ジャック(エイドリアン・ブロディ)は、仲間とケチな詐欺を働いて巻き上げた金で生活していた。ある日、暇つぶしに入った映画館で、カウンターでアルバイトしていた女子大生のクレア(シャーロット・アヤナ)と偶然出会い恋に落ちるのだが、、、。
割と王道なラブストーリー映画でそこそこ悪くない、、、んだけど、このサイアクな副題のせいでかなり損していると思われる。疑惑の男って誰よ!?
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もともとエイドリアン・ブロディって、ゼニアのモデルをしていた頃から苦手な俳優だったんですが(あの顔がどうも、、、)、2年ほど前に『戦場のピアニスト』を見て、見方が180度変わり、さらに、昨年「午前十時の映画祭」で、スクリーンで3度も同作品を見たら、なぜかものすごくイイ男に見えてきて、“もしかして私、惚れたかも、、、”状態になり、突如、彼の出演作をイロイロ見たくなったという次第。
で、なぜ本作からか、というと、特に理由はないけど、オスカー受賞する前の作品を見たいなぁと思いまして。本作とほぼ同時期の作品『ブレッド&ローズ』も良かったしね。
まあ、オープニングからラストまで、ブロディは出ずっぱりなので、彼を鑑賞するには最適な作品でした。
◆不良青年と優等生女子、というテッパンな組合せ。
ブロディ扮するジャックは、もう、言ってみれば、どうしようもないチンピラなんだけど、なにしろ、ジャックはカッコイイのですよ。
いつも着ているのがヘビ皮のジャケットなんだけど、あんなジャケット着ている時点で、フツーじゃないのが一目瞭然。でも、恐ろしく似合っていて絵になるのだなぁ、これが。さすがブロディ、ゼニアのモデルやってただけのことはある。
で、このジャック、実は、詐欺稼業の合間に、小説なんかも書いていたりする、、、ただのバカ一色のチンピラじゃないところがニクい。
暇つぶしに入った映画館では、前の座席の背もたれに足を乗せて映画を見ているジャック。携帯が鳴ると、上映中なのに出る! 周囲に白い目で見られても平気。少し喋って、仕事の打ち合わせになったところでようやくロビーへ、、、とかいうこの辺の描写は、ジャックがどういう男なのかがサラリと、でも印象的かつ分かりやすく伝わってくる。
そしてクレアに出会うんだけど、出会いの会話は、定石通り、喧嘩(というか罵り合い)で終わる。ここでこの2人は先行きはキマりだわね。
昔の少女マンガとかでよくあったような。こういう、ワルい男と優等生女子が惹かれ合う物語。大抵、男はクールを装って、女が積極的だったり、おせっかいだったりして2人の距離があっという間に縮まるパターン。本作もまさにそれ。クレアちゃんは、初めて出会ったであろう不良イケメンにイチコロだったのですね。
2人は、一応(?)付き合い始めて、なかなか良い雰囲気になるのですが、ジャックは不遇な生い立ちのせいもあって、多分、特定の女性と長く深く関係を築いたことがないのだと思われ、クレアが学会の発表でしばらく離れている間に、詐欺仲間の女性と寝ちゃって、その現場をクレアに目撃され、、、。
……等々というあれこれが2人の間には起きまして、果ては、クレアが自殺未遂まで起こしたりしますけれども、ラストは元のさやに収まることを暗示するような終わり方で、ハッピーエンディングなんだと思います、多分。
正直言って、ストーリー的には特筆事項はないような、、、。
◆大した役者だったのだ、やはり彼は。
本作がありきたりなストーリーな割に、さほど陳腐さを感じずにいられるのは、やっぱし、ジャックの描写が良いからじゃないでしょうか。つまり、ブロディの演技が素晴らしいってことです。
ジャックも、不遇な生い立ち、特定の女と深入りしない、クールなチンピラ、イケメン、、、と、人物造形としてはありがちで、多分、大根が演じていたら見るに堪えない映画になっていた可能性が高いと思う。でも、やっぱりブロディはこの頃から大した役者だったんだなぁ、、、としみじみ思います。
クレアに惹かれつつも、クレアを冷たく突き放したり、仲間が詐欺グループにクレアを引きこもうとするのを絶対に阻止したり、傷ついたクレアを自分もボロボロになりながら抱きしめたり、硬軟演じ分けが実に巧みです。
これはもちろん、演出が良いというのもあって、ジャックのファッションもそうだけど、髪型も同様で、時々ものすごい寝癖が付いてるんだけど、それがまた実にジャックのキャラやその時の気持ちを表していて上手いなぁ、、、と思います。
また、クレアを演じたシャーロット・アヤナがとても可愛く魅力的。大胆に脱いで、美しい裸体を惜しげもなく晒しているのもアッパレ。ラブシーンも独特の撮り方をしていて印象的です。美男美女のラブシーンは美しくて良いですなぁ、、、。
まあ、とにもかくにも、本作は、ブロディあっての映画で、彼がジャックを演じたからこそ見るに堪える作品になったのだと思われます。
余談ですが、ブロディは、『戦場のピアニスト』でも思ったけど、ものすごい痩せているように見えるけど、かなり鍛えられた体をしています。マッチョとまではいかないけど、腕もガッシリしているし。ま、マッチョは私嫌いなんで、あんくらいがちょうど見ていてもイイ感じです。
◆ブロディは詐欺常習犯には向いていないと思う。
ところで、ジャックのやっている“ケチな詐欺”ってのは、ホテルの一室に仲間の女性がテキトーな客をみつくろって売春を手引きし、行為が始まる前に、警察官の扮装をしたジャックと親友チャーリーが乗り込んで、客のカネや貴重品を巻き上げる、、、という、実に実にみみっちいものです。
そもそも、ブロディみたいな特徴のある顔の人間は、詐欺常習者には向いていないよなぁ。だって、被害者に顔を覚えられやすいから、すぐアゲられちゃうと思う。せめてメガネをかけるとか、付け髭つけるとかするならまだ分かるけど、警察官の制服着るだけじゃダメでしょ。プロとは思えぬ杜撰な手法。
まあ、映画でさすがにそんなに早くは捕まりませんが、終盤でおとり捜査にハマってジャックとチャーリーは2人ともお縄となります。ま、トーゼンでしょう。
ジャックやチャーリーが商売道具を入れて持ち歩いている大きい黒い鞄があるんですが、その鞄に何故か、「千 金 室」っていう漢字三文字が書かれているのが笑えました。何で、「室」なわけ? なーんて、日本人がヘンな横文字のTシャツ着ているのと同じですね。
いやぁ、本作を見て、さらに、ブロディ君がイイ男に見えてしまいましたヨ。何でかしらん? 『グランド・ブダペスト・ホテル』ではゼンゼン気にも留まらなかったのに。
この次は『ミッドナイト・イン・パリ』を見る予定です。またさらに赤マル急上昇(って死語?)するんでしょーか? 楽しみ
こないだまでイマイチだったのに最近どんどんイイ男に見えてくる
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