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年金基金の代議員会

(気付かずにいたら鉢のクロッカスが花盛り)

今日は春一番というのであろうか、日本を横断する低気圧が発達して南風が吹き、最高気温は20度を越した。今朝は、旱魃の中国大陸から飛んできた黄砂が、浅間山の火山灰のように、車のフロントガラスを汚していた。昼間は何とか空は持ったが、今夜半から雨が降り出している。いよいよ春の到来であろうか。

しかし、世界経済に春の兆しは無く、一進一退を繰り返している。午後、業界の健保組合の組合会と年金基金の代議員会があって、静岡に出かけた。健保組合は派遣業の人員激減が響いて運営を苦しくしており、年金基金は株価の下落で、資金運用上大きなマイナスになり、ITバブル崩壊後の危機に続いて2度目の危機を迎えている。年金基金の前回の危機では、厚生労働省の緩和措置によって、多くの年金基金が破綻をまぬがれ、その後の市場の恢復で危機を脱出していた。

年金基金の会合では、今朝新聞各紙で報道されたニュースに話題が集中した。サブプライム問題やリーマンショックによる世界的な株価下落で、企業年金の資産運用が大きなマイナスになっているのを受けて、厚生労働省は12日、年金財政の運用基準を緩和する方針を固めた。運用がマイナスになって、将来の年金給付に備えた積立金が不足する場合は、企業に追加拠出を求めるルールとなっているが、緊急措置として1~2年猶予するか、追加拠出を求める基準を引き下げるというもので、4月以降に省令などが改正される。

新聞によると、厚生年金基金の運用実績は05年度21.08%、06年度4.62%とプラスだったが、07年度はマイナス12.03%と過去2番目の厳しさで、08年度も、20%程度のマイナスとなる可能性が強いという。当年金基金も似たような状況で、厚生労働省の緩和措置頼みの状況であった。

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自宅に戻ると必ず庭にいるムサシの名前を呼ぶことにしている。しかし、たいがいは知らん顔のムサシである。ムサシが自分の領分だと思っている芝生の中に入ると、見境無く、鼻にしわを寄せて、うなり、吠える。たまに機嫌がいいと飛びついて来る事もあり、テニスボールをくわえて来て、ボールを投げて遊べという。ボール投げも二度までで、三度目はボールをくわえて来るが、そばへは寄ってこない。飽きっぽいのだ。何とも愛想のない犬である。

ところが女房の留守が続いて、最近ムサシの弱みを見つけた。散歩のあと、女房がかなりの時間ブラシを当てているのを思い出して、昨日、櫛を持って芝生に入ってみた。櫛を見つけてムサシが飛んできて、身体をすり寄せる。櫛をあてて欲しいのだろう。しばらく、櫛をあてたり、白い冬毛をむしってみたり、スキンシップが出来た。調子に乗ってむしっていたら、痛かったのかワンと吠えた。
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北川正恭氏講演会

(北川正恭氏講演会)

午後、S銀行の新春講演会で、浜松に会社のK氏と出掛けた。会場は浜松駅前の浜松名鉄ホテルである。講師の北川正恭氏はかつて三重県知事としてユニークな活躍をして知られている。と言いながら、北川氏の知事としての活躍を十分理解しているわけではなかった。演題は「トップの決断~持続可能な地域・組織~」である。

1944年生まれの64歳、自分より二つ年上である。S銀行の頭取の後に出てきて、銀行のお偉方がまた出てきたと勘違いしたほど、バンカーだと聞いても納得してしまうような風貌であった。

組織のトップは時代の転換期に当っては、日常的な改善ではなくて、非日常の決断をして、断固たる決意で事を進めなければならない。明治維新、敗戦後の復興期、そして100年に一度といわれる経済的な危機の今が、明治以降の三大転換期である。

敗戦後、日本のトップに立ったのは、現首相の祖父の吉田茂首相である。吉田茂が考えたことは、東西陣営の内、西側の欧米を選択して戦後復興をはかった。経済に重きを置き、軍備は軽くして日米同盟で補うと決め、一時は中央集権、傾斜生産方式で、少ない資源を集中的に活用して、復興をはかると決断した。その後、アメリカの援助とその後に起った朝鮮戦争の特需で一気に経済復興へと進む。その中では、吉田茂-岸信介と続くこわもての首相の断固たる政策遂行が大きな効果をあらわした。ついにプラザ合意という円相場の切り上げで一ドルは240円から120円さらに79円まで切りあがる。このプラザ合意は敗戦国の日本とドイツに、戦勝国が頭を下げた瞬間であった。

現在の危機に際して、麻生首相も安心できる年金や介護、医療などを維持しながら、子や孫にその付けを回さないために、決断をして政策を決めたら断固として推し進めることが必要である。どちらにしても三代続いて首相が国民の信を得ていない今の状態では何も出来ない。政策をマニフェストにまとめて早急に総選挙を行い、国民の信を得なければ、どんな政策も実行できないのが当然である。

もっともな話であったが、この講師は麻生首相にどのような決断を迫っているのだろうか。それについての発言が一切なかった。口ぶりでは消費税の増税を勧めているようにも聞こえた。

こんな風にまとめて書くとすっきりするけれども、講演はいろんなところに話が飛び、言いたいことを理解するのに難しい講演であった。

最後に県議や知事の時代の話になると、話が具体的でわかり易くなった。金を中央に握られている結果、地方役人は国の方ばかり見ていて、国の意向を絶対的なものとして、住民をそれに従わせることしか考えていない。県知事時代に言っていたことは、立ち位置を住民側に変えて、国に物申す地方役人になろうということである。

住民側も公からむしりとる事ばかり考えていては駄目で、私の努力と公の努力で、国の都合に引きずられない、自発的な持続可能な改革が出来るという。

北川氏は次期総選挙に打って出るのであろうか。
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佐高信氏講演会

(佐高信氏講演会)

昨日の午後、S信用金庫の新春講演会で、島田に出掛けた。講師は経済評論家の佐高信(さたかまこと)氏である。2時半開場、3時講演を2時半講演開始と思い込んで、2時過ぎに着いてしまった。およそ1時間、暇つぶしにメモしたのが昨日の書込みであった。

佐高氏の講演は何とも書き込み難い内容であった。地方の信用金庫がよくぞ人選したというような講師である。自分もよく知らなかったが、人選担当者も知らなかったのだろう。「私の講演は一度は呼んでもらえるが、2度目はないというのが特徴でして」というのは謙遜ではなくて事実なんだろう。

佐高氏の経歴を調べると、昭和20年生まれで、慶應義塾大学法学部卒業、学生時代は新左翼「フロント(社会主義同盟)」の活動家であった。高校教員や雑誌記者を経て、「週刊金曜日」を発行する、株式会社金曜日の社長をつとめ、評論や執筆活動を進めている。反権力の在野の論客といったところであろう。

たくさんの話がバラバラと出たからまとめようがない。以下に佐高氏の発言の中で、面白いと思った話を拾ってみる。

金融危機に端を発した異常なドル安を評して、「ドルは軍票である。軍事力を背景にして通用する貨幣だからである。アメリカは為替の感覚がない国である。世界がドルを中心に回ってきたから、意識する必要がなかった。」

バブルを作った責任として、「際限なく貸し出しを増やした銀行にあるというが、それを煽った大蔵官僚の責任を問う人はいない。北海道拓殖銀行が破綻したとき、後を受けたのが北洋銀行という北海道第3位の小さな銀行であった。こんな奇跡が起きたのは、当時の北洋銀行の頭取武井正直氏の力である。バブルに踊る中で、武井氏は不動産融資を一切許さなかった。大蔵はもっと貸し出しを増やせとけしかけたが、武井氏はこんな状況が長続きするはずがないという信念を貫いて、はじけたバブルの影響を一切受けなかった。」地元には渋銀と言われるバブルに踊らされなかった銀行もあると、静岡銀行にも言及した。

「敵は官僚である」と過激な発言をする。「何も判っていない大蔵官僚が日本を牛耳っている。彼らは日本のことを何も考えていない。ただ保身と天下り先の確保が彼らの最大の関心事である。現在のような政治状況はいよいよ官僚をのさばらせる。」

「本当の悪人は紳士面している。悪人面しているのは小悪人である。いつも槍玉に挙げられるのは小悪人の方である。」

「小泉・竹中改革は規制の撤廃の名のもとに信号機を壊してしまった。郵政民営化に見られるのは地方の切捨てである。赤字黒字で計ってはならないパブリックも切り捨てた。」

共感できる部分もあるが、話があまりに一方的で、気に入らない相手をバッサバッサと切り捨てる。彼は自分の系図を、城山三郎-内橋克人-佐高信と並べる。対立するものに、長谷川慶太郎-堺田太一-竹中平蔵と並べて鋭く批判する。

多分、二度と呼ばれないだろう。
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3度目の福岡正行氏講演会

(講演する福岡政行氏)

昨日に続き、午後、S銀行の新春講演会の静岡会場に出掛けた。同行するS氏が車で自宅まで迎えに来てくれた。福岡政行氏の講演は一昨年の夏と、昨年1月23日に聞いており、ブログをはじめてから3度目である。会場はしずぎんホールユーフォニアであった。

演題は「激動の2009年 政局を読む」、このぐちゃぐちゃの政局を福岡氏がどのように一刀両断にするのか、聞きたい講演であった。正月であるが、おめでとうとはとても言えない経済、政治状況であるという言葉から講演が始まった。最初、幾つかの政治上のポイントを話す。

1.渡辺喜美元行革大臣の離党や、松浪健太内閣府政務官の定額給付金案への棄権などをみると、支持率が15%しかない麻生内閣はもう2ヶ月も持たない。
2.本予算が通ったら、森、青木が出て麻生下しにかかる。与謝野氏がワンポイント選挙管理内閣で、総選挙になるシナリオがある。
3.小沢民主党代表の病気は仮病である。解散になったら病気を理由に党首を岡田克也(もしくは鳩山由紀夫、菅直人)に譲って政権を取る。小沢は自分の人気のないことをよく理解している。しかし、本当の勝負は来年四月の衆参同日選挙に置いている。
4.政界再編が起きるのは、今年の総選挙ではなく来年の衆参同時選挙に向けて起きる。
5.オバマ大統領に4年後の再選はない。アメリカの経済は4年で回復する可能性はほとんどない。実体経済の雄のビッグ3があの状態だし、GEまでが厳しい決算になっている。
6.キム・ジョンイルの健康問題はさて置いて、北朝鮮では何かが起きる。人民はすでに多くの実態を知っており、人民の中に動揺がある。
7.渡辺喜美氏は、過去官僚たちが政治を牛耳っているという。官僚出身の政治家が現役官僚とつるんで、官僚の権益を守るために強大な力を持っている。これを突き崩し、主権官僚から主権在民に取戻す国民運動を起こすという。仲間はいないが、最初は皆一人から始めるのだからと。

アメリカでは1990年、NASAが宇宙開発で一応の成功を収め、定員を激減させた。余った人材はニューヨークに行って、金融工学を駆使して金融商品を開発した。サブプライムローンの債券売買に至る仕組みは300頁に亘る数式が並んでいるが、理解できる人は世界に10数人しかいないという恐ろしい現実がある。ファンドはついに燃料や食料にまで手を出して、パンドラの箱を開けてしまった。経済はすべてバブルに通じると言った人がいたが、どう規制していくのか。リーマンブラザーズの若い社員の年俸が5千万円というようなめちゃくちゃには風当たりが強い。

政界再編の話では、平沼赳夫氏の「救国大連合」が一つの道だと思う。そのために平沼氏は薩長連合をまとめた坂本竜馬になると話す。3年間、救国内閣を作り、平成のニューディールとして、リニアの実現、太陽光発電、グリーンリボリューションなどを強力に進め、麻生さんのいうどこの国よりも早く日本が世界不況から立ち直ることが必要だという。

福岡氏の考えもそれに近いようであった。日本の製造業はまだまだ大丈夫で、すでに次の手を打っていると話した。色々と断定的な予言を話したが、結果が正しかったかどうかはすぐに答えが出る。
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2度目の浅野史郎氏講演会

(前座を始める浅野史郎氏)

午後、S銀行の新春講演会の掛川会場に出掛けた。パレスホテル掛川で講師は元宮城県知事の浅野史郎氏である。昨年1月18日にS信用金庫の新春講演会で講演を聞いたから、2度目である。

浅野氏の講演会は講演前に本人が出てきて前座を務める。今回も10分前に「早めに着いたので前座を務めます」と始めた。主催者は予期していなかったらしく、慌てて流していたビデオを止め、ライトを当てた。

ジョギングを始めて、マラソンに初挑戦したのが小笠・掛川マラソンで、掛川には縁があると始めて、ジョギング、ウォーキングが健康に良いという話を、巧みな話術で聴衆を引き込んでいく。講演前の発声練習だからといいながら、聴衆を駄洒落やユーモアで掴んで、講演の地均しをしているのだろう。隣りのおじさんなど、ゲラゲラ声を上げて笑っている。記憶に残った駄洒落やユーモアを三つ。「ゴルフは金が掛かるが、ジョギングはランニングコストゼロ」「健康に気を付けて、酒と女は2合(2号)までとしている」「司会に代わりまして一言ご注意を。講演が終りましたら携帯電話のスイッチを入れるのを忘れないように」

さて、講演が終って、面白く講演を聞き終えたというだけで、なるほどと思わせる話が無かった。去年聞いた話も幾つかあり、論調も通り一遍で、目新しいものは無かった。去年も物足りなさを覚えたが、今年はさらに話が雑駁で、心に残るものが無かった。それでも何かと探せば、幾つか頭に残る話はあった。

アメリカでは「金融工学」といわれ、冷戦が終わり国防に入れる人材が金融界にドッと入ってきた。リバリッジ(てこ)、サブプライムローン、ヘッジファンド、デリバティブ(派生商品)など、まやかしに近い金融工学の化けの皮がはがれた。

3年掛かるかどうか、いずれ経済は立ち直るけれども、何を持って立ち上がるかが問題で、新しい産業、電気自動車か、福祉関係、環境関係、農業など、諸国は立ち上がるときの準備を始めて一気に突っ走ろうとしている。

安倍さんは「美しい国」といったが、議論の余地がなくスローガンにならない。「うつくしいくに」を逆から読むと「にくいしくつう(憎いし苦痛)」になる。福田さんは就任のとき「貧乏くじを引くようなもの」と言った。二人とも止めるときに国民への謝罪の言葉がなかった。麻生さんの漢字の読みでは、多くの国民が自分の方が読めると自信を持っただろう。(「未曾有」を、みぞゆう、と読んだ)

浅野史郎氏はしゃべらしておけば止まらない “さだまさし” のような人だが、さだまさしの方が主張がはっきりと聞こえてくる。
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長兄の仕事の昔ばなし

(庭のマツバボタン)

従兄弟の葬式で、歳が11才離れた長兄が昔の仕事の話をしてくれた。長兄は大学の経済学部卒業後、地元の信用金庫に三年勤め、つてあって三重県の中小の水産仲買会社に入った。

入ってしばらくは漁業関連というなれない世界にカルチャーショックの連続であった。水揚げをして陸送に積み替える仕事に深夜まで汗を流したり、水産仲買という仕事を覚えるのに大変な思いをした。そのうち、総務、経理、財務といった仕事を一括してみるようになった。

引受けた当初、支払いに手形をたくさん発行していた。毎日毎日手形の支払日がやってくる。手形の不渡りは会社をつぶしてしまうから、日々の資金繰りが大変であった。手形で支払うと支払いは延せても結局利息以上の価格の上乗せがあることに気付いた。手形を全廃しようと思った。そのためには銀行から借り入れる必要がある。

高度成長の時代で事業は順調に規模拡大していた。ところが出た利益がすべて株主に分配して内部留保が何もなかった。一時配当を中止するなどして内部留保につとめた。銀行の信用も増して、銀行との取引も深まり、ほぼ思い通りに借り入れが出来るようになった。それで手形の発行を止めた。仕事が嘘のように楽になった。資金繰りは銀行がやってくれるようなものである。

事業が拡大している中で、会社所有の漁船や陸送のトラックがどんどん増えた。事故が多発して今度はその地獄が始まった。夜中に一本の電話が入り、トラックの死亡事故を告げるというようなことが何度もあった。気の荒い世界で事故など日常茶飯事であった。死亡事故の相手との交渉など、事故処理は気の重い仕事であった。手始めにトラックを一部チャーターにしてみると嘘のように楽になった。徐々にチャーターに切り替え、事故地獄も解消された。

それまで手をつけていなかった貿易の仕事を手探りで始めた。ターゲットは世界で水揚げされる高級魚介類である。何の情報も経験もないところに、商売の相手国を定めると、その国の大使館に行って取引業者を名簿から捜す。何十社もある会社だからほとんど当てずっぽうである。

当時何百万もするテレックスを買い、いきなり相手にテレックスを打った。向こうから返事が返ってきた。こちらにみえるなら歓迎するとの報に、現地へ飛んで魚介類の処理工場を見学し、買い付けを始めた。そんな仕事は実に楽しかった。高度成長が終わってバブルの時代が来て、輸入高級魚介類を売るのに苦労はなかった。すべて現金決済でお金が入り、儲かった。国も延べ10ヶ国に及んだ。電話に追いまくられて、当時まだ少なかった自動車電話まで設置した。

長兄の話はこのあとバブルがはじけて一変するのであるが、それはまた別の機会に書き込むこともあるだろう。65歳まで会社勤めをして、今は健康第一の悠々自適の人生を送っている。(明日は出張のため書込休む)
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映画「不撓不屈」を見る

(庭のヤブラン)

昨夜、テレビのBSアイで「不撓不屈(ふとうふくつ)」という映画を見た。高度成長直前の栃木で一税理士と国税局の熾烈な戦いがあった。法廷闘争にもなって七年ほど掛かった。「不撓不屈」はその税理士の戦いの記録である。飯塚事件という実話に基づいた高杉良の同名小説の映画化であった。

「不撓不屈」という四文字熟語はどこかで見たと思ったら、元横綱貴乃花が大関推挙を受けたときに「今後も不撓不屈の精神で相撲道に精進致します」と口上を述べたことで記憶していた。その程度にしか馴染みのない四文字熟語である。辞書を引いてみると「どんな困難にあっても決して心がくじけないこと」とあった。

高度成長に入る直前の昭和38年、栃木県鹿沼市と東京に会計事務所を開いている飯塚毅は、大企業に比べて脆弱な経営基盤しか持たない中小企業のために、「別段賞与」という制度を節税対策として勧めた。期末に利益が出るときは、従業員に期末賞与を出す。ただし個人への支払いはすぐには出さず、別段預金として預かり、企業側はそのお金を運営資金としても使える。節税できて資金繰りにも使える一石二鳥の方法である。現在の税法では許されないが、当時の税法の穴を突いた方法であった。

国税局は当然「別段賞与」を否認して訴訟になったが、国税局に勝ち目は無かった。それから国税当局の嫌がらせが始まった。叩けばほこりが出るとの調査や査察を延々と実施する。調査は会計事務所だけに留まらず、クライアントにまで及んだ。腰が引けたクライアントは次々と契約解除を申し出てくる。会計事務所側がわびを入れて非を認めるまで行う勢いであった。さらには検察まで動員して脱税を指導したとして事務所の4人の税理士が逮捕された。窮地に陥った飯塚毅は挫けそうになりながら、途中税務当局の行き過ぎが政治問題になったりして、結局7年にわたる裁判の末に会計事務所側の完全勝利に終った。

国家権力として国税局が発動した時の恐ろしさを改めた知った。税務官の「我々の背後には日の丸がついているのだ」という台詞は、だから自分たちのやることは国益に叶った正義であるという発想を如実に表わしている。

長年、企業の中で税務対策を仕事の一部としてやってきた立場として、思い当たることが色々とあった。現在では税法の整備も細かく行われて、国税局内部に納税者の主張を判断する機関や調査官の暴走を防ぐ機関もあって、昔のようなことは少なくなったとはいえ、国税局の権力は大変大きい。税務官の中にはそれを自分の力と勘違いして暴走する人もいるから注意しなければならない。

日本の税務は申告制を取っている。納税者が自ら計算をして納税する制度である。納税者が公平に扱われ、納得して税を納めることが理想であり、税務官の仕事はそれを助けることである。だから、納税者と喧嘩して税を取り立てる税務官は幾ら実績を上げても評価されない。

企業は生き物で日々新しいことが起きている。税法よりも企業の慣習の方が先へ進んでしまうことが多い。つまり税法が追いついて行かないのである。そのため、税法が随分不合理なことに気付く場合も多々あった。だから納税者としてその不合理さを勇気を持って主張すべきである。そういう納税者の声で不合理な税法は改められることも多いと聞く。そんな日頃の想いが再確認できた映画であった。
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伊藤洋一氏講演会

(伊藤洋一氏講演会)

昨日午後、S金融機関の講演会があって、静岡駅南のホテルセンチュリー靜岡に会社のS氏と出掛けた。講師は住信基礎研究所主席研究員で、経済ジャーナリストの伊藤洋一氏であった。テーマは「世界を読み解くキーワード」、今世界はかつて経験したことのない出口の見えない状況に陥っている。この状況をどう読み解くのか興味が膨らんでいた。

原油価格高騰、食糧価格高騰で、ロシアやアラブなど産油国や資源産出国に、まるで税金を取られるように富をむしり取られている。サブプライム問題で沈没寸前に見えるアメリカでも、カルフォルニアでは家を追われテント生活を余儀なくさせられるなど悲惨な状況だが、トウモロコシ畑の真ん中に点々とエタノール工場が建つオハイオのトウモロコシ農家では、穀物高騰の恩恵で大盛況になり、儲かった資金をどう運用するか、パソコンに張り付く農家ばかりだという。その税は収入に関わりなく世界の人々に平等に掛かっている。当然、収入の少ない低開発国の人々には厳しいわけで、民衆は食っていけなくなっている。

ベルリンの壁が崩れて以来、世界の多くの国々(特に社会主義国家を標榜していた国々)が市場経済に参入してきて、しばらく安い労賃によるデフレが続いてきた。安い労賃を売り物に成長してきた国々には豊かな人々も増えてきた。しかしこれからは安い賃金で労働力を得ることは難しい時代になる。原油。穀物などの高騰で、低賃金の労働者の不満は暴動へ繋がる。中国では年間8万件の暴動が起きているというし、韓国やモンゴルに起きている暴動も名目はともあれ、低賃金をもたらす経済への不満が原因と考えられる。

産油国、資源産出国に富が集まっても、それらのお金は投資や消費という形で必ず還流されてくる。問題は還流の恩恵にあずかる位置にいるかどうかであろう。幸いにも日本はそのポジションにいる。氏が「日本力」と呼ぶ日本の力は、小型車、低燃費車で世界をリードしている自動車業界に代表される。今やGMの株は時価総額でトヨタの30分の一、かつて支配下にあったスズキと同額にまで落ちてしまった。日本の企業にはそれだけの力がある。ただ、日本でも還流の恩恵を受けるところと見捨てられるところがはっきりしてくる。東京、名古屋、福岡などは恩恵を受けるが、札幌など多くの地方は取り残される。

それならば、どうして日本株がこれほどまでに売られるのであろう。氏はサブプライム問題が起きて、投機筋が一斉に換金しやすいものから換金して行った。サブプライム問題と関連の薄い日本株は換金しやすかったために、日本株が売られ、値下がりしてしまった。実力からすると明らかに売られすぎで、日本株は今週にも大幅に値を戻すと大胆な予測していた。

世界の金融機関がサブプライムという落とし穴に落ちてしまったのは、世界で金余り状況がおきて、金が多すぎたために、熾烈な運用競争となり、格付機関の評価も高く、高利が確保できたサブプライムにこぞって投資してしまったためである。

今後は、デフレの時代は終わりインフレ気味にはなるが、ごく局地的に済むだろう。債権は売られ金利は上昇傾向になるが、すぐに不況にはならない。発展途上国の、豊かになりたいという活動は止まらないし、インフラ整備の欲求は無くならないからである。

氏の話は自分の考えに近いものがあり、改めて考え方をなぞってもらったように感じた。ただ、大変楽観的な見方で、そうあって欲しいけれども、そんな風に世界が進むとはまだ信じられない部分も多い。
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軽自動車ディーラーの比較

(誓願寺のメタセコイア)

女房の軽自動車が購入してもう10年を越えた。3月の車検を機会にそろそろ換えるためにディラーに行くから付き合えという。風邪気味でボウーとしていたが、土曜日に出かけた。回ったのはDディーラーとSディラーである。

最初にDディーラーに行った。店はお客が次々に来て、商談テーブルもいっぱいだった。案内をくれたセールスを呼ぶと、忙しいらしく少し待たされた。目的の車も展示されていて、座席に掛けてみることも出来た。最近は軽自動車といっても、昔のような窮屈感はなく、車内がけっこう広い。商談テーブルに移って、女性事務員が飲み物の注文を聞きに来た。コーヒーなど数品目の飲み物から選べという。女房はコーヒー、自分は紅茶を頼んだ。車選びでも顧客の選択を重視してくれるように感じた。種々の説明の後、お話の中で一応見積りを作ってきますといって立ち、5分ほどでパソコンで見積書を作って来た。また、途中でこちらの意向と違う点に気付き、2、3分で差し替えてきた。キャンペーンの値引きと概略の下取りも入れて追い金の額まではじいてあった。

次にSディラーに行った。呼び出したセールスは早退したとかで、所長が応対してくれた。男性社員がお茶を出してくれた。ところが、見たい車が店頭には無かった。外の中古車の方に同機種があるといい、見に行った。見積書は後日担当セールスがうかがうという話で、所長では見積りが出せないようであった。何となく中途半端な気持で店舗をあとにした。

女房がどう判断するかは知らない。どちらの車が気に入っているのもわからない。ただ、今日の応対だけを判断材料にすると、所長が応対に出てくれたにも係らず、Dディラーに軍配を上げたい。

Sディラーの所長は、昨年は海外が活発で国内分の生産が追いつかず、国内の軽自動車の販売台数では二番手になってしまったが、今年は増産体制も整ってくるから、一位を奪回すると胸を張った。しかし、どうだろうか。すんなりと首位奪回ということになるかどうか疑問が残る。
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寺島実郎氏講演会(続き)

(咲き出した庭のサクラソウ)

安倍川の水が一部、完全に伏流水になって途絶えたというニュースを聞いた。あの安倍川の流れが絶えるなど初めて聞く。鮎などの溯上に影響がありそうだ。今日の雨で流れが戻っているだろうか。一方、春節の民族大移動に入っている中国では、時ならぬ大雪で民族大移動に滞りが生じ、浙江省杭州駅前には軍隊が出動して、列車待ちの帰省客のためにテント村が出現しているという。世界各地で気候変動がじわじわと起っている。

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(昨日の寺島実郎氏講演会続き)
世界経済に占める大中国圏(中国に、香港・台湾・シンガポールを加えた経済圏)の比重が年々大きくなって、日本の輸出入において、大中国圏がアメリカを越えてしまった。GDPも、ドイツを追い越し、4兆ドルとなって4.3兆ドルの日本を追い越し、世界第2位になることは時間の問題といわれている。また資源大国として、ロシアやオーストラリアの勢いも目覚しいものがあり、今やそれらの国々の人達にとって、日本の物価は比較的安くなり、買い物ツアーや観光客が日本に大挙して訪れる時代になってきた。

イギリスでは25年前のサッチャー改革以来、グローバル化により経済は成長を続けているが、発展は海外からお金が入ることによる成長で、技術革新とか物づくり面ではさんざんたるものである。10数社ある電力会社は1社を残してあとはすべて海外資本に握られ、自動車産業に至ってはすべて海外資本傘下に入っている。最近、老舗のジャガーがインドの資本に買収されるというニュースはショッキングであった。インドはもとイギリスの植民地であった国である。

小泉改革で日本はイギリスのサッチャー改革の後を追っていると言われてきたが、経済成長は果たせても実産業の部分で海外の資本に蚕食されて良いのか、考慮を要する点ではある。

企業物価指数を見ると、2000年を100とすると07年10月水準で、素材原料は199.5、中間財は115.7、最終財は92.3(うち耐久消費財79.1、非耐久消費財103.7)という極端なギャップを示している。

日本人が営々と蓄えてきた個人金融資産1500兆円が生かされていない。それらの資産は日本株を買うことにもなっておらず、低金利の預金等にあずけられているか、海外に円キャリーとして出ているかである。現在、日本株の60%は海外投資家が持っており、日本の株は割安と言われながら低迷している。もっと日本人の個人金融資産で日本株が買われても良いと思う。

これらの個人資産を都会と田舎の2地域居住の促進などによって個人消費へつなげるとか、金利を2ポイントぐらい上げて、その膨大な利息を個人消費につなげるとか、内需を上げる方策を取らなければ前述のギャップは埋まらず、日本の経済の閉塞状態に出口がないと考える。
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