今日も鹿児島県産の魚をご紹介。スズキ目・アジ科・ウマヅラアジ属のウマヅラアジ。
ウマヅラアジは従来はイトヒキアジ属の中に含められていたが、上顎唇の形状が異なっていたり、頭部の形状や鰓耙数に違いが見られ、最近は別属とされたりしている。イトヒキアジ属は1属1種で、ウマヅラアジ属はウマヅラアジScyris indicaのほか、東大西洋に生息するアレクサンドリアポンパノScyris alexandrinaの2種類が知られている。イトヒキアジは全世界の暖かい海にいるが、ウマヅラアジはインドー西太平洋、アレクサンドリアポンパノはアフリカ西岸と地中海南部に見られ、わが国のウマヅラアジ属はウマヅラアジのみが知られている。日本国内の分布は山口県日本海、宮崎、鹿児島、沖縄であるが、高知県などでも見つかってもおかしくはないだろう。イトヒキアジはその名の通り背鰭や臀鰭鰭条がよくのびる。写真は成魚なので鰭は伸びていないが、幼魚は背鰭・臀鰭・腹鰭の鰭条が著しく伸長する。ただ腹鰭は早いうちに短くなるようである。
写真は上顎の唇の様子。上唇の背縁は高くつきでているという、ちょっと変わった形をしているので、この形状によってイトヒキアジと見分けられる。イトヒキアジは丸みを帯びていて低いので見分けられる。見比べれるように写真を撮影しておきたかったが、イトヒキアジの正面から撮った写真がないのが残念である。つぎに大型個体が漁獲されたらご紹介したい。ほかにもヒラマナアジ属など、大西洋産のイトヒキアジによく似た形をしたアジ類にもこの特徴がみられる。
アジ科の特徴としては臀鰭の2本の棘が遊離していることがあげられるが、本種の場合それらの棘は退化的であるようで、この個体も少なくとも外見からは見えていない。オキアジなども同様に臀鰭棘が皮下に埋没するという特徴がある。
ウマヅラアジの背鰭棘
イトヒキアジ幼魚の背鰭棘
臀鰭棘だけでなく、背鰭棘も皮下に埋没してしまっており、外見上ないものが多い。また露出していても、背鰭に鰭膜がない。イトヒキアジの幼魚では背鰭棘を見ているのだが、その個体は幼魚であった。成魚だとやはり見えなくなってしまうのであろう。もっとも、このイトヒキアジの状態があまりよくなく(冷凍されたものを解凍したものなので)、背鰭棘が露出してしまったという可能性も否定はできないが。なお、このイトヒキアジの幼魚も腹鰭棘は外見からは確認することができなかった。
アジ科の魚は大きいもの、小さいものいずれも重要食用魚であり、美味しいもの揃いである。今回のウマヅラアジはお刺身でいただいたが、アジ科の魚はやはり刺身が一番美味しいと思っている。この個体は鹿児島県産で、うまーく台風を避けて無事、我が家にやってきてくれたのであった。この個体は鹿児島県の定置網に入網したものだという。田中水産の田中積さん、いつもありがとうございます。
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