映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年)

2017-07-22 | 【ゆ】




以下、公式サイトよりストーリーのコピペです(青字は筆者が加筆)。

=====ここから。

 銭湯「幸の湯」を営む幸野家。しかし、父・一浩(オダギリジョー)が1年前にふらっと 出奔し銭湯は休業状態。母・双葉(宮沢りえ)は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘・安澄(杉咲花)を育てていた。

 そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。

 ○家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる ○気が優しすぎる娘を独り立ちさせる ○娘をある人に会わせる

 その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛を込めて母を葬ることを決意する。
 
=====ここまで。

 ラスト、ホントに湯を沸かしちゃうんだから、これはホラーだ、、、と思った。

   
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 久々に乗った飛行機での鑑賞。ずいぶん話題になっていたけれど、どうもお金を出してまで見る気になれなかったので、良い機会だと思って見てみることに、、、。

 本作を好きな方は、ここから先はお読みにならない方が良いと思われますので、あしからず。

 本作は感動する映画だそうですが、私は、残念ながら1ミリも感動できませんでした。なぜ感動できなかったか、見ていて自分でも冷静に分かりましたので、それをこれから書きます。


◆理由その①:主人公の双葉、キライだわぁ、、、

 まぁ、これが最大の理由ですね。何でキライか? はい、答えは簡単です。

 “自分が絶対正しい人”だからです。

 ありがちに、中学生の娘・安澄は学校でイジメに遭っている。絵の具を頭から全身にかけられたり、制服を隠されたり、、、。これに対する双葉の言動が、ちょっと信じられん。

 安澄が制服を隠されて、遂には「学校に行きたくない!!」と布団に潜り込んで出てこない。ま、当然の反応でしょう。しかし、ここで双葉ママはやっちまいます。布団を強引に引っぺがし、「ここで行かなかったら、ダメになる!」(セリフ正確じゃありません)みたいなことを言って、安澄を強引に学校に行かせるのね。これ、いじめの被害者に対する、保護者としてサイアクの対処法なんですけど、、、?

 他にも、出奔して若い女と同棲している夫を迎えに行った双葉は、玄関先に出て来た夫を、お玉で殴り付け出血を伴う怪我をさせる。安澄の実の母親(双葉は育ての母親と後に明かされる。夫と最初の妻の娘が安澄)に会いに行って、いきなり平手打ちを喰らわせる。……などと、いくら余命2か月だからって、あなた、やって良いことと悪いことあんでしょーよ、と思っちゃう私は、平々凡々な常識人なのよね。

 まあ、難病モノにありがちな陳腐さにハマらない様に工夫したんでしょうけど、結果的に、難病モノの罠に、本作のシナリオもハマってるとしか思えない。

 つまり、それまでは現実に黙って耐える(というより、現実に流される)母親だったのが、余命わずか“だから”、このような自分の思うところの“正しさ”を振りかざして暴走する母親になりました、ってことでしょ? 迫り来る死を理由に主人公を自己中キャラに変化させちゃうってのは、結局のところ、陳腐な難病モノと同じ穴の狢だと思うんですけどねぇ、、、。

 黒澤明の『生きる』も、私は嫌いだけど、あれと同じよね。あの主人公は、それまでの自分のなァなァな生き方を悔いて、突然、前向きで積極的な人間になるんだけど、本作も構造は一緒。

 死を目前にして、自ら悔いのない様に、、、というのは結構ですが、それは、飽くまで自分のことだけにしてほしい。せいぜい巻き込んでも許されるのは、夫だけじゃないかなぁ。娘や、夫の元妻まで巻き込むのは違う気がする。それでなくても、入院後は家族は否応なく巻き込まれるのだから。

 私、もうすぐ死ぬんだから!! ってのを免罪符に自分の信じる道を猪突猛進するのは、ただのエゴです。余命2か月の人のエゴくらい、寛大になってあげなさいよ、と言われるかも知れないけど、現実ではそうだとしても、映画だからこそ、そんなありきたりな理屈に陥らないでほしいです。
 

◆理由その②:シナリオがスカしてる、、、
 
 監督がシナリオも手掛けている本作ですが、、、。どうもこのシナリオが私は好きになれない。

 例えば、、、。

 保健室で髪の毛から制服まで絵の具まみれになって座っている安澄に、なんと双葉は「何色が好き?」と笑顔で言います。……はい、これは映画ですから、捻っているのは分かります。ここで「どーしたの、安澄!!」なんていうリアクションをする母親はフツーすぎてお話にならないのは、よっっっく分かります。でもですね、イジメと打ち明けられずに打ちひしがれている娘にニッコリ笑顔で「何色が好き?」って、、、。う~~ん、、、。

 制服を隠された安澄は、母親に言われて体操着を着て学校に行くんだけど、何と、クラスメイト衆目の中、彼女は突然、体操着を脱ぎだし、ブラとパンツだけになるのです。そして「私の制服返してください……」と言った後に、家を出るとき母親に飲まされた牛乳をゲボッと吐く、、、。……は?? あの年頃の女の子が、男子もいる前で服脱ぐと思います?? いくらフィクションだからって、ちょっとやり過ぎ。現実なら、あれはイジメを助長することはあっても、沈静化することにはつながらない。でも本作では、それを機に、制服が返されるという、極めて甘い展開。白けます。

 鮎子という、安澄とは母親違いの妹がいて(ったく、オダジョー演じる夫は生活力ゼロの種蒔き男)、この鮎子の母親が失踪し、幸野家で引き取ることになるんだけど、そのときの鮎子のセリフが、極めて大人びた長ゼリフで、ドン引きです。あんなこと、小学生が言うわけないだろう。詳細なセリフは忘れたけど「ここで暮らさせてください、、、、云々」と、敬語を正しく交ぜた、それこそお涙ちょうだいな演説です。これもまた、白けます。

 双葉と、安澄と鮎子の3人で箱根に車で旅行するんだけど、途中で、バッグパッカーの若者・拓海(松坂桃李)と出会って、双葉が、アマチャン拓海の根性を叩き直すという展開になる。まあ、それはイイとして、双葉と拓海の別れ際、駐車場で双葉は拓海を思いっきりハグするのね。、、、あのねぇ、知り合って間もない男をいきなりハグするオバハン、おかしくないか? ここは日本だぞ。

 ……と他にも書いたらイロイロあるんだけど、長くなるので割愛。

 構成的にも、なんとなくあざとさを感じる。例えば、安澄が制服を隠される場合。唐突に、オダジョー演ずる夫が、双葉に「なあ、新しい制服買ってやる?」というシーンが挟まれる。見ている方は「は?何のこと?」となる。それが、実は、制服が隠されたことによるセリフと分かるのは、結構後になってから。こういう、見る者を置いてけぼりにする構成が何か所かあった。これも、ひねりを効かせたつもりなんだろうけど、いささか独り善がりなシナリオという感じを受ける。

 何より、サイアクだなぁ、と思ったのは、安澄と鮎子に向かって、拓海に「君たちのお母さん、スゴイ人だ」「あんなスゴイ人から生まれたなんて、君たち幸せだね」(セリフ正確じゃないです)と、セリフで言わせちゃっているところ。このセリフこそ、監督が一番描きたかった本作のキモであり、その肝心なことをセリフで言わせてどーするよ。それこそ、見終わった観客に余韻として感じさせなくてはならない重要なテーマでしょ。

 そんなこんなで、このシナリオはスカしている。一見、良さそうに見せているけど、クリエイターとしては実に志が低いと思ってしまった。


◆理由その③:ラストがグロすぎる、、、

 ハッキリ描かれているわけじゃないけど、どうやら、双葉の亡骸を、「幸の湯」の釜でもって焼いた様なのです。そして、それで湧かした湯に、一同が揃いも揃って穏やかな表情で入っているシーンで終わるわけ。

 これ、どーなのよ。感動するシーン?? まさか。

 そんなところで、大切な人の亡骸を燃やすか? 大体、匂いがヒドイでしょうよ。映画だからって、リアリティをここまで踏みにじって良いとは思えないし、何より、私だったら、そんな湯に浸かって大切な故人の思い出に浸ることなど、到底出来ないわ。

 こういう発想が、ちょっとイヤだ。何というか、面白い映画を描きたい、という思いだけで、人間の尊厳を冒涜する描写を平気でやっちゃってる感じ。だから、やっぱり、志が低いと感じてしまう。


◆その他もろもろ

 ……以上、こき下ろしてきましたが、こき下ろしついでに、もうちょっと。

 宮沢りえさんは、私はあまり上手いと思えなかった。『紙の月』の方がまだ良かった。彼女の演技は、どうもこう、、、痛々しい。頑張っているのがこちらに伝わってきてしまう。だから、見ていて辛くなってくる。

 あと、1年も休業していた銭湯が、再開した途端、お客さんが一杯来るってのも、ちょっとなぁ、、、。そんなに世の中甘くないと思うゾ。

 まあ、つまるところ、この中野量太氏という方の感性は、私には到底受け容れ難い、合わないものなんだ、ということでしょう。合わない映画って、やっぱりあるのです。残念。


 






花に埋もれて銭湯の床に眠るりえさんは美しかった。




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2 コメント

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サンタフェ (松たけ子)
2017-07-24 01:13:39
すねこすりさん、こんばんは!
遅ればせながら、お帰りなさい!ワルシャワやコペンハーゲンに比べたら、日本はさぞや地獄猛暑と存じます。
この映画…お金払っては観られない系ですね~。宮沢りえが大女優扱いに、すごく違和感を覚える私は、世間とやっぱズレてるのでしょうか。オダギリジョー、最近すっかりお見かけしなくなったけど、映画にはチョコチョコ出てるのでしょうか。オダギリジョー、ワタシ的には、CMの人って感じ。そのCMも今は消滅してますけど…菅田将暉くんが第二のオダジョー化しそう?
それと、杉咲花ちゃんが何か苦手…声と口調がちょっと…広島の映画館で映画観ると、必ず花ちゃんが声優出演してる中国ガスの長~いアニメCMがガンガン流れてウンザリさせられるのですが、そのせいもあって花ちゃんアレルギー気味。同じく今ガンガン宣伝してるメアリと魔女なんとかも、アレルギー悪化を助長してます。
この映画より、銭湯に行きたい♪
邦画だと、井浦新&瑛太主演の「光」が早く観たいです♪
あれから脱がなくなっちゃいましたね。 (すねこすり)
2017-07-24 21:34:47
たけ子さん、こんばんは〜☆
旅ロスで腑抜けなところに、今朝からひどい腰痛で、もうダメ〜〜
さてさて、オダジョー氏、顔の造作は良いはずなのに、なぜか汚なく見えるのは私だけ? あのロンゲとヒゲのせいだと思うんですが…。
りえさん、瀕死でベッドに横たわっているシーンがあるんですが、あまりにリアルで引きました。痩せ過ぎなのは前からだけど、あれは…×××。まだまだ女盛りなんだから、ふっくらして色気のある女優さんになってほしいわ〜、と思いました。
瑛太氏の光、面白そうですね。どっちかというと原作に興味引かれるところですが。今、彼の主演しているドラマ、内容はなんだかなぁ、なんですけど、舞台になっている赤塚が縁のある場所なので、つい見てしまっています。なんか、瑛太氏、太ったんじゃないですかね?

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