この著者はこんなに虚喝の甚だしい文章の書き手であったかとしばし戸惑う。取り上げた対象の事実とその背景を踏まえなければならない行文に、そのために必要な知識がついていっていない。
「焼け跡のイエス」「処女懐胎」「狂風記」「至福千年」、その疾走感が私のひそかな憧れとなったが――調べたこと過去にあらかじめ考えたことを書いていくのではなく、未知の未来へ現在を奔っていくという読中感――、あれは現代物や、あるいは時代物でも、作者の想像や創造に負う部分の多い作品だからこそ生きた筆法であったのか。
(岩波文庫版 1978年7月)
「焼け跡のイエス」「処女懐胎」「狂風記」「至福千年」、その疾走感が私のひそかな憧れとなったが――調べたこと過去にあらかじめ考えたことを書いていくのではなく、未知の未来へ現在を奔っていくという読中感――、あれは現代物や、あるいは時代物でも、作者の想像や創造に負う部分の多い作品だからこそ生きた筆法であったのか。
(岩波文庫版 1978年7月)