今日のフィリピン魚はハタ科スジアラ属のアマダレドクハタPlectropomus oligacanthus (Bleeker, 1855)です。和名がありますが、日本には分布しない種類のハタです。
スジアラ属の種類は、太平洋・インド洋にかけて 7種類が知られ、西太平洋の暖海域には6種類が分布、うち5種がフィリピンに生息しているようです。日本産は3種類。
アマダレドクハタはいくつかの特徴で同じ海域に生息するスジアラ属魚類と区別できます。頭部にはこのようなライン状の斑紋があり、体側には雨だれの模様があります。胸鰭は黒い部分が多くコクハンアラPlectropomus laevis (Lacepède, 1801)にも似ていますが、体の背部に鞍状斑がありません。
英語名でHighfin coralgrouperとも呼ばれ、背鰭の軟条部の前方が長いユニークな形状をしています。成魚の背鰭軟条部の前方はもっと高くなるようです。臀鰭も似たような形状、尾鰭は湾入しています。各鰭には小さな青色斑があります
こちらはオオアオノメアラ Plectropomus areolatus (Rüppell, 1830)の背鰭軟条部、臀鰭、そして尾鰭。丸みを帯びたり、尾鰭後縁がまっすぐであるなどでアマダレドクハタと区別できます。
アマダレドクハタはフィリピンでは市場でたまに見られる種類のようです。ほかのスジアラ属魚類と同様に食用になっていますが、「ドクハタ」の和名があるようにたまに中毒を起こすことがあるとのこと。本種は日本には分布しないのですが、日本産魚類検索 (第2版) によりますと沖縄の魚市場でスジハタPlectropomus maculatus (Bloch, 1790)Plectropomus leopardus (Lacepède, 1802)の写真に「スジハタ」と紹介されていたり、古い本ではスジアラの和名を当てるべきところを「スジハタ」としていたりするなど、混乱を招く可能性があるのでPlectropomus maculatus (Bloch, 1790)には使わないほうがいいかもしれません。