映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

この庭に死す(1956年)

2015-06-06 | 【こ】



 以下、昨年開催されていた「三大映画祭週間2014」オフィシャルサイト(上記リンク。そのうちリンク切れしそうですが)より===

 山師のクラークは金の採鉱者たちが集まるキャンプ近くの村にやってくるが、地元の警察に拘束されてしまう。彼が近隣で起きた銀行強盗に絡んでいるというのだ。

 しかも、今度は警察が金鉱を州のために没収してしまったので、採鉱者たちが暴動を起こすが、それも平定されてしまう。

 クラーク、リザルディ神父、キャスティンとその娘、そしてキャスティンの情婦であるジンの5人はこの機に乗じてジャングルに逃げ込むが、それは彼らの命がけのサバイバルの始まりだった。

 ===引用終わり。以下補足。

 舞台は南米と思しき所。「金」の採鉱者ではなく、ダイヤモンドです。

 クラークは、シャークとあだ名され、相当ヤバそうな男(でも一応イケメン)。キャスティン(字幕ではカスタンになっていたと思うので、以下カスタン)はフランスに帰国し料理人として店を持ちたいと夢見ている人畜無害な爺さん。その娘マリアは、聾唖者。

 そして、シモーヌ・シニョレ演じるジンは娼婦で、カスタンの「情婦」ではない。カスタンが勝手に思いを寄せており、気持ちを伝えてはいたが相手にされていない状態。だが、カスタンがひと財産貯めこんでいるようだと知り、カスタンの申し出に乗ってフランスに行く気になっていたわけ。

 リザルディ神父(ミシェル・ピコリ)は、どこまでも布教に熱心な神の使者。

 ・・・この5人のキャラが、ジャングルでのサバイバルで激変し、物語はバッサリと幕切れへ。ブニュエルらしいというか、、、らしくないというか。エンタメ度高し。

 
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 ブニュエル作品+シモーヌ・シニョレ出演、ってことで見てみました。ブニュエルのメキシコ時代の作品だそうですが、その時代の作品というと、『忘れられた人々』の印象がキョーレツ過ぎて、本作もそんな感じのものかと思っていたら、これが全然違いました。

 本作は、前半と後半でガラッと話が変わります。前半は、ダイヤの鉱山が舞台で、一攫千金を夢見る採鉱男たちと、鉱山を管轄する支配者の横暴ぶりが描かれます。後半は、ジャングルが舞台で絶望的なサバイバルが延々描かれます。どっちも人間の欲望と欲望がぶつかり合うという点では通じています。

 前半もまあ、面白いんですが、圧倒的に後半の方が面白かったです、私は。

 シャークがものすごく生きることに貪欲な男です。前半はかなりの極悪人的な描かれ方だったのに、サバイバルの後半になったら、仲間と共に生きることに貪欲な「頼もしい男」になっているんです。でもって、ジンとラブラブになったりして、あの前半のヤバさはどこへやら・・・。同じ人間なのに、こうも置かれた状況で違うように見えるとはねぇ。

 そのジンも、計算高い娼婦で、常に自分の利になるようにしか動かない。だから、ジャングルでシャークに「初めて見た時から好きだった」なんて言ってたのも、どこまで本当なのか、怪しいもんです。ジャングルではこいつに着いて行った方が良さそう、という鼻を利かせた言動だったと思えなくもないです。

 以下、ネタバレバレですので、本作を見る予定のある方はそのおつもりでお願いします。

 問題は、善人そのものだったカスタンの変貌ぶりです。彼が、いわば、一番、想定外の変わり方をしてしまったがために、思わぬ顛末に至ったのですが、、、。私には、カスタンが変わった理由が、イマイチ分かりません。

 彼がその変貌ぶりを発揮する前に、一行は、絶望的な状況から少し救いのある状況へと移っていたのです。ジャングルに小型旅客機が墜落していて、食料や衣類、宝石類等が手に入ったからです。ジンは高価なドレスに着替え、カスタンの娘マリアも、それまでは素朴そのものだった娘なのに、急に宝石類に執着するようになります。皆、生きる力が戻るわけ。でも、カスタンは、、、これがあまりよく分からない。描写がほとんどないからです。

 そして、突然、高価なドレスを身にまとったジンを猟銃で殺害するという、、、。

 私なりの解釈では、高価なドレスに着替えたジンが、シャークと親しげに会話しているのを見て(恐らく、その前にもシャークとイイ感じだった現場を目撃していたのだろうと思われる)、カスタンは、そっちの方が生きる力を奪われたのかも知れないな、と。ジンがほかの男のものになってしまうことに耐えられない、、、のではないか。また、不釣り合いな高価なドレスを纏っているジンの姿がイヤだったのかも知れない。

 でも、カスタンは、その後、神父も射殺しちゃうし、自分の娘マリアを助けようとしているシャークにも銃をぶっ放します。これがよく分からない。もう、皆殺しで自分も死んでやる! って感じだったんですかねぇ、、、。ヤケッパチっていうやつですか。頭のネジが外れちゃった感じです。

 あんな鉱山での暴動さえなければ、カスタンはフランスに帰って(ジンにはあっさり振られていただろうけど)、穏やかな料理人としての人生を送れていたかも知れないのに。、、、いや、ジンを妻に、などと考えてしまう思考回路では、結局、破滅が待っていたかも。

 サバイバルものは、どっちかっていうと、苦手な方なんだけれど、本作は、そこまで徹底的に登場人物を追い詰め過ぎず(って、十分過酷な状況ではありますが)、カニバリなどの極限状態にまでは至らないので、むしろ、見入ってしまいました。

 『忘れられた人々』の方が、本作より、百倍キツいです。本作は十分楽しめる映画でした。




シモーヌ・シニョレの悪女ぶりはいつ見ても嘆息モノ。




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2 コメント

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ダイヤモンドだね~♪ (松たけ子)
2015-06-07 20:24:18
すねこすりさん、こんばんは!
またまた激シブいセレクション!こちらでレビュウ拝読して以来観たくなったブレッソン監督の「やさしい女」こっちでも公開中なので、観に行こうかな~と思ってます。
これも面白そうですね。あんまし難解じゃなさそうなのがいいです。シモーヌ・シニョレは強烈な女優ですよね~。彼女に比べたら、ほとんどの女優がションベン臭い小娘に見えてしまいます。
追伸:今日のカープはかーちかーちかっち勝ち♪とりあえず脱・最下位してくれえや!
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これぞ、ザ・ビッチ! (松たけ子さま(すねこすり))
2015-06-08 22:06:08
たけ子さん、こんばんは。
そう、シモーヌ・シニョレ、圧巻ですよね~。
たけ子さんのお好きなイザベル・ユペールとは毛色が違いますよねぇ~。

『やさしい女』ドミニク・サンダを拝むだけでも価値アリだと思います。
是非是非。感想聞かせてください。

カープ、まだまだイケる!
川口が監督やってくんないかなー。巨人のコーチもお払い箱になったことだし、カープに恩返ししろよ! と思ってるんですけど。
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