書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

三浦國雄 『風水・暦・陰陽師 中国文化の辺縁としての沖縄』

2012年10月25日 | 地域研究
 蔡温の文章・政策に見える風水思想に基づく表現や論理が果たして本心からの信仰によるのか(風水は疑似科学というか宗教にだから信仰と謂って差し支えあるまい)、それとも中国留学生・通訳あがりで自身も中国系である(唐栄出身)以上、レトリック、文飾として用いただけであるのか。この問題はむずかしい。過去に読んだ研究書では、真栄田義見氏は文飾とみなし、佐久間正氏は本心からの信仰によるものとしている。この書もまたどちらかといえばその見方に与する。前二者の見解の相違に判断がつきかねて、なにかヒントはないかと思い沖縄全体の風水ほかの歴史的情況を知ろうと繙いてみた本書だが、日本“本土”よりも風水が広く深く根を張っていることはわかった。
 
(榕樹書林 2005年3月)