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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇宙組『ベルサイユのばら』

2014年06月29日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚大劇場、2014年6月1日ソワレ。
 東京宝塚劇場、2014年6月24日ソワレ。

 1755年フランス、ベルサイユ宮殿にほど近い貴族の屋敷にひとりの女児が誕生した。その名はオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(凰稀かなめ)。代々フランス王家を守る役目を担ってきたジャルジェ伯爵家の六女として生を受けたオスカルは、跡継ぎたる男児誕生を待ち望んでいたジャルジェ将軍(汝鳥礼)の意向により男子として育てられることになる…
 原作/池田理代子、脚本・演出/植田紳爾、演出/谷正純。1974年初演の作品の新たなる「オスカル編」。全2幕。

 大劇場でBパターンを、東宝でAパターンを観ました。
 ほぼ新規となっている一幕がことに苦痛でした。製作発表で植田先生が「オスカルの誕生場面からやります」と言ったときにそんなことよりやるべき場面はたくさんあるだろう、と多くの人が思ったと思いますがそんな思いは届かなかった訳で、またも飛ばしたペガ子に関してもそんなことより以下同文、だった訳で…
 唯一、三部会場面には期待していたのですが、またしても改悪でした。何故、原作漫画のとおりにやらないのか? だったら新たな場面なんか作ってくれなくていいです、改悪され凌辱される原作パートが増えるだけです。だったら触らないで、ほっておいて!
 キャラクターの感情が綺麗に流れていないし、会話は行き違っているし理屈が通っていないし、観ていて本当に気持ちが悪いです。混乱するし共感できないし困惑する。何が進んでいるのか皆目わかりません。
 まだ宝塚歌劇観劇歴の浅い同伴後輩が、「よくあんな脈絡のない、支離滅裂な台詞を覚えられるな、宝塚の生徒って本当にすごいな、と思いました」と本気で感心していたのが印象的でした。まったく同感です。生徒にはまったく罪はなく、むしろ健闘しているのですが、しかし台詞は覚えづらかったろうと思いますし、何よりあの脚本ではいゆる役作りができなかったのでは? 普通に考えるとこう言われてこう返すこの人アタマおかしい、となってしまう役の感情を作って演じなくてはならないなんて、疲れるだろうなあ…まあこっちもがんばって補完したり脳内で上書きしたりしてなんとかつなげて観ているんですけれどね…
 こんな無用なストレスを観客に与える演目、なかなかないです。老害演出家には本当に少しも早く引退していただきたい。「少しも早く」が「少しでも早く」になったからってなんの意味もない。というか今に至ればそれはむしろ改悪です、「少しも早く」には味があったしゆかしさがあった。そのままでいいところはたくさんあるし、すべてを原作どおりにしろと言っているのでもないのです。ただおかしいところを直してくれて言っているだけなのです。全国ツアー版に期待します。また裏切られるであろうと思いつつも期待し観に行くことはやめないし、どこがどうおかしいのか訴えることもやめません。ここで書くだけでなく送りつけてますから!

 というワケで気が遠くなる第一幕、楽しいのはプロローグだけかなー。
 そらくんの小公子(和希そら)、カワイイ! 小公女はそろそろもう少し下級生に下ろしてもいいのではないか、とちょっと思いました。Wトリオも特に娘役メンバーが変わり映えしないし、宙組プロデューサーは本当に若手を育てるのが下手だと思います。ファンとして不安。
 一応二番手であろうところのまぁ様と別格二番手であろうところのキタさんでアンドレ(朝夏まなと、緒月遠麻)を役替わりしていることもあり、続くプロローグの士官Sも役替わり。むむう。すみませんあっきーしか見ていません。でもやはりまぁ様に華があったなあ、でも単に好みなだけかもしれませんすみません。
 テルは大階段に板付きで登場、ザッツ・主役!という感じでいいですね。バラの淑女Aではれーれの娘役力とタラちゃんの麗しさが目を引きました。ゆうりちゃんは美しい、せーこは落ち着いていて上品。なので今回、あおいちゃんとかえつ姉はワリ食ってるよね…
 バラの淑女Sのみりおんはもちろん達者で愛らしい。なんでもできるんだからもっとやらせてあげてくださいよ、と心底思います…

 で、まずはジャルジェ家の居間。大劇場プログラムで「春」となっていたのは東宝版では修正されたのでしょうか。オスカルの誕生日はクリスマスですよ、今にもツリーが飾ってありますよ。それともクリスマスから年明けまで含めて「新春」ってアレなのか?
 で、娘役ちゃんたちの出番を作るためにこういう場面が必要だ、というのはわからないでもありません。でもだったらジャンヌとかポリニャックとかシャルロットを出せばいいんですよ、なんといってもアントワネットを出せばいいんですよ。何度も言いますが『ベルサイユのばら』のタイトルロールたる「ベルサイユのばら」とはマリー・アントワネットのことです。この先どんなに素晴らしく出来のいい「オスカル編」が作られたとしてもアントワネットが出ていないという一点において私は絶対にこれを認めません。
 オスカルの一生にフィーチャーして新演目を作るにしても、オスカルの周りにいる女性キャラクターで重要なのは姉たちではまったくない。彼女たちは原作漫画でも名前すら出てこないのですから。かつて宝塚版では記号にしかすぎませんが彼女たちに名前を与えてきました。それを今回なくした、それくらいどうでもいいキャラクターであると認めつつ何故その役に貴重な娘役陣を配すのか? 侮辱です、横暴です。他の女性キャラクターを使ってオスカルとの関係性を描いてこその「オスカル編」でしょうが!
 確かにここのホームドラマにほのぼのとした笑いは客席からも起きていますが、一方でつらい子役の学芸会的空気に対する失笑も起きているのですよ。つらすぎる…
 「♪兄弟が生まれる」と歌っているだけで「妹が欲しい」などとは言っていない娘たちに対して「妹が欲しいだと! 女なんかいらん!」とか怒り狂って乱入してくるジャルジェ将軍にも萎えます。というかそろそろゆうちゃんさんに飽きました…ジャルジェ将軍を演じるにはお年を召しすぎましたし体型が丸くなりすぎました。原作漫画どおりのロマンスグレーの素敵中年紳士が見たいです…
 男として育てる、と語らせるのはいいんだけど何故神様との勝負を一方的に始めさせるの? キャラクターをストーリーテラーとして使うのは作劇場アリなんだけど、なんでもかんでも語らせるのはおもしろくないし、脚本家のアタマの悪さをさらけ出すだけですよ? 一幕のジャルジェ将軍の活躍(?)っぷりははっきり言って異常です。

 もんち演じる小オスカル(星吹彩翔。「少年時代」となっているのも東宝版では修正されたんでしょうね!?!?!)の場面もひどい。14歳が木刀ならいざしらず木の枝まんまの棒切れで訓練なんかするか! ここの原作場面はそんなの持ってないじゃん、何故変更するの? そんな子供にどんな特別扱いしても王太子妃の近衛士官なんか任せられませんよ。それにオスカルは部下が欲しいとか早く大人になりたいとか騒ぐおこさまな性格のキャラクターではありません。この場面で何が描きたいんだ労害演出家は? だったら宝塚オリジナルですが以前からある、小オスカルと小アンドレが剣の稽古して木の向こう通ったら大人になって出てきて…をやった方が100万倍いいです。
 そもそも二番手格のキャラクターとなるはずのアンドレの扱いが一幕でこうも低いのは何故なの? 二番手格スターのまぁ様がジェローデル(七海ひろき、朝夏まなと)を演じるパターンもあるのでオスカルの周りの男性キャラクターをなるべく同格に、という悲しい配慮なのか? だったらアラン(緒月遠麻、七海ひろき)にだってもっといい、もっとやるべき原作の名場面がありますよ?
 それからアントワネットを出さないためにトップ娘役にロザリー(実咲凛音)をやらせていますが、だったらベルナール(蓮水ゆうや)の黒い騎士エピソードをやるべきですよ。オスカルとの縁も浅からぬものがあるのに…ぶつぶつ…

 衛兵隊の場面は「なんだその格好は!」と言われるわりにまったくきちんとした格好をしていた衛兵隊士たちの演出に不満タラタラでしたが、東宝ではこの台詞を変更するのではなく衛兵隊士の服装や髪を乱れさせました。正しいぞもっとやれ、というか早くやれ。そもそも今までは荒くれ格好でやってきただろう、何故変えた? 改悪No Thank Youですマジでいらない。
 アルマン(愛月ひかる)の愛ちゃんがよかったのはもちろん、ヴェール(蒼羽りく)のりくくんもカッコよかったなあ。愛ちゃんの単独バウ主演で差がつけられちゃったけれど、がんばってほしいなあ。
 でもここのブイエ将軍(寿つかさ)とのやりとりはまたちまちま手が入ってますますワケわからなくなっている気がしました。オスカルの上官はブイエなのではないの? ブイエはオスカルの頭越しにオスカルの部下に命令できないのだとしても、オスカルには命令できるのだし、そのオスカルが命令に従わないのは軍人としてありえないんだからここのやりとりはおかしいですよね? どちらに正義があるかとかそういうことじゃないんですよ、そもそも軍隊に正義なんかないのは正気の人間ならみんなわかってるので。オスカルをアタマの悪いキャラクターみたいに見せかねないこのくだり、改善できないならカットしてほしいんですけどマジで。
 あと「茶坊主」、フランス人が言う言葉かとかいうことより、使い方として間違っていますよね? もうヤダ…
 続くロザリーと画家(風羽玲亜)、ル・ルー(すみれ乃麗)やオスカルの姉娘たちとのカーテン場面がまたしんどい。セットチェンジやスターのお衣装替え時間のために必要なのだとしてもつらい、脚本・演出の芸がなさすぎる。

 そして国民会議の会議場が封鎖されているくだりの新場面。誰がどこの立場で何を言っていて何をしようとしているのかまったく理屈が通っていなくて唖然…ロベスピエール(澄輝さやと)をひたすら愛しく見守ることしか楽しみが見出せません。またまた乱入してくるブイエ将軍とまたまた不毛なやりとりが展開されるし…
 あとダグー大佐(凛城きら)は期待していただけに私の印象にはそんなに残らずに残念でした。雪全ツのまなはるが出色だったなあ。

 オスカルを叱責するジャルジェ将軍に対しアンドレが反抗するくだりも今回初めて加わったわけですが、せっかくの名場面もあの謎のポーズで台無しです…何故原作どおりの体勢ではいけないの? 舞台でやるには地味すぎるということなら離れた位置でナイフをかざすんでもいいよ、でもあのポーズはナイ。
 肖像画のことは…もういいです。でもとりあえず馬の肩はあそこではないから翼が肩甲骨から生えるのだとすればペガサスの翼はあそこにあるべきではないし、馬に乗る人が脚をあんな位置に置くことはありえません。乗り手の安全性を考えているのでしょうが遊園地の動物の乗り物に乗っているかのようで泣けましたよ感動の涙じゃないんだよ…
 テルのいい笑顔は輝くばかりで、さすがだなあとそこには感動しました。それでこそスターだ! だからこそもっといいホンを与えてやってくれ劇団!!

 第二幕プロローグ、マイナー曲調の小公子小公女の歌も好きです。
 衛兵隊士とオスカルとのやりとりはオスカルの軍人らしからぬ反抗っぷりが尾を引いて部下たちにまで疑心暗鬼を生む始末。ひどいわー。
 そこでオスカルとジェローデルの結婚話を聞かされる形になってアンドレが毒殺に及ぶ流れなのはまあスムーズかな。前回くらいからなくなったオスカルの「そんなに思いつめていたのか…」が今回もないままだったのには一安心。もう封印してください、二度と復活させないで!
 続くカーテン前場面も下級生たちの出番のためとはいえ、衛兵隊士のその家族たちが何をどう心配しているのか混乱していて観ていてとにかく気持ちが悪いです。東宝ではここにアランの謎の告白が加わっていますがサッパリ意味がわかりません…
 アンドレの目の悪さがアランたちに知られる場面、恥ずかしい匍匐前進のくだりがなくなったのは数少ない改善点のひとつです。男たちの熱い芝居はよかったわ。
 アランに新曲を増やすのはいいんだけれど、オスカルは「白ばら」なのに何故「蒼きバラ」と歌わせるの? あと「Pale Rose」は英語読みならペール・ローズ、フランス語読みならパール・ロゼでは? 何故「パール・ローズ」と歌わせるの??

 ロザリーがオスカルを訪ねてくる場面はこの間の月組版から増えたんでしたっけ? 無理やりだよね…夜が遅かろうがなんだろうがそう頻繁には会えない相手を「話は後だ、まずはお帰り」とか言ってさっさと帰そうとするのはおかしいじゃん、その「後」っていつなんだよ無責任だなオスカル、ってなっちゃうでしょ? こんな台詞書くなよホント…
 ちなみにここのテルみりにはカップル感も百合ユリしさも姉妹感も感じなかったなあ…寂しいなあ…
 いわゆる「今宵一夜」はまぁ様アンドレ相手のテルの方が色っぽかったと思いました。というか色気ありすぎてオスカル処女じゃナイ感すらあった(笑)。歌い終わった後にくたっと倒れる感じがヤラしくてねえ、誘ってる誘ってる!って感じでねえ、そらまぁ様も惹き寄せられるよねえ、って感じで…イヤよかった全力で褒めてます。ふたりセットだとやはり雪特出のチエテル版がよかったとは思うのですが、今回もサッと締まる幕が憎かったね!

 パリ市街に入ってからのオスカルの台詞もいつまでたってもきれいに流れるよう改善されないのが本当に不満なのですが、生徒の熱演はさすがでいつもじんわりさせられます。その前か、確かちゃぴロザリーが言わされていた「お母さんたちは気をつけて」みたいな台詞がなくなったのも数少ない改善点です。二度と復活以下同文。
 雪全ツでジェローデルがオスカルを平手打ちするのがなくなった改善が今回も踏襲されていて一安心。二度と復活以下同文。
 アンドレ絶命の際にオスカルを押しとどめているジェローデルは、黒子に対するタイプもいると思うのですが、カイちゃんはアンドレの歌が聞こえていて状況を察していて無念…!みたいな芝居をしていて、胸つかれました。
 そこからのテルの「シトワイヤン!」の、一度低く潜ってまた上昇させるイントネーションがすごく好き。「行こう!」で拍手を入れるのって歌舞伎チックで私はいつも少し気恥ずかしく感じでしまうのですが、テルオスカルだと自然に手が叩けます。
 でも天国は…馬車はなくてもいいけどアンドレが待っていてくれてもよかったんじゃないですかね…新曲はいい歌詞ですけれどね…しょぼん。

 フィナーレはテルが全編オスカル仕様、つまり男役芸完全封印というのが賛否両論あったようですが、東宝Bパターンの黒燕尾は男役でいきそうだというじゃないですか! えーそれも見たかった!! 確かに「薔薇のタンゴ」は原点回帰で初演のオスカル・バージョンで、というのはおもしろかったと思いますが、男役をまったく一公演見られないのも寂しいですからね…
 キタさんまぁ様と踊るデートリッヒみたいなテルの女役も妖しい魅力でよかったのですが。
 エトワールはみりおん。こういう扱われ方は本当に不憫です…

 というわけで以下ざっと生徒について。
 テルは本当にリアルオスカルで美しさと三次元化能力の素晴らしさが圧倒的でした。「愛の巡礼」のあとだったかな? 下手花道にハケるときに身を抱くようにしてマントを抱きつけて、その手がそっと頬の涙を拭う仕草をするのがいじらしかったです。サヨナラ公演にやりがいのある素晴らしい役が来ることに期待!
 みりおんは実力を発揮する場が与えられないのが本当に不憫。全ツに期待。去就はどうなるのでしょう…
 まぁ様はアンドレもジェローデルもよかったわ、美しいわ華があるわ好きだわ。歌はさらにがんばっていただきたいわ。
 キタさんはアランの方がよかったかなあ、地味なアンドレに思えました。
 逆にカイちゃんはジェローデルの方がよく思えました。アランの荒々しさがなかった気がします。なんにせよ歌はもっともっとがんばってほしいです。そろそろバウ単独主演とか背負わされますよね? 頼むよ!
 ちーちゃんも熱演でしたね、スチールが素敵だったなあ。ロベスピエールも脇の上級生がやる老け役路線になっていなくてよかったです。
 ともあれ全ツをラストに宙組に植田担をやめさせてあげてくださいよ、ショーをやって下級生を育てないと本当にマズいって!
 型芝居を学んだところでやる次の本公演に本当に期待しています。




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