映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

星の子(2020年)

2021-05-03 | 【ほ】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv70187/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 ちひろ(芦田愛菜)の父(永瀬正敏)と母(原田知世)は娘にたくさんの愛情を注いで育てていたが、病弱だった幼少期のちひろを治した怪しい宗教を深く信仰していた。

 中学三年生になったちひろは、新任のイケメン先生に一目惚れする。しかし、夜の公園で奇妙な儀式をする両親の姿を先生に見られてしまう。そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起こり……。

=====ここまで。

 今村夏子の同名小説が原作。

 

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 今村夏子の小説は、何と言っても『こちらあみ子』が衝撃的でした。芥川賞を獲った『むらさきのスカートの女』より、あみ子の方が断然好きだけど、むらさき~も、まあ今村カラーがかなり出ていましたね。

 余談だけど、あみ子って、以前NHKでドラマ化していませんでしたかね? なんか、少女が玄関先で土を盛ってお墓を作るシーンをビジュアルで見たような記憶がぼんやりあるんだけど、、、検索してもそれらしいものはヒットせず、、、。夢かな。というか、あみ子を読んだときに、映像で見た記憶があった、、、と言った方が正確なのかな。どちらが先か、もはや自分でも分からない、、、。

 それはともかく。本作の原作は未読で、映画になったことも知ってはいたけど、コロナ禍で劇場へ足を向けるまでの引力はなく、、、。最近DVD化されたのでこのほどレンタルして見てみました。見た後、これは原作を読んでからでないと感想が書きにくいかなぁ、、、と思い(理由は後述)、図書館で予約したらすぐに借りられて、昨日読了しました。……ので、原作の描写を考えつつ、映画の感想を書きます。


◆“ちひろ”という少女

 見終わった直後の感想は、うぅむ、、、という感じだった。というのも、親がヘンな宗教にハマって、子がマトモが故に葛藤する、、、って、題材としては珍しくない。宗教を、アル中とか家庭内暴力とかいろんなモノに置き換えれば、家族の葛藤話に集約されるわけで、、、。

 でも、終盤から何やら不穏さが漂い始め、ラストは不穏なまま終わったのだ。……と私は受け止めたのだが、ネットの感想を拾い読みすると、どうもほのぼの系の良いお話として終わったと見ている人が割と多くて驚いた。

 また、登場人物のキャラとか、俳優たちの演技とか、ところどころのセリフとかは良かったから、原作を読んでちょっといろいろ確認したい、と思った次第。

 で、本作はかなり原作どおりに作られていると分かった。特に大きな設定の変更もないし、ストーリーもほぼママ。ちなみに、原作は、あみ子やむらさきの~ほどあからさまではないが、やっぱりちょっとズレている人を独特のタッチで描いている小説だった。でもまあ正直なところ、面白さでは、あみ子に軍配かな、私的には。

 原作を読んでいて困ったのは、どうしても、作中のちひろが芦田愛菜ちゃんになってしまい、それを払拭するのに時間がかかった。後半でようやく小説の中だけのちひろになってくれたけれど、、、。

 これ書いちゃうと、身も蓋もないんだが、私が監督だったら、ちひろに芦田愛菜ちゃんをキャスティングしなかっただろうと思う。

 この話は“ちひろのキャラ”が全てと言ってもよいくらい重要な訳で、愛菜ちゃんが役者として良くないという意味では全くなく、原作のちひろとはかなりキャラに乖離があると感じた。本作のちひろは、マイペースながら分別のある少女になっているが、原作から受けるちひろの印象はちょっと違う。あみ子同様、あみ子ほどじゃないが、やはりズレているのだ、原作のちひろは。しかし、愛菜ちゃん自身の持つ雰囲気が、そもそもズレていないし、ズレを演じてもいない。

 原作に出てくるセリフを映画でもちひろは言っているし、ほぼ原作どおりのシーンがほとんどだが、やはり原作から受ける印象と、映画のそれはかなり違う。

 この話は、基本“ヤバい”話なんである。で、主人公のちひろは、あえてそのヤバい環境に自発的に身を置いているのだが、ちひろがどれくらいヤバさを理解しているかが明確でないところがキモなんじゃないか。映画では、そのちひろの心情が、家族を思う“純粋さ・無邪気さ”に回収されてしまっていて、“けなげ”な少女の物語になっている。

 つまり、監督は、ちひろがズレている子だとは感じなかったんだろうな、原作を読んで。それならば、マトモなちひろを愛菜ちゃんが演じることになるのも道理というもの。

 原作と映画は別物だから、原作に忠実である必要はないけれど、まあだから、冒頭書いたように、割とよくあるテーマの映画だな、、、と感じたのであった。


◆ラストシーンとか、岡田将生とか、、、。

 ただ、映画の終盤に不穏さを感じて、原作が今村夏子の小説だった!と改めて思い出したのよね。ストレートな家族の葛藤話を今村さんが書くかな、、、?という気がして。そこを、原作を読んで確認したくなった。

 終盤からラストのシーンはほとんど原作と同じだったけれど、原作の方がもっと不穏だった。私は、映画の終盤からも、この親子の関係性が崩れる予感を見て取ったのだが、原作の方はもっとそれを感じさせる。だから、原作を読み終えた直後は、映画の終盤から受けた印象は間違っていなかったんだ、と思って本を閉じた。

 けれども、やはり、原作の方も映画と同じで、この不穏そのものにしか思えないラストを「救いのある終わり方で良かった」と感想を書いている人が少なからずいるのだ。

 文庫本の巻末には、著者と小川洋子氏の対談が載っていたので興味深く読んだが、今村さんが最初に書いたラストは「あまりにも悪意が見えすぎている」と編集者に言われたのだとか。どんなラストかも書かれていたが、ここにはもちろん書きません。が、私は、最初のラストの方が好きかも。確かに、悪意があるし、解釈の幅が狭くなるかもしれないけれど。

 でも、「この小説では「この家族は壊れてなんかいないんだ」ということを書きたかったので……(以下略)」とも語っていて、これはちょっと意外だった。対談相手の小川さんもそれに対して「この両親には、娘に対して何ら悪意はない……(中略)でも、悪意のない家族だとしても、平和ではないということが残酷です」と言っており、まさにその通りだと感じた。小川さんも、不穏さを感じたと言っており、やはり解釈が分かれる原作なのだなぁ。

 本作のラストシーンも、色々と解釈ができる余韻があり、私はもともと不穏なのが好きなんで、不穏さを読み取ったクチだが、この終盤からラストがあったおかげで印象的な作品になったと思う。

 あと、忘れてならないのが、南先生を演じていた岡田将生ね。彼は、性格の悪い役を演じるのが実に巧い。あんなキレイな顔してイヤらしいってのがイイ。自分が不審者呼ばわりした男女がちひろの両親だったことが分かった時や、ちひろの描いている似顔絵が自分のではなくエドワード・ファーロングのだと指摘された時の一瞬の「マズい……」という表情が絶妙。どうでもいいけど、エドワード・ファーロングの現在と岡田将生じゃ、似ても似つかない、、、(唖然)。
 
 ラストの展開と、岡田将生の演技に1個献上いたします。

 

 

 

 

 

 

 


ちひろの親友“なべちゃん”がステキだ、、、。


 

 


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2 コメント

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GWですが・・・。 (フキン)
2021-05-04 15:10:16
すねこすりさん🎵
GWはいかがおすごしですか~??

「星の子」ってこういう内容だったんですね。
芦田愛菜ちゃん嫌いじゃないけど、何となく全く興味が持てずスルーしてました。
(普通の家族ものだと思ってたので)

私は「むらさきのスカートの女」は受賞後すぐに読んだんです。
あまり好みではなかったのですが、こちらのレビュー拝見し「こちらあみ子」ってのに興味持ちました。
読むかもしれません。(^.^)

それにしても、岡田くんはなかなかいいポジションを体得してるように思います。
普通の顔した嫌なやつより、綺麗な顔した嫌な奴ってのがイイです(^^♪

GW終わったら「水を抱く女」観たいんですがいけるかなあ・・・。すねこすりさんはご覧になりますか?
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禁週 (すねこすり)
2021-05-04 22:11:45
フキンさん、こんばんは☆
どこがゴールデンやねん、、、という感じの休みですね。
観光地はどこも人人人、、、ホントに緊急事態なん??
来週は、日本もインドみたいになるんじゃないかと予想しております。
感染したらメンドクサイので、ほぼ引きこもりです^^;
1日だけちょろっと映画を見に行きましたが、すぐ帰ってきました。
もし犯罪者の疑いをかけられて、「映画見に行ってました!」と言っても、映画館にいた人々は誰も私のこと覚えていなくてアリバイ証明できないんじゃないか、ってくらい、ソソっと行って、ソソっと帰ってきました。
フキンさんも、むらさきの~読まれたんですね。
正直言って、私は、今村さんの作品でデビュー作の「こちらあみ子」を超える作品は今んとこないですね。
全部読んだわけじゃないので、あくまでも読んだ範囲で、ですが。
むらさきの~も、今村カラーでしたけど、パンチは弱いし、何よりあんまし面白くない^^;
あみ子は、面白かったです。フキンさんの感想、お聞きしたいわ~♪
岡マ、これから良い俳優さんになるでしょうね。海外でも通用する俳優になってほしいです。
「水を抱く女」ちょっと興味あったんですが、迷っているうちにこちらでは終映になってしまったみたいです。がーん、、、。
感想、お聞かせください。
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