駒子の備忘録

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ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』(文春文庫)

2017年01月11日 | 乱読記/書名か行
 カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくないと、カミーユは彼女との関係を警察に隠して残忍な強盗の正体を追うが…『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』のカミーユ・ヴェルーヴェン三部作、完結編。

 『この女~』がこのミスで話題になって読んで、そこから訳出された順に読んできました。
 三作品ともミステリーとしての趣が少しずつ違っていますよね。今回の作品はある種の著述トリックという意味では『この女~』に近いかもしれません。でもやはりミステリーとしてというより小説として、せつなく、おもしろく読みました。
 私はカミーユが最後まで警察官として行動してくれたことがうれしかったですし、自殺とかして終わるエンディングじゃなくてうれしかったです。まあこのあとどうかはわからないんだけどさ。カミーユはアフネルの妻子を逃がし、アンヌも逃げさせました。アフネルのことはマレヴァルに殺させたけれど、マレヴァルのことは殺さず逮捕しました。それが彼のけじめのつけ方なのだろうなあ、と。女を、愛を知った男はそういう生き方をするのに、そうでない男は…という物語でもあるのかもしれません。
 それぞれ原題は全然違うもののようだけれど、期せずして女名前が揃ったように見えるシリーズ、というのもたいしたものですね。アレックスというのは男女どっちつかずの名前だけれど、いい邦題で印象づけましたからね。
 ほかに中編がいくつかあるだけで、長編としてはこれで完結、というシリーズだそうです。私はルイが大好きなんですけど! 彼の話はないの!?
 …静かに新作を待ちたいと思います。

 

コメント (2)
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