書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

サビロワ 『タタールスタン史 古代から現代まで』

2012年07月11日 | 西洋史
 ロシア語原題『Сабирова Д.К. - История Татарстана с древнейших времен до наших дней』

 教科書(大学初年級用?)だから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが、叙述にあたって出典がほとんどない。巻末に参考文献リストもないし、史料紹介もない。索引も、人名・事項ともに、ない。
 これだけでも萎えるが、もっと萎えたのは「導言」で、“弁証法”やら“歴史の発展段階”やら“世界史の法則”やら、といった大時代な言葉がぼんぼん飛び出してくることだった。その結果タタールスタンの歴史のはずなのに、世界史の話が途中でやたらに出てくる、分厚さ(352ページ)の割に退屈なこの本は、買って損をした。

(М.: КноРус, 2009.)

森平雅彦 『モンゴル帝国の覇権と朝鮮半島』

2012年07月11日 | 東洋史
 どうも朝鮮(高麗)に肩入れしすぎているような印象を受ける。征東行省の丞相たる高麗王だったのか、高麗王が征東行省の丞相を兼ねていたのか。元との間で交わされた「咨」という文書形式は、内国(地方政府)扱いということだろう。その点について、著者は納得のいく答えを提示してはいない。

(山川出版社 2011年5月)