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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

小川剛生 『足利義満 公武に君臨した室町将軍』

2018年02月15日 | 伝記
 出版社による紹介

 西嶋定生氏の“冊封体制”論が、“劉邦集団”がいろいろ不味くなって「ならこれはどうだ」というくらいのノリで打ち上げた、その“劉邦集団”や、あるいは“二十等爵制”と同様の、主として頭のなかで捏ね上げた、いわばネタ程度のものだった(御本人の認識には関わらず)ということが、檀上寛氏の研究につづき、事実に徴してよくわかった。「第八章 北山殿での祭祀と明国通交」、とくに226-232, また235頁。

(中央公論新社 2012年8月)

中村健之介 『ニコライ』

2018年02月14日 | 伝記
 中井木菟麻呂(本書では木菟麿と表記)の事績が、やや詳しく記されている。彼の翻訳に対する姿勢や結果物の出来について、歴史家たる著者が後世からの視点に基づいて下す評価とはいえ、あまり芳しいものではない。一言でいってその任ではなかったという結論である。

(ミネルヴァ書房 2013年7月)

小川剛生 『兼好法師』

2018年01月20日 | 伝記
 出版社による紹介

 徒然草は『随筆文学』の傑作であると言われる。ただし日常雑多な話題を取り上げ、時に深い省察に及ぶスタイルが似ているというだけで、当時『随筆』というジャンル意識はない。
 (「第七章 徒然草と『吉田兼好、本書』203頁)

 近代人の概念は、整理に便利であるが、それに流されすぎては本末転倒である。 (同上)

 “これ”のわからない人が案外いて、驚くことがある。さきほども驚いた。それとも便利を本末転倒よりも取ったのだろうか。わからないふりだろうか。

(中央公論新社 2017年11月)

柴口育子 『アニメーションの色職人』

2017年01月25日 | 伝記
 昨年亡くなった保田道世女史の伝記。時期的には『もののけ姫』公開の直前。よって同作の話題が掴みになる構成。その後は女史の生まれから時を追って、最後にまた『もののけ姫』へ、そして女史の机の上にいま載っている次回作の原作本の存在へと――。

(徳間書店 1997年6月)

李商隠 維基百科

2016年11月04日 | 伝記
 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E5%95%86%E9%9A%90#.E6.96.87.E5.AD.A6.E6.88.90.E5.B0.B1

  李商隱的詩經常用典,而且比杜甫用得更深更難懂,而且常常每句都用典故。他在用典上有所独创,喜用各種象徵、比興手法,有時讀了整首詩也不清楚目的為何。而典故本身的意义,常常不是李商隐在诗中所要表达的意。

 そんなことより”象徵symbol”や”比興trope”が古代漢語の修辞法に印欧語そのままの概念で同じく存在するという証明はできているのか。なぜ彼が典故を多用するか(それも僻典まで)の答えは?
 李商隠関連の論考と著書数本を読んだ。李の「文体」を専心に探究するものにはいまだ当たらず。朦朧たる彼のスタイルはなぜ朦朧としているのか?いかにして朦朧たりえているのか?等の疑問あり。

山川三千子 『女官 明治宮中出仕の記』

2016年07月29日 | 伝記
 じつに興味深い内容。そして巻末原武史氏の「解説」に、この資料のさらなる深い読み方を教えていただいた。
 なおこれは原氏はなにも仰ってはいらっしゃらないが、大正天皇の「遠眼鏡事件」につき、著者の姑の弟がその場に居合わせて実見し、あとで姑とそのことを語り合っているのを著者が耳にしたという記述がある(「故郷に帰る」315頁)。著者本人の実体験ではないし、さらにその伝聞したことが本当だったとしても、それを目撃したという姑の弟氏が本当のことを言っているとは限らないからだ。さらにははるかな後年、ほぼ半世紀後における回想録であるこの資料には著者による無意識・意識的な記憶の歪曲や再構成もあろう。

(講談社学術文庫版 2016年7月、もと実業之日本社 1960年)

岡谷公二 『貴族院書記官長 柳田国男』

2016年05月27日 | 伝記
 人並はずれて自尊心が強く、きかぬ気で、どのような人間に対しても直言をはばからない国男 (172頁)

 たしかに、徳川家達との確執においてはその性質が余すところなく発揮されている観がある。それどころか、それをこえて、やや偏執的なほどの依怙地ささえ、感じないでもない。ただ、南方熊楠との絶縁に至る確執においては、あまりこの個性は現れないような印象を私は持つが、もしそうであるとすれば、それはなぜであったろう。熊楠が国男を凌駕する、同種の性質の持ち主であったからか。

(筑摩書房 1985年7月)

青柳かおる 『ガザーリー 古典スンナ派思想の完成者』

2016年02月10日 | 伝記
 13頁「イスラーム王朝交代表」は、たった1ページのなかにイベリア半島から東南アジアまで、7世紀から1945年までを一堂に収める壮大な細密。だが老眼の進んだ私にはよく歎賞できない。西ウイグル王国もカラ・キタイもモンゴル帝国も、色の塗り分けの具合が、イスラーム王朝の側に繰り入れられているように見えてしまう。

(山川出版社 2014年5月)