書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

サアディー著 蒲生礼一訳 『薔薇園』

2009年11月09日 | 文学
 自分の蘊蓄を知らせようとして、他人の言葉を遮るものは自分の無知を暴露する!

  他人が問わない限り、
  賢者は返答をしない。
  たとえその言葉が真実に基づこうとも、
  饒舌者の主張は理に悖ると認められよう! (「第八章 文章の作法について」 本書394-395頁)

 「沈黙は金」とはわりあい普遍性のある美徳らしい。もっともこの考え方がもし、『旧約聖書』のソロモンの言葉、「黙っていれば愚か者でもかしこく見える」あたりに本当に淵源するものであれば、キリスト・イスラム教圏に広く見られるのは当然ではある。そしてそうであればさらに、ユダヤ教徒のあいだにもまた同様の価値観が存在するのであろう。

(平凡社 1964年2月初版第1刷 1980年7月初版第6刷)