映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ショパン・コンクール・ライヴ 2005/ラファウ・ブレハッチII(2006年)

2014-06-09 | 番外編

★★★★★★★★★★

 これは、映画ではないのですが、あまりに素晴らしいソフトなので是非、感想文を残しておきたいと思い、番外編として記します。

 昨年、中古で購入したドイツグラモフォンの『111: The Collector's Edition 2』の7枚目のCDとして入っていたのが、ショパンのピアノ協奏曲1番と2番で、ジャケの写真には少年のような青年のような大人の男のような年齢不詳の、しかしなかなか見目の良い男性が微笑を湛えており、名前はRafal Blechaczと。何て読むの? と、まあ、私は彼のことをとにかくなーんにも知らずに聴いてみたわけです。

 冒頭の長々しいオケに続いてピアノが入り、ほんの数十秒で、私は、まさしく「なに、これ・・・!?」状態。もちろん良い意味で。思わず手を止め、スピーカーに正対し、聞き入ってしまいました。CDの演奏でこんなふうに魅入られることは、本当に、100回に1回あるかないかなわけでして、ライブで聴いたって滅多にない現象なのであります。それが、起きました、つい先日、自分の部屋で。

 なるほど、彼は2005年のショパンコンクールの覇者であり、副賞も総なめの、まさしく完全勝利を収めた若き天才であると知りました。私は、正直、あまりショパンコンクールの優勝者に好きなピアニストがおりませんで(ポリーニだけ、と言っても良いです)、ショパンコンクールのニュースを見ても右から左だったものですから、こんな素晴らしい宝を見逃していたのでありました。

 なんだかんだ言っても、その前の2000年の覇者ユンディ・リ、2010年の覇者ユリアンナ・アヴデーエワはチェックしていたのに、どーして2005年だけスルーしたのでしょうか、私!!

 で、慌てて、彼のCDを漁りまして、ついでにショパンコンクールの映像も見てみたいと思い、この作品を購入したわけです。

 うぅ、なんという端正な、それでいて情緒豊かな、それでいて品のある演奏、かつ弾きっぷりなのでしょうか。これ、彼は当時、二十歳ですよ? 信じられません。何をどのように学び、いえ、どのように生きてくると、このようなピアニストになるのでしょうか。

 中庸だという評価がちらほらありますが、どーしてそう聞こえるのか、不思議です。演奏がノーマルだということなんですかねぇ。もう、最初の1音目からして、抜群にしか聞こえませんが。演奏スタイルも、オーバーアクションがまるでなく、その大きな手は、鍵盤を這うように、それでいてヌルい撫でるような動きではなく、実にしなやかです。ポリーニのように上から叩くスタイルとは対照的で、音質は同じように硬質ですが、全く表情は異なります。ああ、なんて美しいのでしょうか。端正さでは類を見ないルプーにも勝る、ポリーニの全盛期でさえ霞んでしまいそうです。

 演奏も、テンポはかなり揺れていると思いますが、それが全く嫌らしくないというのは、小手先の聴かせに走った、つまり聴衆に媚びた表面的な演奏ではないからではないでしょうか。もちろん、伴奏のオケも素晴らしいのは言うまでもありませんが。もう、一音一音が見事に粒立ち、まるで目に見えるようです。それでいて、流麗なところは流麗に、鋭角なところは鋭角に、解釈が深く、老成された感さえ窺えます。なんなんでしょう、この人は。

 同じポーランド出身のツィマーマンなど、この人の前では正直お話になりません(あくまで私にとってですが)。こういう内省的なアーティストは好きですね。自分と向き合い、ひたすら音楽と作曲者と向き合うことの厳しさは、想像に難くありません。それを、この若きピアニストは既に成し得ているのです。誰に教わったのでもなく、自らが探求したというのですから、もうひれ伏すしかありません。10年近く、このようなアーティストを知らずにいた自分がまったくもって情けない限りです。

 既に、古典派、ドビュッシー、リストなどをリリースしていますが、彼には是非、ショパン弾きなどという有り難くないネーミングを自ら脱ぎ去り、さらにドビュッシー、ベートーベンから、是非とも、ブラームスのコンチェルトに手を出していただきたいですね。彼の弾くブラームス、どんななんでしょう。想像もつきません。今からその日が来るのが楽しみです。

 この出会いに感謝!

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