駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)

2017年01月10日 | 乱読記/書名は行
 ピアノの調律に魅せられたひとりの青年が、調律師として、人間として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。2016年本屋大賞受賞作。

 私は楽器とか音楽に疎くて、だからなおさらあこがれを抱いていて、そういうものがモチーフの作品にはわりとホイホイ惹かれます。映画でも漫画でも小説でも。これも楽しく読みました。
 とても静かで穏やかで、そういう意味ではなんということもない作品なのかもしれないけれど、でもしみしみと楽しみました。主人公の弟への屈託とかが特によかったかな。私は町育ちなので、主人公のような山の育ちの人にあこがれる、というのもありますね。
 映画はともかく、漫画や小説では描く音楽そのものを聴かせることはできないのだけれど、だからこそ響かせられるものがあると思います。ピアニストではない主人公がとつとつと表現する音楽、というのもよく伝わってきてよかった。大きなむくむくの犬の「子犬のワルツ」とか、ホントいい。
 ふたごは柳さんが好きだったりしたのではないかしらとかなんとか、ねちねちやろうと思えばもっとできるだろうにしない、でもあっさりというのとも違う、淡々と美しい筆致もよかったです。



 
コメント
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