






20世紀初頭のケンブリッジ大学で、モーリス・ホール(ジェイムズ・ウィルビー)は、クライヴ・ダーラム(ヒュー・グラント)と運命的に出会い、同性愛が犯罪となる時代に、恋愛関係になる。
しかし、その後、弁護士になったクライヴは、ケンブリッジの同級生が同性愛で逮捕されたことに衝撃を受けたのか、関係を終わらせることをモーリスに一方的に伝え、旅先のギリシャで知り合った女性と結婚してしまう。絶望のどん底に突き落とされるモーリス。
苦しむモーリスは、結婚したクライヴに招かれた別荘で、猟場番人アレック・スカダー(ルパート・グレイヴス)と思いがけず関係を持ち、スカダーの真っ直ぐな感情に心を動かされる。しかし、スカダーは、近々、家族とともにイギリスを離れ南米へ移住するという。それを聞いたモーリスは、スカダーを引き留めようとするのだが、、、。
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公開当時、話題になっていて気になっていたのに、何故か見に行かなかった。その後も見る機会がなく、DVDでも見られない状況になり、、、。このたび、『君の名前で僕を呼んで』の公開に併せての記念企画とのことで、4K版が劇場リバイバル公開となり、これは是非とも見に行かなくては! と思って、GW中に見に行った次第。
美しく、切ない映画でした。ちなみに、本作を見てから『君の名前で~』を見ると、どちらの作品もより楽しめると思われます。
◆罪な男、その名はクライヴ。
最初に、禁断の関係に踏み込もうとしたのはクライヴ。しかし、関係を強引に終わらせたのもクライヴ。クライヴによって目覚めさせられたモーリスにしてみれば、このクライヴの行動は、あまりにもむごい。
クライヴはモーリスより階級的には上流の家庭で、モーリスよりも自制を効かせざるを得ない人間だったんだろうなぁ、、、。
この一連のクライヴの言動を見ていて、『マイ・プライベート・アイダホ』のキアヌ演じるスコットを思い出していた。状況は異なるけれども、スコット(金持ちの息子)も、リバー・フェニックス演じるマイク(貧困家庭の息子)を目覚めさせておいて、あっさり見捨て、自分はしゃぁしゃぁとアッパーな世界へ戻っていく。クライヴにしても、スコットにしても、どちらも相手よりアッパーな世界にいる人間であることがポイント。
結局、アッパーな人間は、堕ちることが怖いのだ。そらそーでしょう。低いとこから飛び降りても怪我は軽いけど、高いところから飛び降りたらヘタすりゃ死にます。
原作者のフォースターは、生前、作品を発表することはせず、彼の死後1971年、ようやく出版されたとのこと。もちろん、同性愛を描いているからだが、恐らく、フォースター自身がゲイ(バイセクシャル)だったのだろうと思う。同性愛なんてのは、本当は人類の歴史と共にあるものなのにねぇ。
余談だけれど、歴史的に見て芸術家の間に男性同性愛は多いし、現代でもバレエ界ではプリンシパルになるような見目麗しく踊りも抜群な男性はほとんどゲイだと聞いたことがある。芸術家の男性同性愛は、男尊女卑的な思想背景があるとも言われ、それは一理あるかな、という気がする。今でこそその世界で活躍する才能豊かな女性は多いが、ほんの数十年前までは完全なる男社会で、女性は芸術に参加することすらなかったわけで、男の芸術家から見れば、女は何の価値も産み出さない取るに足らん存在に見えたのもむべなるかなという状況だったのではないか。そんな女たちに魅力を感じない男たちがいても不思議はない。そして、才能溢れる美しい男に惹かれるのは、むしろアタリマエなのではないか。
フォースターは、どうやって自分の気持ちに折り合いを付けて生きたのだろうか。折り合いを付けられなかったからこそ、原作を書いたのだろうか、、、。
◆同性愛=肉欲、か否か。
クライブとモーリスの悲劇的な結末は、2人の“恋愛とセックスの関係”に対する感覚の相違によって起きたのだと思う。
クライヴは頑なにモーリスとのセックスを拒む。もちろんモーリスを好きな気持ちに嘘はなかったのだと思うが、早い話が“恋に恋していた”だけなのではないか。しかも、禁忌である同性に惹かれるものであったから、なおのこと、彼のような苦労知らずのハイソなお坊ちゃんにとって、甘美なものに感じられたに違いない。“こんなイケナイことしているボクちゃん、素敵、、、”みたいな。
もし、クライヴとモーリスが一線を越えていたら、、、もしかすると違った展開になったのかも、とも思う。もっと早くに破綻していたかも知れないし、二人して堕ちるところまで堕ちたかも知れない。やはり、寝てみて初めて沸き起こる感情は必ずあるわけで、脳内で妄想しているだけでは超えられない壁だろう。そして、クライヴにとって、同性とのセックスとは、同性との恋愛ではなかったのだと思う。
ここで考えてしまうのが、同性愛イコール肉欲、か否かということ。クライヴにとっては、イコールではなかった。けれども、モーリスが、クライヴに振られた後にアレックとの関係に走ったのを見ると、どう考えても、アレックの人間性に惚れたからというより、セックス可能な相手であるから、という印象が否めないのである。容易には見つけられそうにない同性のセックス相手であること、その存在の稀少さ。それが、モーリスをアレックに走らせた原動力になっていたように見える。そしてそこが、クライヴがモーリスに感じた哀しさなのではないかと思うのだ。他の人を“愛した”のではなく、他の人との“快楽”に走った、、、とクライヴの目には映ったのではないか。
いずれにせよ、モーリスとアレックの将来が幸せなモノになるとは、想像しにくい。また、クライヴも決して魅力的とは言えない妻との生活が充たされたモノとは思えない。3人の今後に、どうしても悲観的になってしまう。
◆その他もろもろ
当初、モーリス役はジェイムズ・ウィルビーではなく、ジュリアン・サンズが演じる予定だったのだが、撮影直前になって、ジュリアン・サンズが辞退したのだとか。辞退した理由は分からないけど、ううむ、、、ジュリアン・サンズのモーリス、すごい見たかったかも。ヒュー・グラントとのラブシーンとか、それはそれは美しかっただろうなぁ、、、と妄想してしまう。
ジェイムズ・ウィルビーは、美青年というよりは、清潔感のあるカワイイ青年、という感じで、もちろん良いのだけれども、私の好みのタイプじゃないので、すんません。正真正銘の美青年であった、ジュリアン・サンズのモーリスが見たかった、、、。
ヒュー・グラントは、本当に美しい。どうして今、あんなんになっちゃったんだろう、、、なんて言ってもせんないことだが。特に、モーリスとプラトニックな関係を続けている間のクライヴはもの凄く美しい。でも、弁護士になって、だんだんモーリスとの関係を見直し始める頃から、髪型もオールバックになり、髭も生やし、どんどん美しくなくなっていく。こうやって、人間はどんどん俗悪化していくんだ、って見せつけられている気分だった。
ルパート・グレイヴスは、直情的で大胆なアレックをワイルドに演じていたと思う。いきなりベランダからモーリスに襲い掛かるのも驚いたけど、そのアレックを案外すんなり受け容れるモーリスにもちょっとビックリ。こういう展開だから、同性愛=肉欲、なんて図式が頭に浮かんじゃうんだよね。……あと、安宿でモーリスとコトが終わって服を着るシーンで、ダサい下着を身に着けていくところ、見入ってしまった。あんな、ステテコみたいなの着てるんだ! とか。
惜しむらくは、クライヴが結婚した女性がまるで魅力的ではなかったところ。ルックスもだけど、あまり品性や知性を感じられないところが残念。そもそも貴族でもないということだったし、、、。敢えてそういう設定にしたのかもしれないが、クライヴほどの青年が選ぶ女性としては、あまりにも不釣り合いな感じ。まあ、本作全体に、女性の描き方は杜撰だった感は否めないけれど。
美しい男たちが身に纏う衣裳も見物。やっぱり英国男子はスーツが似合う。長い首に小さな頭。ハイネックにネクタイが、イヤミなくらいにピッタリくる。しかし、このハイネックとネクタイが、上流階級の男たちを縛り付ける象徴的な描写でもあったように感じる。彼らはこれらを脱ぐことは出来ないのだ。
「イギリスは昔から人間の本性を否定してきた国」だそうです。
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きゃ♡待ってました!モーリス!私も劇場で観たいわ~。さぞや至福の陶酔の時間だったことと存じます。
同性愛=肉欲か否か、すねこすりさんの深い考察・洞察に、うんうん!そうそう!なるほど!なしでは拝読できませんでした。ちょっと禁断によろめいてみたかっただけのノンケと、とりあえずヤりたいゲイの、いいじゃないか~ダメよダメダメ(古っ)なお話なのですよね~。モーリスに、ノンケをコロがすほどの魅力がなかったのが残念。
当時のヒュー・グラントにときめいた人の中で、今の彼を想像できた人はいたでしょうか。ワタシ的に彼の代表作はこのモーリスと、わいせつ罪で逮捕された時の写真です。
アレックの夜這いシーンが好き!英国上流社会のファッションも素敵でしたね~。すねこすりさんの「君の名前で僕を呼んで」ご感想、ろくろ首で待ってます(^^♪
ようやく見ることができました、この映画!
基本的にBLは得意じゃないんですけど、美しい男子同士の美しいラブシーンは、やっぱ美しいですねぇ(ため息)。。
クライヴの奥さんもイマイチっぽいし、美青年3人、みんなシビアな人生が待ってそうですよねぇ。
とはいえ、クライヴの30年後の決して美しくない姿を知っている身としては、少々フクザツな気分でござります(^^;
DDLは初老でもシュッとしたイイ男のままなのに、何故にヒューさんは、、、? あ、逮捕写真見ました!絶句
君の名前〜、パンフ売り切れててショック! 今週中にパンフだけ買いに行く予定です!!