映画 ご(誤)鑑賞日記

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罪と女王(2019年)

2021-02-03 | 【つ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv70707/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 児童保護を専門とするデンマークの弁護士アンネ(トリーヌ・ディルホム)。優しい医者の夫と幼い双子の娘たちと完璧な家庭を築いていた彼女だったが、ある日、夫と前妻との息子である17歳の少年グスタフ(グスタフ・リン)が問題を起こし退学になってしまう。

 アンネはスウェーデンにいたグスタフを引き取り、アンネの家族たちと同居を始めるが、グスタフは衝動的な暴力性があり家族に馴染もうとしなかった。しかし、アンネは根気よく彼を家族として迎え、正しい方向へ導こうと努めるのだった。

 そんななか、グスタフと少しずつ距離を縮めていくアンネだったが、親密さが行き過ぎてしまい、ある時、アンネは彼と性的関係を持ってしまう。

 やがて、そのことが大切な家庭とキャリアを脅かし始め、アンネは残酷な決断を選択するのだが……。

=====ここまで。

 ううむ、、、このあらすじはちょっと違う気がするぞ……。


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 昨年の公開時に、見に行こうかどうしようか迷っているうちに終映してしまっていました。迷う映画は、その後DVD等で見てみると、行かなくても良かったナ、、、と感じることが多いけれど、本作も、まあそうかな。真面目に作られた映画だとは思うんだけど、鑑賞後感が悪すぎる、、、、ごーん。


◆グレーじゃない、真っ黒です。

 前回の『哀しみのトリスターナ』で、「男だと愛になり、女だと好色になる、、、これいかに。」と書いたが、本作の公式HPにあった監督メイ・エル・トーキーのインタビューを読むと、こんなことが書いてあった。

 “ 私たちは、父が義理の娘とセックスするということが間違っていることを明確に知っていますが、母と義理の息子の場合、それはグレーゾーンになります。 何が間違っているのか、何が正しいのか定義するのが難しくなります。”

 え゛~~~っ??と思ったのはわたしだけ? グレーゾーンになるか? ならんだろ~~~!! 立派な性的虐待やん? 定義が難しくなるって、何の定義? 意味が分からん。

 百歩譲って、この監督さんの言いたいことを推測すると、女性→男性の虐待は、虐待と認識しにくいということなんだろう、多分。しかしそれは、ぶっちゃけて言えば、男女の身体の構造が違うからでしょ。男は挿入“する”、女は挿入“される”。挿入“する”に当たっては、男の性器が挿入可能な状態になっていなければならないので、そこに、男性の側の“能動性”が認められると。

 ううむ。男の身体の仕組みを無視しすぎなのでは。刺激を与えれば反応するだけなんだから、能動性とは関係ないでしょ。大昔に何かの本か雑誌で男性執筆者が「それ(したくなくても刺激を受けると反応してしまうこと)が男の哀しいところ」って書いていたけど、……ま、そういうことでしょ。レイプされた女性に「濡れてたんじゃないの?」なんて捜査機関が聞いたら、今は立派な二次被害になり得るし下手すりゃ訴えられるけど、それと同じだよね。

 本作の場合でも、アンネはものすご~~~くダイレクトにグスタフを犯すんだけど(口淫ってやつですね)、この描写があまりにもあけっぴろげで、凄まじいえげつなさ。ネットでは本作のことを“エロ”だと書いている人もいるが、まったくエロとは対極にある性描写であると私は感じた。監督のインタビューを読むと納得の答えが、、、。

 “男性が被害者である場合、性的虐待をより寛容に見る傾向があるため、観客が感じる不快感を作り出すために明示的なセックスが必要でした。(中略)セックスシーンも、例えば会話のシーンと同じように、観客に何か新しいことを伝え、洞察を与える場合にのみ、映画に含めるべきだと思います。 それ以外の場合は、ストーリーを進めることもなく、理解を深めることもなく、その力を失い、ただ冗長になります。”

 「より寛容に見る傾向がある」ってのは??だけど、おおむね同感。実際、本作での性描写はいくつかあるが、どれも、必要と思えるシーンだった。ただの観客サービスではない。だから、エロなんてまるで感じなかったわ。これで官能を感じるなんて、むしろスゴい、、、。

 本作の場合、やっぱりアンネとグスタフがどうしてそのような関係になったか、、、を描くには、あのえげつないシーンが不可欠だった、、、、ということだろう。


◆逆ギレで自己防衛。

 とにかく、本作の後半は、アンネの自己保身からくるグスタフへの仕打ちが酷すぎて、憤りを通り越えて、見ているのが苦しかった。

 ただ、グスタフからアンネとのことを聞かされた夫に対するアンネの逆ギレぶりは、想像どおりだった。

 というのも彼女は序盤で、夫にも、職場のパートナーにも「反論ばかりせずに、一度で良いから、オレの言っていることに同意してくれ」と同じことを言われている。弁護士という職業柄、口八丁なのは仕方ないかも知らんが、とにかく彼女は意に反することに対して絶対に譲歩しない。マシンガントークでたたみかけて相手をねじ伏せる。見ていて不愉快になるほど。あれは、グスタフとの情事がバレたときのアンネの言動に対する伏線だったんだろう。

 小心者で常識的な人間の私には、彼女がグスタフに手を出したことは理解できないが、あの過剰自己防衛は、ちょっと分かる気がする。人間、本当に追い込まれて自己保身しなければならなくなったら、ああなるだろうな、、、と。幸い、私には今までそこまで切羽詰まった出来事がなかっただけで、もし、全てを失うようなことが起きた場合、ありとあらゆる手段を駆使しようとするだろう。たとえ、それがバレバレだったとしても。

~~以下、結末に触れています。~~

 まあ、そんな事態を招くのはイヤだし、切り抜ける能力もないから、暴走はなかなか出来ない人間なのだが。アンネは、逆ギレして不信感の芽生えた夫の心をねじ伏せ、とりあえず切り抜ける。

 夫をけしかけてグスタフを家から追い出し、その後、グスタフは行方不明となり、スウェーデンの山小屋で遺体となって発見される、、、という最悪な展開になる。そうなって初めて、夫は、グスタフが本当のことを言っていたのだと確信する。

 ラストは、グスタフの葬儀に向かう一家4人の画で終わるが、どうにも寒々しい。アンネが守ろうとしたものは、守れなかったということだろう。たとえ、家族離散にならなかったとしても、冷え冷えとした家庭になるのは目に見えている。グスタフに懐いていた自身の娘たちも、長じて真相を察するだろうし、結果的に、彼女はゆっくりじっくり罰せられるということだ。

 まあ、自業自得です。


◆不満とか、もろもろ。

 で、冒頭のあらすじだが、「親密さが行き過ぎてしまい、ある時、アンネは彼と性的関係を持ってしまう」とあるけど、これは違うと思う。大体、「持ってしまう」だなんて、何だか不本意ながら、、、みたいに聞こえるけど、とんでもない。アンネは自ら強烈に望んでグスタフを犯したのだ。持ってしまう、じゃなく、持った、とすべき。「親密さが行き過ぎてしまい」ってのも、違う。アンネが性的な目でグスタフを見始めて、勝手にグスタフとの距離をずんずん詰めていっただけ。グスタフは犯されるまでほぼニュートラルだったんだから。多分、ほとんどアンネのことを女性として認識していなかっただろう。

 きっかけになったのは、グスタフが女友達を連れてきて、夜中にセックスしている声がアンネの居る部屋まで聞こえてきたこと。その後、アンネは自分の裸体を鏡に映して眺める。さらには、やたら夫に積極的にセックスを求めたり、行為の真っ最中に夫に2度もビンタしたり、、、そこで留まっていりゃ良かったのになぁ。

 そのアンネを演じたのはトリーヌ・ディルホム。アンネは、多分、40代くらいの設定だろうが、もう少し老けて見えるかなぁ。この方、『リンドグレーン』(2018)では女神のような女性を演じていたんだけれど、同じ女優さんとは到底思えない圧倒的な演技で、ただただ呆然、、、。

 グスタフを演じたのは、グスタフ・リンという同名の青年。美青年ではないけど、ちょっと問題を抱えて、でも本質的には優しい良い子、というキャラに合った風貌。難しい役どころなのに、すごく巧かったと思う。

 まあ、これはどーでも良い感想だけど、私は、グスタフが死んでしまう展開は好きじゃない。監督が言うように、“グレーゾーン”の是非を問うのなら、やっぱりグスタフとアンネがキスしているところを目撃した、アンネの実妹を活かし、彼女に証言させて、アンネをきちんと断罪して欲しかった。そして、グスタフは救われて欲しかった。未来ある若者なんだから。どう考えたって、この一件で裁かれるべきはアンネでしょう。この後、アンネの家庭が実質的に崩壊するかも知れないとしても、それじゃぁ、彼女の犯した罪には見合わない。

 ……という不満と、鑑賞後感の悪さゆえ、の数は少なめです。

 

 

 

 

 

 

 

アンネの自宅が素敵、、、。

 

 

 


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