そして誰もいなくなった

　先月で会社の同期のOが退職しました。38年前に一緒に入社してコピーライターとして同じ部署で働いてきた仲間です。Ｏは定年退職後も再雇用で働いていましたが、先に辞めていきました。別の職場でまだ働くそうですが、もう何か特別なことがない限りは会う機会もなかなかなさそうです。

　6年前、僕がそれまで32年間いた広告制作の現場から今の事業推進の部署への異動が決まった時にＯと飲みに行きました。その時にはかつて若い頃に一緒に働いていた公私とも仲の良かった先輩のＮさんとＭさんも一緒でした。Ｎさんは会社の早期退職に応じて会社を辞めることにしていて、Ｍさんはちょうど定年退職する年という、それぞれが人生の転機になるタイミングでした。

　若い頃には頻繁に仕事終わりに飲みに行った仲間でしたが、この時は区切りだからということで久しぶりに一緒に集まって飲んで、お互いに愚痴をこぼしながら昔を懐かしみながら楽しく飲みました。そしてそれが４人で集まった最後です。いまＮさんは東京に拠点を移してしまい、Ｍさんは昨秋完全にリタイヤしてしまいました。Ｏが会社を辞めたことで誰もいなくなってしまいました。

　いつかそういう時が来ることは頭ではわかっていましたが、毎日職場で顔を合わせて仕事して遊んでいた頃は全く想像ができない未来の話でした。きっとそんな年になったら周りから親しい人もいなくなって、毎日が平穏で退屈なんだろうなと思っていました。ある意味ではそれは当たっていますが、ある意味では全然違います。20代に比べれば確かに平穏ですが、決して退屈ではありません。刺激的ではないですが楽しみはいくつもあります。去る人もいれば来る人もいます。要は年齢ではなく自分次第ということのようです。