『陳援庵先生全集』第九冊(台北 新文豊出版公司、1993年)所収のテキストをざっと眺めた。体裁は簡素、文体は明晰、必要なことだけを書き、内容・語句ともに無駄というものがない。清代学者の筆記や札記を見るようだ。これで、この著の日本語訳と注釈を読むのが楽しみになった。
カットが長い。撮影位置が低い上に固定されているから余計に長く感じる。当時はそれほど長いとは思われなかったのだろうか。香川京子さん演じる京子の清潔な美しさと、杉村春子さんの志げが見せる小商売の世界に染まった品のなさとに共に、平成にはない昭和の日本を感じる。