名古屋市の繁華街・栄のど真ん中に立つテレビ塔。名古屋城と並ぶ名古屋のランドマークと言って良いでしょう。よその地方の人から「東京タワーのちっちゃいやつ」とか「札幌のテレビ塔に似ている」とか言われますが、何を隠そう名古屋のテレビ塔こそが日本の電波塔の草分けです。完成は1954年。日本でテレビの本放送が始まった翌年です。複数のテレビ局の電波を広い範囲に届ける日本で初めての「集約電波塔」として、東京タワーに先駆けて建設されました。高さ180メートルは当時日本一。名古屋の誇る100メートル道路の真ん中にそびえたつ雄姿は名古屋大空襲からの復興の象徴でした。
テレビ塔の設計は「塔博士」や「耐震構造の父」とも呼ばれた建築家の内藤多仲。日本の耐震構造設計の第一人者です。内藤は名古屋テレビ塔の完成を礎として、その4年後に東京タワーを完成させたほか、札幌のテレビ塔や大阪の通天閣など、その都市を象徴するタワーを全国各地で生み出しました。つまり東京タワーやさっぽろテレビ塔が「似たやつ」であって、名古屋のテレビ塔こそがオリジナルなのです。
この貴重な歴史的遺産でもある名古屋テレビ塔がこのたび重要文化財に指定されることになりました。歴史的な価値が高いとされ、テレビ塔としては初めての重文になるということです。アナログ放送の終了とともに電波塔としての役割は終えていますが、リニューアルを施されてホテルなども入っていて、今でも名古屋のシンボルタワーとしての役目を担っています。
子どもの頃は展望台へ階段で登ったりしたこともありました。大人になってからは、誰か名古屋観光に来ると、名古屋城とテレビ塔には連れて行きました。今ではテレビ塔の展望台よりも名古屋駅の高層ビルの方がはるかに高くて眺めは良いですが、「展望台好き」としては単に高ければ良いってもんじゃなくて、やはり地理的歴史的文化的な意味合いも含めて展望台には価値があります。PR下手な名古屋ですが、東京タワーよりも先に重文指定されるテレビ塔をもっと積極的にアピールした方が良いんじゃないんでしょうかね。重文指定を記念して久しぶりに登ってみようかな。