ことばは変わる

2009-09-30 17:48:29 | 本の話
田中克彦著『ことばとは何か』講談社学術文庫

田中先生は「ことばは変わる」と言われます。

確かに、人間の文化が変われば言葉も変わります。
「代掻き」といっても多くの日本人が分らなくなり
昔人間の私に「ログイン」がぴんと来ないように。

また言葉は使われていくうちに意味が変容します。

古くからある「かはゆし」現代語で「かわいい」は
平安時代では(恥ずかしい)や(可哀相)の意味で
使われていたようです。
若い女性に「オジサン、かわいい」とか言われて
にやにやするのはいかがなものでしょうかね。


誰かから「きさま!」と言われると殴られそうですし
「往生せい」なんて畳み掛けられると参ります。

元々は「貴様」も「往生」も良い言葉だったのですが。

日本語には、使い続けられるうちに悪い意味に移り
新しい語が代わってプラスイメージを担う
ということがしばしばあるようです。

アパートよりマンションが良さそう。

言葉と言葉の影響も大きいですね。
特に日本語は外来語をよく取り入れます。


ところで、言葉は保守的であるから意味が通じる
という面があります。
というか、それが基本です。

イヌはイヌというから通じるので
イナとかイネにしろと言われても困ります。
将来はエヌになるかもしれませんが
私の一生の間くらいはイヌでお願いしたい。

サバークでどうか、なんて止めてよね。


今は言葉の変わりようが激しくなっています。

(何気に)とか(ヤバイ)とか聞くと腹立ちますね。

本来と反対の方向に使うのは若者の無意識の反抗
かもしれません。
それに大人が乗ってはいけません。

教育関係者でも(校長クラスで)
「nantarakantara desu。 なので・・」と話を接ぎます。
迎合もいい加減にして欲しいですね。

そういえば大学の先生にも日本語がオカシイのが
よくおられます。
狭い専門の部分しか勉強が行き届かないみたい。

逆に無知で、みょうな日本語をしゃべるオバカ
の方が、勢いがあってよいかもしれません。
田中先生なら100%認められるでしょう。

何しろガチガチの学校文法を諸悪の根源と見て
おられるようですから。


でもメディアの発達した現代では言葉の変化が
従来とはまるで違うスピードで進みます。
田中先生はそのことへの言及がありません。

どんどん変わるに従って混乱も大きくなる。

「ばあちゃん、これ食べたらヤバイ」
「はい、先生の教えを他山の石とします」

これでは困りますね。

嫌われても大人がチェックしなければいけません。

マスメディアに見る言葉の乱れは、団塊の世代などが
若い子に嫌われまいと見逃すから進行するのでしょう。
役人と同じで、定年まで良い給料を貰って、ロコツに
嫌われなければよい・・かな?

言葉がダメでは、少なくとも文化を引き継げないでしょう。

国際人となるためには日本文化の習得こそが大切で
その基本は日本語にあると言うのに。。。

それを見て見ぬフリをしてきた大人の罪は重い。

たしかに「言っても聞いてくれません」けれどね。