映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ブレッド&ローズ(2000年)

2015-02-16 | 【ふ】



 不法移民のマヤが、移民としての権利に目覚め、仲間とともに闘い、勝利を得ながらも、自分の犯した罪から本国へ強制送還されるという苦いお話。

 マヤを目覚めさせるのは、エイドリアン・ブロディ演じる、アメリカ人の白人青年サム。ま、2人は恋仲になるんですけどね、お約束通りに、、、。

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 『戦場のピアニスト』のパンフを読んだら、エイドリアン・ブロディが、自身の役者人生に影響を与えた監督として、ローチの名前を挙げていまして、彼の出演したローチ作品が本作でした。何と、脚本も見ないで出演を決めたとか。そんなの、これが初めてだったと、書いてありました。

 エイドリアン・ブロディの出演作は、実は、何気に見ていたのですが、彼を認識していなかったのですね、私。『戦場のピアニスト』で、初めて名前と顔をしっかり認識した俳優さんだったのです。

 ローチ好きの私ですが、本作のことはあんまりよく知らなくて、当然、エイドリアン・ブロディが出演していたことさえ知らず、パンフの記事を見て、ようやく見てみようと思った次第。

 社会派、社会派と言われるローチです。私は、彼へのそういう呼称は実はあんまし好きじゃないんだけど(リベラル=社会派、じゃないと思うんだけどなぁ)、こういう作品があると、まあ、そういうレッテルがベッタリ貼られるのは、致し方ないな、と納得せざるを得ませんでした。そういう作品でした、これは。

 なんつったって、扱っているテーマが労働運動ですからねぇ。しかも、不法移民のです。移民というだけでもハンディなのに、不法とくれば、もう何をか言わんやです。

 正直、主人公のマヤが、私はあんまり好きじゃないのね。なんつーか、最初からアマちゃん丸出しなんです。実の姉、ローサに翳があるので、これは何かある、と思って見ていたら、案の定、、、。もちろん、マヤは若いので、仕方がないのです、アマちゃんなのは。若さゆえに、正しいことが好きだし、それを主張するし、自分の欲望にも正直です。怖いものなしなんだよね、ある意味。自分も通って来た道だけに、見ていて嫌悪感を催すのだと思います。

 ですが、マヤは頭も良い。サムが彼女たちの権利を主張し、立ち上がろうと鼓舞するのだけれど、そんな彼に冷や水を浴びせます。「あなたのリスクは何?」、、、これは、言われたサムは堪えるでしょう。実際、ガツンと来ていた様子です。

 でもって、サムには猛烈果敢に挑み、まさしく肉食女性で、こういうところは、正直羨ましいというか、私にもこれくらいのガッツがあればなぁ、というか。・・・ま、それなりに当たって砕けてきた訳ですが、ここまで猛然と挑んだことは、ありませんでした、はい。

 痛いのは、ローサの人生です。彼女は、本当に苦労してきたのです、自分のためではなく、家族のために。彼女の感情が爆発するシーンは、涙なくして見られませんでした。

 ローチが描きたかったのは、こういう、不条理でしょう。これは、彼の全作品に通底するものです。出自で人生が決まっちゃう不条理。でもって、弱者への眼差しに欠ける社会への怒り。ローサのあの哀しい告白は、ローチの怒りそのものだとも思います。

 とはいえ、ローチの厳しいところは、マヤにキッチリ落とし前をつけさせているところです。弱者ならオールオッケーとはさせない。マヤが犯した罪が原因で、彼女は権利を獲得しながら、その勝利に酔っている真っ最中に、強制送還を言い渡されるのですね。この辺がローチらしい、かな。

 エイドリアン・ブロディは、なるほど、良い俳優さんです。本作を見て、それは非常によく分かりました。オスカー後は見ていないので、彼がその後、どんなふうに脱皮したのか知りませんが・・・。いや、『グランド・ブダペストホテル』で見ていたのだった、そーいえば。でも、ほとんど記憶ないなぁ、、、。あの作品自体、あんまし残るものがなかったもんなー。ごめん、エイドリアン君。
何が別の作品で見てみますわ。

 


「ケン・ローチは社会派」と言われる所以はこういう作品があるからだね




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