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駿河土産 2 金銀貯うべき事(一)

(キンカンの葉にアゲハチョウの幼虫)

アゲハチョウの幼虫を見つけた。もう少し成長すると、緑色の保護色になるが、今は小鳥の糞にでも擬態しているのだろうか。少し目立つ。

駿河土産の解読を続けよう。

(2)金銀貯(たくわ)うべき事
一 権現様、江戸御新城より駿府へ御引き移り遊され候節、御本丸の御老中方を召させられ、秀忠様へ仰せ遣せられ候は、今度駿府御引き移り遊ばされ候に付、只今までの御貯え、金拾五枚御譲り遣わされ候。この金子ばかりにては不足に候間、これ以後、なおまた御金を相添えられ、その金子の義は、御用にても、私用にても、御遣いなされず、天下の金と思し召され、定式の御遣い方の儀は、御物成にて御仕廻(しまい)遊ばさるべく候。
※ 定式(じょうしき)- 定まった儀式・やりかた。定例。
※ 物成(ものなり)- 禄高の基礎となる年貢米の収入高。


天下を御取りなられ候上には、御貯えの金銀不足にても、苦しからずと御心得あられ候わば、宜しからず候。随分と無用無益なる物入りを御厭(いと)なられ、金銀御貯え成らるべく候。その金銀の御入用に、三つの品有り。

第一には御軍用のため。二つには、以前京、鎌倉などにてもこれ有りたる儀なり。この以後、江戸中の家屋一軒も残らざるごとくなる火事なども有るまじくにはあらず。左様の時は御居城の義は申すに及ばず、御城下の貴賤万民どもに、居所迷惑致さざるごとくの成され方も、なくては叶うべからず。

三つには、日本国中の儀は、所々に国主、郡主を言い付け差し置く儀なれば、大体の凶年などの義は、その所の守護たる者の力を以って、諸人飢え、こごえざるようの致し方も有るべきなれども、天地の変というものは、計り難き義なれば、打ち続きたる凶年なども、なくて叶わず、左様の時節に臨み、領分の民百姓どもを、領主の力を以っては、扶助いたしがたき旨、訴え出るに於いては、その守護/\に力を添え遣わし、私領の民百姓を助け救わすがごとく致すと有るも、これまた、天下を取る者の役なり。

(さて)また、蔵入の知行高、余計これ有り候へばとて、むさと人を取り立て、新知などを与え候事有るは、然るべからざる儀なり。
※ むさと - むざと。いいかげんにことをするさま。やたらに。
※ 新知(しんち)- 新しく手に入れた領地。


子細は将軍にも年若の義なれば、段々男子出生の義も有るべし。我らの末子に与へ置きたる知行高の数も有る儀なれば、いかに末子なればとて、将軍の子に五万石や七万石の知行をとらせては、差し置き難き義なるを以って、蔵入りの知行高を減らさぬように致され、然るべくとは云う事なり。これなどの趣、その方も能く相心得、将軍へも申し達し候え、と仰せにてこれ有り候となり。
※ 負(ふ)- めんどうな物事を背負い込む。身にこうむる。
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