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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

湯志鈞編著 『戊戌変法人物傳稿』 上下

2013年12月19日 | 東洋史
 開巻「前言」が「劉少奇同志の曰く・・・」で始まるのだが、中身は当時の情況にもかかわらず驚くほどイデオロギー色が薄い。
 巻二に譚嗣同の伝がある。以下、目に付いたままに彼についての理系学問に関する言及・記述を書き抜いてみる。

 好今文経学 (29頁。原文繁体字、以下同じ)
 又喜読王夫之《船山遺書》,亦嘗致力自然科学之検討 (29頁)
 議立算学格致館 (31頁)
 
 また彼の著作『仁学』について、「中国の民主主義の伝統を表現したもの」であると同時に「西洋の自然科学・社会科学」を組み合わせたものという評価がなされている。前者については、墨子の「兼愛論」、さきに名の出た王夫之の「民族民主学説」が、その根拠となっている。

付記
 譚嗣同の伝が阮元と羅士琳の正続『疇人傳』に収められていないかと大学図書館へ行って確認してみたがなかった。この書を繙いたのはそのためである。
 しかし裏付を看てみれば『疇人傳』の正編は1799年(清嘉慶四)、続編でさえ1840(道光二十)刊で、1865年(同治四)生まれの譚が載っているはずはなかった。
 しかしそのあと続けて編まれた『疇人傳三編』(1886・光緒十一)には、正続を編んだ阮元と羅士琳の伝が入っている。同『四編』(1898・光緒二十四)には班昭の伝が収められる。『三編』から女性の伝が収められるようになった。
 だが相変わらず同年に死んだ譚嗣同は相変わらずない。入れてもおかしくないと思うのだが、清朝の下では国家の罪人だったから憚られたのだろうか。

(北京 中華書局 1961年4月)