「このミス」大賞

2018-01-20 09:37:50 | 本の話
『がん消滅の罠』岩木一麻
『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。

遅ればせながら読み始めました。
面白いですね。
さすが


好物の美味しい物を最初に食べるか
最後までとっておいて食べるか
人間は二通りの性格に分けられそうです。

弟は最初派、まずパクっといきます。
誰もとらん、ちゅーに。

私は最後派、どうやって最後にたどりつくか
それを考えながら食事を組み立てます。

その延長でしょうか美味しい物はじっくりと
味わうのが好きな方の人間です。

本でもそうですね。
一刻でも早くページをめくりたいのに
それが惜しくもある。

繰り返しじっくりと「その世界」に浸ります。


『がん消滅の罠』もそうですね。

病気の名前など難しい単語が並びますが
バースデーケーキの花火で
スルーしても本体は美味。

医学という深淵な世界が広がる文章を味わいながら
意外な方向に進む小説を楽しんでいます。

これで文庫@680はお値打ちですね。
皆様、お薦めですよ。
もうベストセラーですけれど。

2017-12-13 10:17:18 | 本の話
十年ほど前ですが大量に本を棄てました。(2000冊ほど)

母と同居していた家に置いてあったものです。
母の死後、片付ける必要がおき、今の我が家には
収納場所などありませんから処分するしか無かったのです。


さすがに若干の本は棄てるに忍び難く
無理をして持って来ました。

いくつかの全集と文庫本です。
本の状態も悪くカネメのものはありません。

あの世に行ったらカミサンが処分してくれるでしょう。
(私はこの性格ですからダンシャリできません)


どんな物を持ってきたかといいますと、たとえば

山川菊枝 『武家の女性』
長谷川時雨『旧聞日本橋』
圓仁   『入唐求法巡礼行記』
荻生徂徠 『政談』
大町文衛 『日本昆虫記』
今西錦司 『進化とはなにか』
シルヴァーバーグ『地上から消えた動物』
クライフ 『微生物の狩人』
宮本常一 『忘れられた日本人』
三浦つとむ『日本語はどういう言語か』
橋本進吉 『古代日本語の音韻に就いて』
佐和隆研 『仏教美術入門』
牧野富太郎『植物知識』
安藤鶴夫 『三木助歳時記』
西江雅之 『花のある遠景』
などなど。

どうしても(重目)になります。

少なくとも一貫性はありませんね。


これらの本はイメージなりとも残っていますから
まだマシかもしれません。

内容をまったく思い出せない本も沢山あります。
近年読んだはずの本でも。

読み返してみなければならないかと思っています。

もう新刊など買う必要はなさそうです。

文系でも阿呆系

2017-10-24 10:32:32 | 本の話
松浦壮著「時間とはなんだろう」

新聞の広告で見、カミサンに頼んでもらった本です。
2017.9第一刷

文系のしかもガタがきている頭にはブルーバックスはきつい
とは思いますが、そんな私みたいな人向けに分かり易く書かれた
(筈の)本です。

やはり難しい。。。。

私はそういう場合、理解できない処は「棚上げ」にし
ざっと流して読むようにしています。

何ね、また読めば良いのです。
何度も読んでモトを取るのです。


しかし、我ながら頭の悪さには嫌になりますね。

「ここが分からん」なんてもんじゃありません。
この本「どっこも分からん」


中学以来、アインシュタインの特殊相対性理論が
いまだにスッキリしないのです。
一般相対性理論になると完全にお手上げ・・かも。

分かるとはどういうことだ、なのですが、ね。

そこで止まっているのですから頭の固さが分かります。
文系でも、もうちょっとね、進歩しないと。

情けないながら
「ワシは馬鹿じゃのー」
しみじみ

名著『秀吟百趣』

2015-02-06 15:54:06 | 本の話
塚本邦雄著『秀吟百趣』講談社文芸文庫

香り高い名著です。

昭和53年、毎日新聞社刊の本をもとに昨年11月講談社より
文庫化されたものです。

簡潔に本書内容をまとめた宣伝を引用しますと
『漱石、白秋、・・・岡井隆まで。天才歌人が「今朗誦すべき」
 短歌・俳句を厳選、批評・解釈を施した秀逸な詞華集。』

取りあげた歌人の作から、塚本さんの選ぶ一首一句を紹介し
文庫2~3頁で文章をつけられています。

勉強になりますね。

すでに知っている作品でも塚本さんの解説で
奥深い世界が開けます。


塚本邦雄は前衛の天才歌人。
長い間、敬遠していました。

あるとき、古い歌の簡単な解説を目にし
認識が変わりました。
作品が前衛だからといって歌の基本0は共通。

たいへんに細やかで深い世界に誘われると
分かったのです。

(遅かった・・)

詩人の文章は多く名文ですが塚本さんも凝縮された
名文を書かれます。

御存じない方にお勧めいたします。


たとえば村上鬼城

たいへんに有名な句を取りあげておられます。

『冬蜂の死にどころなく歩きけり』

情景も浮かび易く、私でも知っている句です。

塚本さんはこれを分かり易く解き深めます。
そうして巷間、しばしば比較される一茶との
決定的な違いを指し示し、鬼城の人生まで簡潔に
描ききります。


ただし、この本に、若い方には注意が必要かも。

表記が、正字正仮名遣いなのです。
もちろんその方が圧倒的に正しいのですが
慣れないと初めはつらいかもしれません。

『男の嫉妬』

2014-08-23 16:51:10 | 本の話
山本博文著『男の嫉妬』ちくま新書

副題が「武士道の論理と心理」となっており
いわゆる男性の嫉妬と女性の嫉妬なんて話ではありません。

山本先生は一般向けに江戸時代などの実相を
解いて下さる著書が多数ありますね。

ならば本の題も『武士の嫉妬』でよいでしょうに。


この先生、一般向けだからか、論理が粗いことが
しばしば見受けられます。
現代語訳も「そこまでは書いてないだろう」があり
どうもお考えの訴え方が一方的でキツイようです。

こんな先生の下にいたらシンドイのでは?

しかし、それはご本職の守備範囲内ですから
塾のおっさんが何かいうべきではないかもしれません。
きつい反論を頂く前に引っ込むべきかな。

ただね、この本の真ん中あたりに、江戸時代の嫉妬を
話していて急に現代に話が飛ぶのです。
これには驚いた。

江戸時代の話から急に、とある学者の大学紛争批判を引用し
学生にも「嫉妬」があった、と。

『・・そうした嫉妬の影を見る方法にはある種の
 説得力がある。
  現在でも、社会正義を実現するための内部告発に
 そうした影が見られる。』

嫉妬が本当にあるのかどうか存じませんが
微妙な話にずいぶんな断定ですね。
細かい話はありません。

それって飲み屋の話のレベルちゃうか。


本文の江戸時代の話でも強引なところがあります。

(嫉妬が影にある)と言われても・・ホント?
どうとでも言えそうな話を強引に。


現代でも「嫉妬」は使いやすいレッテル貼りです。
卑怯な使われ方も多いのではないか?

何かモノ申せば「嫉妬すんなよ」と言われます。

嫉妬は世界中に存在しますが、上記のような
使われ方は、日本的な文化のありようですね。

既存の体制に順応すべし、
自ら考えることあたわず、とね。

『機雷』

2014-07-29 16:30:42 | 本の話
古い本があります。
光岡明『機雷』講談社

文庫にもなっているそうですが
手元にあるのは単行本
1982年3月、第6刷となっています。

直木賞を受賞し話題となっていたので購入した
のでしょう。

この本は父方の叔父から貰いました。

400頁近くあるし「戦争もの」だし、で手が出ず
つい最近、埃をはたいて開いてみました。

放っておいたからか本の状態は極端に悪いのですが
力強い内容に引き込まれています。

フィクションでなければ出版できないという(真実)
これを描いて秀逸な作品です。


時代掛ったものを表現するに、おおまかに二通りの
方法があります。

時代を設定に借りるだけで内容は現代であるもの、と
時代をきちんと再現しようとするもの、と。

後者が圧倒的な仕事量になります。
朝ドラのようなちょろいものは前者(今のもひどいね)

もちろん前者がただ無責任なだけに終始しているとは
申しませんが、人々の感覚をミスリードするので
安易な筆はご遠慮願いたいですがねえ。
金儲けだからどうでもいいのか。


逆に時代をそのままに再現しようというものは
読み手が御粗末だと、その当時の人間が分からず
活字を追いつつも理解できないでしまう恐れがあります。

なぜ戦争に赴いたのだろう?とか
心の底から死を恐れなかった人がいるとか
私が今の中学生なら理解できないかもしれない。

だれも責任をとらず、何となく戦争になったのは
分かるような気がします。
現代がそうですからね。


叔父は戦時中は学生でした。
商船学校に行ったようですから少し年齢が上なら
海軍に入るコースだったはずです。

彼がなぜ「この本をやろう」と言ったか
今になって分かる気がします。

遺言のようにして伝えたかった(真実)
カッコよくもヒロイックでもない戦争

今、新刊で出ても誰も読まないでしょうね。
戦争ごっこばかりが受ける世の中です。

時には乗らない本がある

2013-10-11 19:58:00 | 本の話
季節が大きく動くとダルいですね。

そのせいもあるのか、読んでる本のうちの一つが
気にいりません。

大学の超偉い先生の本にジュクのおっさんが
ケチつけても笑われますがね。

貰った本です。
従って、できれば読んでおきたい。
自分が買ったのなら、バカだったと諦めればよい
ですが、頂いたものを途中で放り出すのは失礼。

日野龍夫著『江戸人とユートピア』岩波現代文庫

定価千円ですから勿体ないでしょう。

文献の引用だけでも勉強になる、とチビチビ読んでは
放りだし・・


名文家というのだそうです。

私にゃ、よー分かりません。

「しかし、ただ、また、それでも、さらに、むしろ・・」

宝石なのか、屑石なのか、一杯ちりばめてあります。
何を、ちょーしのっとるねん。

読み飛ばすのなら別ですが文を追うには
くねくねとした話は堪りませんね。

で、どっちやねん?と思うこともありますが、
偉い人は「二つのハザマでゆれうごく感性が分からぬか」
と仰りそうです。

確かに、微妙な話であったり、留保の多い主張であったりすると
突っ込まれないように書くのも大変です。

でも、それを読めるようにして初めて名文じゃないの?
正確にガチガチ書いて悪文ってのはよくありますよね。

気力・体力の落ち込む時期に手にするのではなかった。

『文明崩壊』読了

2013-09-14 11:18:23 | 本の話
やっと読了しました。

6/25に触れてからでも随分たちます。

私は本を何冊も並行して読むタイプです。
(読みかけのままになった本は数しれません)
それにしてもちょっと長かったですね。


途中でルワンダの大虐殺に関係する話が
数十頁あり、ここで難渋しました。

読み飛ばせる人も多いと思います。

ただ、映画などでイメージを持ってしまったので
それまでまったく普通に行き来していた隣人同士の
フツ族とツチ族の衝突は実に気が重いものです。

我々の街でも同じように、あれよあれよという間に
敵味方になり、普通の人が普通の人を殺す危険が。

数行読むたびに「なぜ?」という気になり
また「人間の本性に潜む残虐性」を考えさせられ
状況次第では人は変わる(戦場の行為)こと
そして、転換は恐ろしく早くやってくること
・・気が重くなるばかりです。


全体的に、重い話が多い本で、これじゃあ
日本では売れないか、という気もします。

けれども、多くの人が浮かれてばかりいて、
科学的に証明されるまではとタカをくくってて
大丈夫かどうか。

証明された時は手遅れだった、などということの
ないように、危険そうなことから手をつけねば。

日本は比較的自然環境に恵まれているので
逆に危機感が育ちづらいようです。

地球も日本列島も耐えられる一点を超えたとたん
どっと変わるハズですが。

『文明崩壊』

2013-06-25 17:30:05 | 本の話
ジャレド・ダイアモンド著『文明崩壊』
草思社文庫

上下で合わせて千頁を越える分厚さです。

しかも活字がびっしり、1頁に段落がひとつあるかなしか
ですから「読みごたえ」は十分すぎるほどですね。

買って暫くは手をつける気にならなかったのですが
読み始めると、さすがジャレド・ダイアモンド
読み飛ばせないほど内容が濃く、面白い。

とはいえ、まだ(上)の半分しか読んでいないのですが。

筆者の姿勢が良いですね。
できるだけ偏らないようにとされているようです。

大ヒットの『銃・病原菌・鉄』は面白く分かり易くしようと
沢山の内容をコンパクトに著し、結果、多少ながら
乱暴な印象が残りました。

この『文明崩壊』はじっくりと書き込んでありますね。
第2章「イースターに黄昏が訪れるとき」で約80頁
いままで多少は知っていたつもりのイースター島を
総合して捉えられる気がします。

しかも現代の地球人に繋がる問題として。

引用します。

「イースター島と、総体として見た現代の世界とのあいだには
瞭然たる共通点がある。・・・
イースター島社会は、わたしたちの前途に立ちはだかりかねない
ものの隠喩として、最悪のシナリオとして・・」

ここだけを示せば極端な印象がするかもしれませんが
地球の抱える問題として十分に納得できることが書いてあります。

自分たちを支えてくれているものは何か、自覚が浅いまま
それを壊したとき、ただ一個の孤立した世界は
崩壊に向かうしかないのですね。

地球温暖化であるとか、ないとか
CO2が原因だとか、違うとか
異常気象だとか、いや気候変動の範囲内だとか
・・研究は大切ですが、答えが出るまで何もせず
結論がでたときに手遅れになっていたらどうします?

ごちゃごちゃ言わずに出来るだけの事をする必要があります。
しかもサステイナブルに=持続可能なように。

ニーズから考えるのではなく、リスクから発想すべき時代です。

電気が要るから原発、というより
万一、事故になったらを重要視すべきでしょう。

勝ち組は現状を変えたがりません。
原発被害のリスクが小さい地点に立っていられるから。

日本は、文明の崩壊に向かったイースターと似てないか?

『漢字雑談』

2013-05-12 16:06:18 | 本の話
久しぶりに本の話です。
ついでに寺子屋。

高島俊男著『漢字雑談』講談社現代新書

いつもながら高島先生の本は勉強になりますね。

ちょっと難しい処もありました。
私は図形認識も弱いし、音にも弱い、と分かります。
というか、・・何か強いもの、あんのか?

一読では到底、頭に収まらない内容の濃さですね。
こちらの加齢かなあ。

ま、ともかく高島ファンには有り難い一冊です。


収録された30以上ものエッセイの中に、
少し毛色の変わったものがありました。

「日本は識字率世界一?」

統計の取れない時代の話に「世界一」はどうか
という話です。

「江戸時代後期は日本人のリテラシーが高かった
とは言えそう」というくらいが妥当でしょう。

それを現代人はすぐ「世界一」とか、言いたがる。

当然、そのリテラシーを支えていた(寺子屋)に話が
及びます。

ルビンジャー著『日本人のリテラシー』をひいておられ
最後に高島さんがまとめておられる処を、引用します。

「日本人は皆読み書きができるというのは
 西洋人の過大評価であったようだ」
・・ま、当然の話です。

途中2頁ほど(手習所=寺子屋)について規模や
授業のありようをまとめてありますが
さすがに簡潔明快ですね。

一点を除き、ドンピシャです。

江戸時代などを正確な筆で教えてくれる作家・佐藤雅美
さんの伝える寺子屋の空気と同じですね。
(佐藤雅美著『手習指南』など)

高島先生は、どうも筆がすべる面があるらしく
(さてそこまで言い切れるか?)という文があります。

上記の寺子屋部分にもちょっと偏った感覚がありました。

大学の先生が現代の学習塾を評価しきれないのも
仕方がないことでしょうかね。

「寺子屋は大騒ぎばかりして学習効果は疑問だ」という
感覚があふれています。

遊んで大騒ぎと言う面もあるでしょう。
そういう楽しい絵も残っていますね。

しかし、子どもの大騒ぎは現代も同じ。
江戸時代だから勉強何か全くしていない、とも言えませんし
逆に昔はみな大真面目とも言えません。

ただし、バカ真面目な子どもが現代よりか少ないとは
言えないでしょう。(現在より多めか?)

大騒ぎをして学習効果がまったく上がらない寺子屋では
成りたたないハズですよね。
真面目な子が許しません。

更に、現代よりも保護者の経済的余裕は少ないハズです。
彼らが遊び場でしかないような寺子屋に子供を行かせるか、
それも考えられませんね。
みんな貧しかったんだから。

たぶん現代と同じで(勉強もする、遊ぶ時には大暴れもする)
これが寺子屋の姿だったでしょう。

したがって高島先生の寺子屋評価は低すぎですね。


学習塾に対する人々の(微妙な軽視)(安易なイメージ)は
抜けないもののようです。

偉い人、有名な人、でもね。