映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

五日物語 ―3つの王国と3人の女―(2015年)

2016-12-06 | 【い】



 副題のとおり、3つの王国に住む3人(正確には4人)の女性たちの欲望が巻き起こす物語。 上記リンク先のストーリーを抜粋でコピペしておきます。

====ここから。

 不妊に悩むロングトレリス国の女王(サルマ・ハエック)は“母となること”を追い求め、魔法使いの教え通り、国王(ジョン・C・ライリー)の命と引き換えに得た怪物の心臓を食べて美しい男の子を出産する。やがて成長した彼は、同じ怪物の心臓のもと生まれた下女の息子と兄弟のような友情に結ばれながら親離れの年頃となるが、女王はそれが不満でならなかった……。

 人目を避けて細々と暮らす老婆の姉妹。好色なストロングクリフ国の王(ヴァンサン・カッセル)にその美しい声を見初められた姉は、不思議な力で“若さと美貌”を取り戻し、妃の座に収まる。しかし、見捨てられた妹もまた若さと美貌を熱望していた……。

 まだ見ぬ“大人の世界への憧れ”を抱きながら王(トビー・ジョーンズ)と共に城で暮らすハイヒルズ国の王女は、城の外に出ることを切望していた。そんなある日、王は、屈強で醜いオーガ<鬼>を彼女の結婚相手に決める。華やかな城から連れ出され、鬼の住処で過酷な生活に耐えながら、王女はそこから逃げ出す機会を伺っていた……。

====ここまで。

 大人のおとぎ話、ダークファンタジー、などと謳っており、その宣伝文句にウソはありませんが、、、、。



☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 こういうの大好きなので、迷わず見に行きました。1日の映画の日、午前中に『戦場のピアニスト』、午後に本作。なかなかヘヴィなメニューだったかな。

 
◆ビジュアルで楽しめる
 
 ネット上で、“本年度最も底意地の悪いおとぎ話!女の性(サガ)を皮肉に描く”とか書かれているものだから、期待値は上がってしまうというもの。いわゆる“イヤミス”も“ファンタジー”も好きじゃないけど、こういうダークファンタジーは好きなんです。このジャンルは、世界観が大事だから、美術や衣装が凝っているケースが多く、視覚的に楽しいのですよね。演技がオーバーアクションなのも却って楽しめる。何でもアリな世界が面白いというか。

 本作も、ご多分に漏れず、やっぱり衣装も美術も映像もとっても美しいし、これはスクリーンで見る価値アリでしょう。CGももちろん使っているでしょうが、3つの国のお城はイタリアに実在するお城でロケしたとのことで、どれもこの世のものとは思えない造形美。ロケハンに苦労したのも頷けるというものです。

 3つのお城の中でも、特に私が心奪われたのは、ロッカスカレーニャ城。本作では、ストロングクリフ国の王の城という設定。ヴァンサン・カッセル演じるストロングクリフ国王が、もう、笑っちゃうくらいの好色狒々オヤジなんです。ロッカスカレーニャ城について調べてみたら、こんな記述に行きあたり、、、

 ~~11世紀~12世紀にかけ、敵からの攻撃を防御のために、断崖絶壁を持つ丘の頂上に建てられました。伝説では、16世紀コルボ家の伯爵は、村の結婚前の全ての女性に自分と一夜を過ごすことを命じていたとのこと。~~

 いやぁ、ストロングクリフ国王と見事に被っちゃってて、またまた笑える。

 でも、本当に、こんな断崖絶壁の上の城なんて、見ている分には美しいけど、中に入るのは怖いかも。だいたい、城まで崖を登るなんて、高所恐怖症の私には、考えただけでも卒倒しそう、、、。

 他の城、ドンナフガータ城(ロングトレリス国の女王の城)、デルモンテ城(ハイヒルズ国の王女の城)もステキでしたヨ。

 老婆の姉妹の姉が、美しい娘に生まれ変わる場所であるサーセットの森も、まあ、撮り方なんだろうけど、非常に幻想的な森に見えました。眩しいくらいの緑に、長~い赤毛の真っ白な素肌の美女がたたずむ画は、それはもう、絵画の様でありました。ストロングクリフ国王がその美女の姿に魅入られて妃に迎えるという展開になりますが、狒々オヤジでなくても、あの光景には魅入られてしまうのは無理もありません。


◆“底意地の悪いおとぎ話!女の性(サガ)を皮肉に描く”……?

 ストーリー的に、別に底意地が悪いとは思いませんでしたねぇ。

 冒頭に書いた「3つの王国に住む3人(正確には4人)」というのは、老婆姉妹が2人だからですが、4人の女性たちのエピソードは、確かに、それぞれ、“出産”“若さと美”“処女喪失願望”を表しており、まあ、女の性を描いているとは言えそうですが。

 ハイヒルズ国の王女以外の女性たちは、皆、バッドエンドですので、底意地が悪いって表現になったのかも知れませんねぇ。ハイヒルズ国の王女も、ラストこそ一応良い終わり方ですが、彼女の願望である“良い男と寝たい”はモノの見事に打ち砕かれるわけですから。

 でも、人生なんて、そんなもんじゃない? 思い通りにならないのが人生でしょう。

 最悪のラストを迎えたのは、恐らく、若返ってストロングクリフ国王の妃になった老婆姉妹の姉でしょうか。どう最悪かは、書くのはやめておきますが。確かに、この展開だけは、ちょっと意地が悪いかもね。ある意味、妃になった姉も悲劇だけど、一番のダメージは狒々オヤジであるストロングクリフ国王だろうね。正直、ちょっとザマミロ的な感じはあります。女を若さだけで品定めしているからそういうことになるんだよ、馬鹿め、って感じかな。

 私は、昔も今も出産願望が皆無の人間なので、サルマ・ハエック演じるロングトレリス国の女王様にはさっぱり共感できませんでした。おまけに、この女王様、息子を手なずけるのに必死で、子離れできない、母親としても最悪な人です。こういう人って、執着するものがないと生きて行けないのよね、きっと。自分に自信がないんだと思うけど、執着するものがあることで生きていることを実感できるのでしょう。本人も哀れだけど、一番気の毒なのは執着される人だわね。災難としか言いようがないけど、逃れるのが難しいから、人生を掛けて闘わないといけなくなるケースも多い。

 この女王様、最後は、執着の権化であるおぞましく醜いモンスターとなって息子に襲い掛かります。そして、当然、息子に殺される。残念でした、、、ごーん。殺されないと、殺さないと、こういうのは終わらないのよ。

 子どもに聞かせても問題ない童話となると、夢見る夢子なハイヒルズ国の王女のオハナシですかねぇ。あんな化け物と結婚させられて気の毒だけど、まあ、助けてくれた人たちを全員犠牲にしながらもどうにか脱出できたし、ちゃんとハイヒルズ国に戻って父王の後を継いだ、ってことで、自力で人生を切り開いた! ってとこでしょうか。このエピソードが一番どーでも良かったです、私には。

 ちなみに、本作は、オムニバスではありません。舞台はそれぞれ分かれていますが、地続きになっていて、一応、最後は1つにまとまる感じです。


◆嗚呼、ヴァンサン・カッセル、、、

 それにしても、ヴァンサン・カッセルです。なんなんでしょうか、あの地で演じているのかと思わせる狒々オヤジっぷりは。若い頃は、もうちょっとキレイで品があった気がするのですが、、、。いくら役の上とはいえ、卑しい顔つきになっていて、なんかちょっと哀しかったな~、昔を知っているオバサンとしては。ストロングクリフ国王が、メチャメチャ頭悪い人なんで、余計にそう見えたのかも知れませんが。そうであって欲しいなぁ。

 サルマ・ハエックは美しいですね。彼女の主演した『フリーダ』、未見なのです。フリーダ・カーロの絵は結構好きなので、映画も見たいなぁ、と思っているのですが、、、。化け物の心臓を口の回り血だらけにしてかっ喰らうシーンは、、、ゼンゼン気持ち悪くなかったです、残念ながら。かっ喰らい方がお上品過ぎです。

 本作の監督マッテオ・ガローネの他の映画、見たことないのですよねぇ。『ゴモラ』とか面白そうだけど、ちょっと敷居が高いというか。本作の世界観とかは好きですが、ストーリーに滲む監督の個性みたいなのは、あんましソソられないなぁ、、、。ま、食わず嫌いしていないで、見てみれば良いんですけどね。
 






原作を読んでみようかな、と思える程度には面白かったです。




 ★★ランキング参加中★★

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 誰も知らない(2004年) | トップ | 招かれざる客(1967年) »

コメントを投稿

【い】」カテゴリの最新記事