映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

クライマーズ・ハイ(2008年)

2015-09-26 | 【く】



 1985年8月12日に起きた日航ジャンボ機墜落事故を背景に、群馬県の地方紙「北関東新聞」でのスクープを巡る社内攻防の一部始終を描く。

 NHKでもドラマ化されており、個人的には迷うことなくドラマに軍配。


 
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 原作未読。横山作品は、映画化されたものが多いようですが、どれも読んだことも見たこともなく、唯一見ているのがこの「クライマーズ・ハイ」のドラマ。そして、本作。

 ドラマ版を見た際に、あの日航ジャンボ機墜落事故を巡る新聞社内部の話、という点に興味を抱いて見たのですが、そこへ登山の話や主人公の悠木の家族の問題等々が絡み、こんな重厚な話だったのか、、、と意外に思い、ドラマも非常に秀逸で印象に残りました。で、映画では悠木を、かつて愛した堤真一が演じるというので、今となってはどうでも良いといえばどうでも良いんだけれども、一応、ドラマも良かったし見てみようと思って鑑賞した次第です。

 しかしながら、本作は、ドラマ版に完敗です。もう、比べ物にならないくらい、ドラマ版の方が素晴らしい。やはり、大森寿美男は凄いと改めて思いました。

 本作は、とにかく、全編にわたり描写が散漫。高嶋政宏演じる安西なんて登場している意味がないし。もちろん、現在シーンで、安西の息子(小澤征悦)との登山を描くために必要なんですが、本作では、登山シーンがゼンゼン意味のないシーンになっちゃっているのがすごく残念。何で登山シーンが入るのか、原作も、ドラマも見ていない人からすれば、イマイチピンと来ないんじゃないでしょうか。それがクライマーズ・ハイというタイトルそのものにつながる重要なファクターにもかかわらず、本作ではただ展開の流れをぶった切るおじゃまなシーンに成り下がっちゃっておりました。これは明らかに脚本が悪い。

 その点、ドラマは、悠木がスクープを載せるか載せないかについての決断と、クライマーズ・ハイを見事に絡めていたため、しっかり見ている者に伝わったと思います。

 あと、やはり、本作で大切なのは、「新聞を作るとはどういうことか」であり、また「地方紙の存在意義は何か」であります。この2つの重要な柱を、映画の脚本では見失っていたのではないでしょうか。

 ドラマには、交通事故で死亡した男性についての描写があり、同じ人間の「死」にもかかわらず、ジャンボ機墜落事故との記事の扱いの違いを男性の遺族に問い掛けられ答えに窮する悠木が、改めて新聞の意義について苦悩しながら自問するという大事なシーンがあったと思いますが、本作にはそれがありません。原作はどうなのか知りませんが、もし、原作にあって、映画でそれをカットしたのであれば、やはり、脚本としてはお粗末です。

 また、私がドラマを見て、深く刺さった悠木のセリフに「俺たちは、新聞紙を作ってるんじゃない、新聞を作ってるんだ!!」というのがありました。これは、新聞業界全体に対する強い戒めになるセリフでもあり、私自身もゼンゼン知らない世界の話じゃないだけに、とても心に迫るセリフでした。映画にはこれがない。堤真一が神妙な顔をして「俺たちは新聞を作ってる」と2度言っていたように思いますが、それではダメなのです。そこが、本作の脚本はダメだな、と思った最大の理由かもしれません。

 笑っちゃったのは飲み屋でのケンカのシーン。地方紙の悲哀を描いたシーンのはずなんですが、かなり寒い。遠藤憲一演じる社会部長と悠木の会話で、連合赤軍(作中、レンセキレンセキと連呼していたのは、連合赤軍のことなんですね、、、。しばらくしてから分かりました)の件で、地元紙である北関東新聞は、全国紙に内容で負けた、と悠木が部長に詰め寄ります。すると、部長が気色ばんで「負けた? どこにだ?」と怒鳴り返す。で、悠木の返答は、、、

「朝毎読売、それとサンケイですよ!」

 この「それとサンケイですよ!」って、原作にもあるんですかね? 業界で産経新聞を新聞だと思っている人なんて、どんくらいいるんでしょうか? あれこそ、新聞紙だと思うんですけど。どうやら、フジテレビがスポンサーっぽいシーンがあちこちに紛れ込んでいたので、そのための配慮か? と思いますが、それにしてもあの露骨な悠木のセリフは、作品全体の質をも下げる、サイテーのセリフでした。サイテーすぎて笑えましたけれども。

 あと、本作全般、セリフが非常に聞き取りにくいです。肝心なセリフが聞き取れない、という場面がいくつもありました。演出上、そういう喋り方が必要だとは思えず、観客視点の欠落した制作の自慰行為なんで、やめていただきたい。

 まあ、とにかく、一見社会派の硬派な作品に見せかけた、中身スカスカのハリボテ映画です。これでは、520人の犠牲者は浮かばれないし、ご遺族の気持ちを逆なでしているような気さえします。

 堤真一、、、昔は好きだったんだけどなぁ。大河ドラマ「武田信玄」で、長男の武田義信を演じていた頃が、一番ステキだったかも。朝ドラ「マッサン」では、久しぶりに意気な演技を見られましたけれど。本作では、ちょっと、、、脚本のせいでもあるけど、魅力的な人物ではなかったです。






とにかく、原作を読んでみようと思いました。




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