されませんでしたが、されていたら赤字で真っ赤にするところでしたしここでねちねち3万字くらいかけてどこがどうダメか語っていたと思うので、しなくてすんでよかったと思うことにします。
そう、台詞さえちゃんとしていてくれれば、作品自体はよくできていると思うのですよ。あの地味な小説を上手く舞台化していると思うし、現代日本のサラリーマンを主人公にした宝塚歌劇、なんてなかなか無茶なものをすごく上手く成立させていると思います。ショーアップも上手いし、といってバレエ公演をまんま見せなかったところも私は評価しています。だってタカラジェンヌはバレリーナじゃないもん、なんちゃってバレエなんか観たくないよ。バレエ場面は今くらいでちょうどいいと思いましたし、逆に原作にない合併記念パーティーの出し方とか、バーバリアンに銀橋渡らせてのミニライブとか、盛り上げるため、見せるためのアイディアや工夫、いい演出がたくさんありました。フラッシュモブは単なる夏祭りジャックになっちゃってたけど、まあ目をつぶれましたしね。よりラブ度の高い改変もよかったと思うのです。
なのに、台詞がもう本当に1分に2回は引っかかる感じで、いかに生徒が上手く言い回しを工夫してくれていてもニュアンスを変えようとしてくれていても私はダメでした。本当に耳をふさぎたかったし、いちいち溜め息ついて目をつぶっていました。嫌な客だったと思います、でもやりきれなかった…
的外れな比喩、不必要ないし不正確な説明、論旨不鮮明な議論、受け答えとしておかしい会話、のオンパレード。そこでそんなこと言わせるとこのキャラクターが無神経な人みたいな見えるからやめて?とか、このキャラクターがアタマ悪い人みたいになるからやめて?とか、それだとこっちが正しく見えちゃうけど話はそっちに行くんだならソレやめて?とか、もうずーっとそんななのです。もう本当に本当につらかったです。
新公なんかもう本当につらかったです。ナチュラル現代劇芝居が下級生にはなかなかハードルが高かった、ということはもちろん、本役さんが技量でどうにかこうにかなんとかしているこれらの台詞への引っかかりを、さすがにどうにもできないでいたからです。
でも、生徒さんたちは本当に大健闘していました。いい経験になったんじゃないかな。
おだちんは、上手いけど私には地味に見えました。でも珠城さんも昔はそうでしたし、シュッとしてきたのは珠城さんよりむしろ早そう。この先が楽しみです。
さくさくは私は贔屓にしているんだけれど、大劇場新公の評判を聞いてちょっと期待しすぎたかな…そしてやはりニン違いだったかなーと思ってしまいました。
いいなと思ったのはあちで、まあこれまた私がわりと好きだからかもしれないんだけれど、でも悠ってキャラクターとして一番きちんとまっとうに描かれているので、ちゃんと演じると一番齟齬がなくて観ていてストレスがない、というのはあるのかもしれません。
結愛かれんちゃんのユイユイが意外にも良かったのも印象的でした。私はあまり買っていないし、最近ちょっと役付きが落ちて見えるけれど、がんばっているのならいいことです。
天紫珠李ちゃんの紗良もなんかちょっと違ったかな、期待していたんだけどな…あと靴があまりにぺたんこなのが美しくなくて残念だったな。はるくんもぼちぼち垢抜けてほしい…いいもの持ってるはずなのに…! 彩音星凪くんは期待の星なんでしょうね、がんばれ! 英かおとくんも別箱で場数踏んでいるからか手堅かったです。
でも一番のヒットはありちゃん専務だったかなー。るうちゃんとはまた違った嫌みっぽさと悪いイケオジっぷり、素敵でした!!
というわけで流れで本役さんの感想も簡単に。
珠城さんの青柳さんの亡妻の名前になれて幸せでした…(笑)それはともかく、真面目一辺倒の地味でなんなら気落ちしていて精彩がないサラリーマン、をそれでも好感度高く演じて見せたのはさすがでした。ちゃんとリーマンっぽかったしね。
ちゃぴも、美波はあがり症で本番に弱いタイプのダンサーで…みたいな描写がきちんとされていなくてやや中途半端なキャラクターになってしまっていたのだけれど、その中でやはりいじらしく見せていたのがさすがでした。
みやちゃん高野さんはポジション的にもキャラクターとしても素晴らしかったです。しかし「プリンシパル」にこそ説明が必要だったと思うけれどね…
れいこ那由多も上手く天然感を出していて、この難しい立ち位置のキャラクターをギリギリで成立させていたと思いました。ありちゃん蒼太も私は役不足だとは思わなくて、こういう役どころをのびのびやっているありちゃんをいいなと思いました。あとダンスがさすがに素晴らしかったです。
としちゃん阿久津さんもキャラクターに求められるところをすごく上手く演じていたと思いました。わかば紗良は本当に絶品。後半喉がかなりつらそうでしたが、この稀代の姫役者のいい退団公演のお役になったのではないでしょうか。車椅子でのキス、毎回泣けました。そしてくらげちゃんのユイユイもとてもよかったです。お芝居ホント上手いよね、ただ地味なんだけどね…(><)
すーさんも京さんも喉をやられてて、みなさん本当にお疲れ様でした。現代が舞台のややガチャガチャしたハートフル・コメディということで、意外とみんなの台詞が多くて大変な
公演ではあったのかな…? 歌の数は少ない方だった印象ですが…ともあれ今週末で大千秋楽ですね、最後までがんばっていただきたいです。
ショー・テント・タカラヅカは作・演出/上田久美子、作曲・編曲/青木朝子、甲斐正人、斉藤恒芳。
ご多分に漏れず実況CDに聞き入っています。どの公演も同じ数だけ作るのかな? 売り切れってあまり聞かない気がしますが、さすがですよね。公演ブルーレイも早めに買わねばね、『カンパニー』は耳ふさいで一回観るだけだとしてもね…
さすがに賛否両論もう出揃いましたよね。確かに台詞も歌詞も多くてそのわりには聞き取れないことも多いと思います。でも全部きちんと聞き取れなくてもそれはそれで、と、そんなに回数観ていない私でも思うけどなあ。だいたいのことがわかれば十分なのでは?
また、舞台の使い方が意外と単調だとか、ちゃぴやとしちゃんが踊りまくる場面は用意できなかったのか、という問題については、プロローグは私は好きなんだけれどブルーラグーン場面は確かにもっと工夫できたかもねと思う一方で、ちゃぴにもとしちゃんにも私はこれで満足です。あのロケット、あのデュエダン、あのカゲソロの素晴らしさの方が替え難い、と思いました。
甘いかもしれないけど所詮ショー・デビュー作だしさ、いっぺんに全部はできませんよ。とりあえずは成功したと言っていいと思うし、次はストーリーなんか全然ない超ダンサブルなショーを作ってくるかもしれないし、さらに景子先生やなーこたんもショーを作ってくれたら嬉しいし、町田先生や栗田先生もまずショーからデビューするかもしれないし、男性ショー作家ももっと違ったものを出してくるかもしれないし、生田先生も参戦したいみたいだしダーハラもショーだけにした方がいいだろうし、そうやってショーやレビューが元気になるなら嬉しいです。そして今までと似たようなものしか作れない人、新しい曲やダンスを取り入れられない人は引退していけばいいと思います。活性化、大事!
そう、犯罪発生件数ゼロだなんて不自然です。そんな平穏は嘘です、作為的すぎる。平和で波風ひとつ立たない世界なんて死んでいるのも同じです。それでこそ人は天国に行けるのだとそこに住む人たちは言うのかもしれません、でも彼らはすでに死んでいるも同然なのだということに気づいていないだけなのです。それは不健全で不健康です。
でも、では月からやっくる悪党たちの方が逆説的に健全で健康的なのだ…というだけの話では、これはもちろんありません。彼らはなんでもアリすぎで、貞操観念もステディな関係もないでしょう。これには私たちのデリケートな精神は耐えられないと思います(笑)。それに彼らとて完全完璧で月で悪を満喫しているわけではないのです。王子が平和に退屈しているように、彼らもまた月での暮らしに物足りなさを感じていて、だからわざわざ地球に乗り込んでくるのです。いじめっ子はいじめる相手がいなくちゃ何者にもなれませんからね。
でも一方が他方を圧倒するなんてことはありえなくて、出会ったふたつの世界はぐるぐるぐちゃぐちゃに混ざり出す。グッディーズたちが誘惑を覚え怒りを知るようになるのと平行して、バッドボーイズたちの悪行はスケールダウンしていく。中詰めのパラダイスはまさしくカオスで、清く正しく美しく死んだように平穏な天国なんかではありません。むしろ享楽的な、堕天使こそが向かいそうな楽園でした。
でも、グッディーズはノーと言う。いつもニコニコ愛らしいことを強いられがちな娘役たちが、ニコリともせず怒りをぶつけて歌い踊るロケットの斬新さは革命的です。バッディは「邪魔だ、どけ!」とのっけからぶちかましますが、グッディーズたちはやっとここで「聞けよ!」と言います。女が命令形でしゃべることのレアさをこういう形で気づかされることもすごいけれど、その言葉が単に「聞け」ってだけなのもすごいよね…ことここに至っても女は控えめなのだし、逆に言えば必要以上の暴力なんかいらないわけで、女が求めていることは単に話を聞いてもらうことだけなのです。でも今なお女の声は黙殺される、同じ言葉を話す同じ人間だと認められていないのです。ちゃんと聞いてもらえていたら、連日のセクハラ報道なんて事態になるわきゃないんです。女も人間だと認めろ、女にも人権はあると認めろ、すべての人間の人権を尊重しろ、人の話を聞け。ごくシンプルなことしか要求していないのに、未だそれが叶えられていない世の中であることがあぶり出されるのでした。
それでも怒る彼女たちの熱さに、だから私たちは泣くのです。もう怒ることにも疲れて投げ出したくなる、あきらめたくなる、泣き寝入りしてしまうことも多い。それでも彼女たちは怒ってくれている。タカラジェンヌはいつでも私たちのロールモデルです、理想を体現してくれているのです。だからありがたくて、励まされて、泣く。そんな素晴らしいロケットだったと思います。
でもそれ以上に私が泣いたのは、さらに熱く激しいデュエダンでした。慈愛と希望に満ちた優しいデュエダン…ではなく、対立し、対決し、己が信念とプライドをぶつけ合い、憎しみをぶつけ合う、両者一歩も引かない戦いの踊り。でも愛している、求めている。殺したくない、殺せない。でも自分も捨てられない、負けたくない。だからともに抱き合って燃え尽きるしかない…天国には行けない、でも地獄へならふたりで行ける。そこでなら結ばれる、たとえ無意味だとしても…
トップコンビが踊るものであり、男役と娘役、つまりは男女の形をしてはいますが、別にこれは異性愛に限った話ではなくて、要するにこういうふうに全身全霊で自分をぶつけられる相手がいるということ、それを肯定している世界観であること、ともに滅ぶという形であってもひとつになることを提示してくれていることに、私は泣けるのでした。人はひとりでは生きられない。相手はきっといる。今生でわかり合えなくても、結ばれなくても、次の世でならもしかしたら、という希望と祈り…
パレードは、言うなれば夢オチみたいなものです。結論は特になくて、要するにピースフル・プラネットも月も無理があったよねというだけのことです。そんなふうに規制してもいいことないし、そもそもが無理。人間だもの、人間を信じようよ。多様性を認めるも認めないもなくて、認めるしかないんだよ。みんな違ってみんないい、簡単なことじゃん…ってだけの話だと思います。
単純だけれどデリケートなテーマでもあって、これを芝居に仕立てるのはけっこう難しかったろうと思います。だからストーリー仕立てのショーでちょうどよかったと思います。もっと情報量を減らしてももちろんよかっただろうけれど、くーみんはこうしたかったというだけのことでしょう。繰り返しますが、それはショー・デビュー作ですから。次はまた全然違うことをやってくれるかもしれませんから。信じて、楽しみに、待ちたいと思います。それは老害の引退を信じて待つ不毛な祈りと違って、希望に満ちていて幸せです。
最後に。マイ楽が月組祭り回で、人生初アフロに当たったんですよ! これでまたこのショーが私の大切な思い出の一作となりました。
月組が主に貸し切り公演などでのお楽しみサプライズとしてショーなどでアフロ扮装をする、というのはいつ頃からの定番なのかなあ? でも珠城さんになってからはやっていなかったんですよね、確か。月組祭り、というのは全FC合同総見のことでFC貸し切りではなかったのかもしれませんが、リピーターが多い回ではあったでしょうから、こういうお遊びも許されて、よかったと思います。通常の企業の貸し切りとかだとそこでしか観ない一見の観客も多くて、何が何やらボーゼン…となりかねなかったでしょうからね。今までは阪急貸し切りでやることが多い印象だったかな? そして私は貸し切りにあまり行くことがなくて、それまで生で観たことがなかったのでした。
歌詞も替え歌になっていたので、これはちゃんとくーみんにも相談しての確信犯的犯行だったのでしょう。ちょい悪レッスンのラスト、バッディが「アフロでおいでなすったぜ!」みたいなことを叫んだので「へっ!?」っとなったら、真っ黄色のヒヨコみたいなアフロを被ったグッディが上手セリをセリ上がったものだからもう大仰天大笑い、拍手喝采でしたね。そこから怒濤のアフロ祭り! グッディーズは白、バッディーズは黒にサングラスを乗せて。ホットがファニーとスパイシーを連れてギラギラのネームプレートを乗せた黒アフロで銀橋を渡り、続いて現れたクールと王女は白黒半分ずつのアフロでこれまたキャラと立ち位置にバッチリ合っていて、でも歌う歌詞は素っ頓狂なことになっていて。さらに王子が紫のパンダ耳みたいなの付けた白のふわふわアフロで現れ、女王の地球儀もアフロで覆われ公爵もじいやも白アフロ。スイートハートのは銀かな? これまた飾りが付いて派手で、そして現れるバッディは特大黒アフロ、グッディはピンクのお花を盛りだくさんに咲かせた特大白アフロ。もう可愛いったらありませんでした! そしてポッキーはレインボーアフロだったらしいんだけど見逃しました、すみません…
中詰めラストが暗転して、でも暗い中でバッディのアフロの電飾がずっとチカチカしてて、拍手が鳴り止まず謎のショー・ストップ状態になったのもめっちゃおもしろかったです。でも実は次に本舞台に出て偽造パスポートを売るポッキーはもうノー・アフロなので、その時間を稼いでいたのかもしれません。照明がついて、グッディがバッディのアフロをさも邪魔そうにしてポッキーの犯罪を見とがめ、追っていく…取り残されるバッディ、スイートハートのとどめの一撃、ガビーン!からのひとりリプライズ、盛り上がりました!
でも続く舞踏会場面ではみんなもう平然とシュッとしていて…素晴らしかったですね。くーみんもしてやったり、となったことでしょう。
「眠られないんだ」とわずかのら抜き言葉も許さないピースフル・プラネットを創作する一方で、タカラジェンヌに「♪もっと大きくて、もっと激しくて」なんて歌わせるという、それこそダーイシがやらかしていたら除名運動を起こすのも辞さなかったくらいのことを女性作家だからくーみんだから、というんでギリギリ目をつぶる、そんなところまで計算して切り込んできているんだよねと思います。
長い目で見ればこれも、そんなショーもあったよねと埋もれていってしまうのかもしれないけれど、今はひとつの爪痕を残した、インパクトある作品だと思います。大千秋楽ライビュは博多座遠征で観られないけれど、盛り上がることを祈っています。
私は、好きです。ショーの見方がずっとよくわからないでいた私に、好きなショーとして挙げる作品名を与えてくれた…それが一番、大きいです。
もっと回数を観てもっと細かく観られていたら、もっとねちねち語れたでしょうが、それは他の方に譲ります。でも私は十分楽しみました、ありがとうございました。次回作も楽しみです。
次にもし、なんでバッディ好きなの?と聞かれたらこの記事をお伝えしようと思います!
本当に、いつもニコニコ笑顔で足あげてる女の子が、怒りに震えて聞けよ!って叫ぶロケットには毎回(と言っても2回しか見られず。。)心を揺さぶられ、そうだ!そうだ!女の子だって(というか人間誰しも)負の感情を持っていいんだ!怒っていいんだよ!!と拳を握りしめておりました。このショーがもう見れないと思うと寂しいですが、上田先生の次回作に期待ですね!
カンパニーは、、、笑。お口あんぐりという作品で笑。セリフにもかなり引っかかりますけど、原作でどうだか知りませんが、あれだけ偉そうに現代日本について講釈たれてんのに、インサイダー取引で降格人事とか何?笑
普通、刑事罰で逮捕ですよね?確か。。。
そういうの恥ずかしいと思って欲しいです、石田先生。。。
長くなりましたが、これからもブログ楽しみにしています!!!
コメントいただけて嬉しいです!!
そして過分なお言葉をありがとうございます…
本当に好みの、素敵なショーでした。『カンパニー』と組んでさえいなければもっと通いたかった…
未だに実況CDは聴いています(^^)。
今後ともよろしくお願いいたします~
●駒子●