書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

林毓生著 丸山松幸/陳正醍訳 『中国の思想的危機 陳独秀 胡適 魯迅』

2012年03月04日 | 東洋史
 著者のキーワードは、“総体論的反伝統主義”もしくは“伝統破壊主義的総体論”。
 これは、中国の欠点(と見なされるもの)を、中国がこれまでに置かれてきた歴史的・環境的な文脈から分析・理解することなく、その時点における価値基準から、文化的な欠陥としてとらえ、すべて否定・破壊しようとする立場と、要約できるであろう。著者は、五四運動をはじめ、そのあとの文化大革命も、天安門事件にいたる学生・知識人運動(たとえば『河觴』)も、すべてそうであるというのだが(そして五四運動を担った陳独秀も、胡適も、魯迅も、みなそうだと)、どうかねえ。

(研文出版 1989年11月)