駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

二月大歌舞伎第一部『三人吉三巴白浪』

2023年02月07日 | 観劇記/タイトルさ行
 歌舞伎座、2023年2月3日11時。

 節分の夜更け。美しい娘姿の盗賊・お嬢吉三(中村七之助)が夜鷹のおとせ(中村壱太郎)の懐から百両を奪い取り、大川へ突き落とす。その一部始終を見ていた御家人崩れの悪党・お坊吉三(片岡愛之助)がお嬢を呼び止め、百両を巻き上げようとする。争い始めたふたりを、通りかかったもとは吉祥院の所化で今は盗賊となった和尚吉三(尾上松緑)が仲裁し、同じ名を名乗る縁から義兄弟の契りを結ぶが…
 作/河竹黙阿弥。大川端庚申塚の場を序幕とし、巣鴨吉祥院本堂の場、裏手墓地、大詰めの本郷火の見櫓の場まで三幕五場に抜粋して上演。

 お話はまったく覚えていないけれどこの三悪人の設定は知っていて、過去にどこかで観たことがあるのかなと思っていたのですが、ブログには記事がない…2001年以前の、それこそ学生のときに学校で観させられたような記憶なのかもしれません。ともあれお友達に誘われて、奇しくも節分の日に観ることになりました。かぶりつきというか砂被りというか、ラストの大立ち回りに吹き上がる雪の紙吹雪が舞い散る席というかで堪能させていただきました。おもしろかったー!
 抜粋版ということで多少話は飛んでいますがそもそもアレだし(笑)十分わかっておもしろかったです。てか凄みの利かないナリだからって女装してまで盗賊続けるお嬢っつーキャラもだし、百両の名刀の生き別れの双子のって狭すぎる世間の絡みまくりすぎる因果、ホント歌舞伎ってさー!とつっこみたいのですがおもしろいんだから仕方がない、こいつぁ春から縁起がいいわけです。
 ラスト、三悪人の友情というか義理堅さというか仲間意識ゆえの大立ち回りも胸アツだし、そこで見得切って幕引き、という鮮やかさもホントたまりませんでした。追っ手に戸板で囲われるのも時代劇とかで見るヤツ!ってなりましたし、それを登って屋根に上がって見得を切るお坊の視線がどかんと落ちてくる位置のお席で、もうハートずっきゅん!でした。雪の中振り袖の先を結って首の後ろに回して大立ち回りを始めるお嬢ガン見席でもありました、あなや…
 そういえば、そもそも三人が出会う喧嘩仲裁場面、『バレンシアの熱い花』でフェルナンドがラモンとロドリーゴのサーベルをコートで押さえるのはここから来ていたんですよねきっと! めっちゃタギりました。
 口調をころころ変えて、男言葉になると綺麗なべべでも大股でのしのし歩いちゃう七之助がホント卑怯なくらいに美しくてチャーミングで、サイコーでした。幕末の退廃的な世相、絵画美あふれる舞台ということでしたが、住んだり乗り換えたりしている地名が出てくるのも楽しく、エンタメっぷりを堪能しました。
 最初の幕間が長いのはお弁当タイムのためなんですね…それがなければほぼ2時間というのもコンパクトでよかったです。でもいつか全幕観たいなー、またひとつ楽しみができました。




コメント (2)
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