(今回の投稿は2019年3月24日にオリジナル版を投稿したものですが、(株)桃鶴堂の社長にぶろぐを消されてしまい、データも復元できませんでした。そのため、ノン・オリジナルのものとなります。あらかじめご了承ください)
今回はちょっと変わった深場の魚のご紹介。スズキ目・ホタルジャコ科・オオメハタ属のヒゲオオメハタ。ヒゲオオメハタは名前に「ハタ」とあるが、ホタルジャコ科の魚であり、ハタ科とは縁遠い存在である。この間長崎県のイトヨリダイやイネゴチとともに我が家にやって来た魚である。
我が家にやってくる前は同じオオメハタ属の「ワキヤハタ」と思っていたのだが、ワキヤハタだと下顎先端に1対の棘があるほかに、下顎には棘がない。一方このヒゲオオメハタでは下顎の先端付近に多くの小さな棘がある。これを顎髭に見立てて「ヒゲオオメハタ」というのであろう。臀鰭基底はワキヤハタと比べると短く、オオメハタに近いものといえそうである。側線有孔鱗数についてはオオメハタと大部分でかぶる。またほかの日本産のオオメハタ属魚類とはやはり吻の小棘で見分けられる。
ヒゲオオメハタの黒色斑
ナガオオメハタは側線有孔鱗数がヒゲオオメハタよりも多く(ナガオオメハタでは48~51、ヒゲオオメハタ43~48)、ヒゲオオメハタの主鰓蓋骨棘間に黒色斑がある(矢印)がナガオオメハタにはそれがないことなどで見分けられる。
オオメハタ属は日本産のものは従来は3種とされていた。ヒゲオオメハタは2001年に新種記載されたもので、分布域は駿河湾以南の太平洋岸、土佐湾、東シナ海、中国広東省沖、オーストラリア北岸となっている。このほかにおそらく千葉県沖や日向灘にも分布しているものと思われる。本種は体長25cmを超え、この科ではそれなりのサイズにまで育つようである。主に深海の釣りや底曳網で漁獲される。この属の魚は釣り人に「しろむつ」とよばれ食用となり、刺身や塩焼きなどで好まれる。また練製品の原料としても適している。
今回のヒゲオオメハタは刺身で食した。左上のがそれ。右上はイネゴチ、下はもちろんイトヨリダイである。イトヨリダイは黄色い蛍光色の縦線が入るためわかりやすい。味はいずれもよいが、ヒゲオオメハタはその中でもとくに美味であった。今回のヒゲオオメハタは長崎 印束商店 石田拓治さんより。いつもありがとうございます。