映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

バトル・オブ・ワルシャワ 名もなき英雄(2019年)

2020-08-15 | 【は】

作品情報⇒https://movie-tsutaya.tsite.jp/netdvd/dvd/goodsDetail.do?pT=0&titleID=4363172177

 

以下、amazonよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 1944年、ロンドン。ポーランド亡命政府のミコワイチク首相はナチスドイツの占領下にある祖国ポーランドにやがてソ連軍が侵攻してくると知り、英国のチャーチル首相にソ連軍と戦うよう協力を求めるが、ソ連と微妙な関係が続く連合国はそれを拒む。

 そこでミコワイチクは部下ヤン・ノヴァクに、ナチスドイツ相手に武装蜂起するよう、ポーランド国内軍に指示を送るための密使になるよう依頼。ヤン・ノヴァクは祖国に向かうが……。

=====ここまで。

 1944年ワルシャワ蜂起の前日譚。amazonの紹介文によれば、ポーランドでは、『キャプテン・マーベル』を抑えて本国興行収入1位だとか。 


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 少し前にTSUTAYAの新作メニューにあったので、見てみることに。最近、ほんの少しだけポーランドの歴史を知るようになって、目に付いたポーランド映画を見ているんだけど、本作も、ワルシャワ蜂起や第二次大戦前後のポーランド情勢を大まかにでも分かっていないとチンプンカンプンかも知れません。かく言う私も、辛うじて最後まで着いて行ったけれど、果たして私の理解で合っているのかどうか、、、。

 まぁ、とにかく、感想を思い付くまま書いてみます。


◆ワルシャワ蜂起

 邦題に、思いっきりB級チックなタイトルを付けられて、こりゃ監督は怒った方がイイね。いくら地球の反対側で分からんだろうったって、こりゃ~ヒドい。ヒドいのは邦題だけじゃないんだが、それはまあ後述するとして。

 副題の「名もなき英雄」ってのは、密使となったヤン・ノヴァク。彼はポーランドの将校だが、英語も流暢、ドイツ語は当然、おまけに言動もジェントルマンで、ルックスもなかなか(私の好みじゃないが)、ってことで、外交官かと見紛うほど。……ま、外交官がそういう何拍子も揃った人なのは、一昔前までのオハナシか、あるいは根も葉もない伝説かも知れませんが。私の友人の夫君は外交官で、、、(以下略)。

 それはさておき。ヤンは外交官じゃなくて軍人なんだが、ロンドンの亡命政府首相に「ナチスに対して蜂起しろ!!」と本国に伝えるように言われるが、ヤンは英国の援助がなければただの反乱で終わってしまうと危惧する。軍の最高司令官に首相の言を伝えると、最高司令官は、単独蜂起など論外!!とヤンと意見が一致。「空路、ワルシャワに入り、蜂起を止めろ! (蜂起を主導することになる)ブル将軍を首相の暴走から守れ!」と、ポーランド国軍に伝えるようヤンに指示する、というちょっと入り組んだ話。

 ヤンは、その存在をナチスに知られ、似顔絵をSSにばらまかれるお尋ね者となり、数々の検問を命懸けでくぐり抜けながら、2週間掛けてワルシャワに辿り着く。が、しかし、時既に遅く、ワルシャワは蜂起するしか道がない事態となっていて、連合軍の援助がなければ絶望的だと分かっていながら、ヤンは蜂起に身を投じていく、、、というところでジ・エンドとなる。

 何でヤンの存在がナチスに知られるかというと、ゲシュタポのスパイである美女とヤンが、ちょっとだけお近づきになるから。最初は、ただの下心しか持っていなかったヤンだが、偶然がいくつか重なったことで、美女がスパイと見破る。この辺りのスリリングなシーンも見物。

 ナチス占領下のポーランド各地が描かれるが、まぁ、とにかくこのときのポーランド人のドイツに対する恐怖心は、見ているこっちまで手に汗握るほど。皆、ドイツ兵を見るだけで手入れがなくても逃げ惑う。そんな状況で、あれだけ目立つ容姿端麗のヤンがどうにか逃げ果せただけでも奇蹟だろう。

 チャーチルといい、英国軍といい、ポーランドでの戦争のことを、遠い場所で起きているいざこざ程度のこととのたまう。これを聞かされるヤンの心中を思うと胸が痛い。絶望的な祖国の状況に、ヤンはワルシャワに向かう途中で「ソ連に10年は占領される」と懸念を示すのだけれど、蓋を開けてみれば10年どころじゃなかったという悲惨な現実が待っていると思うと、ヤンの必死さが見ていてただただ辛い。

 ワルシャワ蜂起の直前まで、蜂起を止めようと必死になった勢力があったことや、蜂起推進派の中にも結果を絶望視していた人たちが大勢居たことが分かる。ヤンがワルシャワに着いた後も、行き違いがあってブル将軍にすぐに会えないのだが、ようやく会えたブル将軍も、蜂起が潰されることは百も承知だったのだ。それでも起った、ということだが、これは多くのワルシャワ市民もそうだったのかも知れない、と思う。それでも、ナチスの支配に抵抗を見せたい。ヤンがブル将軍に「それでも起つべきだ」と言ったときのセリフが印象的。「そうしなければ、有史以来守ってきた我々の精神が破壊される」(正確じゃないです)。分割統治されていた時代よりなお悪い、ということだろう。


◆シナリオが素晴らしい。ワルシャワの街並みが美しい。

 本作の大半は、ヤンがロンドンからワルシャワまで命懸けで移動する様子を描いているのだが、一本調子な逃亡劇になることなく、一瞬たりとも飽きさせない構成は素晴らしい。

 ヤンのキャラが、ゼンゼン説明的なシーンがないのに、実によく描かれている。私生活はまったくのナゾなんだけど、見掛けによらず、自転車に乗れないだとか、落下傘訓練で着地に失敗して腕を骨折するとか、ロンドンの街中でアメリカ兵の運転する車に跳ねられるとか、結構トホホなところがいっぱい、、、。半面、ゲシュタポの美女スパイが英国軍のチャラ男に絡まれているところを毅然と救ったり、SSとの銃撃戦を華麗に切り抜けたりと、見せ場もいっぱい、、、。巧いなぁ~、とシナリオに感心してしまう。

 ワルシャワの街並みでは、聖十字架教会からコペルニクス像を臨む辺りが何度か出て来て、あ~、あそこ歩いたんだよぉ、、、もう一回行きたい゛ぃぃぃと思いながら見入ってしまった。ま、コペルニクス像の後ろにはハーケンクロイツの旗が掛かっていたけど。あの十字架を背負うキリスト像は、『戦場のピアニスト』でも象徴的に出てきて、やはり、あの場所はワルシャワのシンボルなのだろうなぁ。今度はいつ行けることになるのやら、、、。

 印象的だったのは、ヤンがロンドンからポーランドに空路降り立って、その飛行機が再び飛び立つときのシーン。どこか、野っ原みたいな所に飛行機が着陸すると、ヤン達がぞろぞろ降りて来て、今度はけが人などを乗せて離陸しようとするんだが、車輪がぬかるみにとられて動けなくなるのを、皆で飛行機を押して、どうにか離陸させる、、、。SSに気付かれて手入れされるまでのほんの1時間弱の間に離陸させてしまわなければならない、、、という緊迫感がゾッとなる。

 また、その後、パルチザンの一人の青年が射殺される(この成り行きがちょっとよく分からなかった)んだが、その青年の遺体をヤン達が母親の所まで送り届けるシーンも恐ろしい。SSたちに追いつかれ、結局は、青年の母親も射殺され、家には火がつけられる。屋根裏に隠れていたヤン達は命からがら逃げだすが、燃え盛る家の前に母親の遺体が転がり、隣人の男性が跪いて泣いている。それを、見捨てるように先を急がなければならないヤン達、、、。もう、ほとんど地獄絵図。

 こんな時代が、こんな光景が広がっていた時代が本当につい70年ちょっと前にあったのか、、、。何度も恐ろしい戦争映画を見てきたけれど、本作の描写は決して衝撃的な描き方はしておらず大人しい方だと思うが、それでも、呆然としてしまう。

 エンドクレジットの前に、「ヤン・ノヴァク・イェジォランスキに捧ぐ」と献辞が出る。ラストは、ヤンが蜂起集団の群れに消えて行くシーンだったけれど、その後、どうなったのだろうか。……と思って、ちょっと調べてみたところ、wikiに同名がヒットして、「クワトコフスキーと名乗っていたと推定される」という内容からして、多分ご本人だろう。本作内で、ヤンは軍関係者内ではクワトコフスキー中尉と呼ばれていたので。戦後も西側で活躍しているみたい、、、。


◆プロモーションが、、、酷すぎる。

 とにかく、本作は、ポーランドで『キャプテン・マーベル』(見てないしよく知らんけど)を超えるヒットだったというのも納得の、もの凄い力作です。お金も時間も相当掛かっているのがよく分かる。

 何より、英国人は英国人俳優が、ナチスはドイツ人俳優が、ポーランド人はポーランド人俳優が、それぞれの言語で演じているのが良いです。こういうところがちゃんとしている映画、少ないもんね。何でSSが英語ペラペラ喋ってんの、、、ってのばっか。まあ、商業映画はそうなっても仕方がないのは理解できるけど。

 だから、こういう素晴らしい映画を、何でこんなヘンテコなプロモーションして貶めるのか、訳が分からない。もちろん、日本に持って来てくれたのだから、それは感謝するけれども、折角お金かけて持って来てくれたのなら、プロモーションまで責任もってキッチリしていただきたいなぁ。そんなにムリな願いでもないと思うのだが、、、。

 だって、見てよ、本作のこのジャケット。

 この銃構えてる男誰?? ヤンとは似ても似つかぬナゾ人物。さらにナゾなのは、隣の女性。これ、ゲシュタポのスパイの美女ではありません。スパイの美女はブロンドの、いかにもアーリア系。何なん、この人、、、、??? しかも、こんな感じのシーンはどこにもなかったし。大体、雰囲気が全く違うんですけど。

 ……まぁ、プロモーションというほどのものでもないんだろうけどさ。日本では“マイナー作品”扱いだしね。そら、ポーランド制作のワルシャワ蜂起の映画なんて、日本じゃ馴染みがないもんね。私も、ポーランド好きになってなかったら、視界にも入っていなかっただろうし。

 で、本作らしいジャケットはこちら。

 この男性が、ヤンを演じたフィリップ・トロキンスキー。女性が、美人スパイ・ドロシーを演じたジュリー・エンゲルブレヒト。ドイツ人ですね。英語もキレイな発音で話していました。

 この画像よりもフィリップくんはキレイです。ネットで画像を探してみたので貼っておきます(クドいけど、私の好みじゃありません)。

 

 

 監督はヴワディスワフ・パシコフスキで、脚本も書いている。この人は、あの『カティンの森』の脚本を書いているんだが、『ワルシャワ、二つの顔を持つ男』の脚本も書いていると知って、納得。『二つの顔~』も、実に面白く、確かにちょっと本作と作風が似ている。歴史ものが巧い人なんだねぇ。今後が楽しみだ。

 

 

 

 

 

ワルシャワ蜂起は、1944年8月1日、午後5時発生。

 

 




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