花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

張込みにみる佐賀の風景 余話②

2022年08月08日 | レモン色の町

ロケ当日、佐賀市内は“日峯(にっぽう)さん”の夏祭りという設定であった。撮影期間は遅れに遅れていたのである。(“清張映画にかけた男たち”西村雄一郎著)

“日峯さん”とは、ロケ地でもある佐賀市内の松原神社で行われていた秋祭りのことである。昔から、農業都市は秋祭り、商業都市は(帰省者が集まる時期なので)夏祭りが多いといえる。四日市にもあてはまる。秋は諏訪神社のお祭り、夏は“港まつり”で商業者の祭りだった。伊勢湾台風以来、夏の祭りに統合された。その後、諏訪神社の秋祭りは復活されている)。当時、佐賀市には“夏祭り”がなかった。そのためエキストラで動員された市民は、夏用の法被を着せられ“涼しすぎる”の声が出ていた。

秋晴れの日、クレーンに乗せられたカメラでロケは行われ、集まった群衆とエキストラで大混雑となった。初めに監督の野村芳太郎から挨拶があった。「スタッフが大声で怒鳴ると思いますが、決して怒っているわけではありませんので・・・」みんなから笑いが出る。

男はつらいよ  僕の伯父さんより

郷土芸能「面浮立」は、松原神社に奉納される踊りのこと。鬼の面をかぶり、頭にシャグマ(毛)を付け、小太鼓をさげて五穀豊穣を祈る勇壮な踊りのことである。昔、佐賀の大名・竜造寺軍が、山口や大分など近隣の軍勢と戦った時、鬼の面をつけたことに由来する。

撮影が遅れていたため、秋祭りの期間に合わせて佐嘉神社では“矢野サーカス”(期間は10月9日~20日)がテントを張っていて、貞子がサーカス小屋の前を通るシーンが撮られている。撮影が8月で終わっていたら登場しないはずだった。そして、刑事が泊まっていた“肥前屋”には、サーカスの一団が宿泊していて、前宣伝のパレードも撮られたということだった(映画には採用されなかった)。

10日で終えるはずだった佐賀ロケ。ところが、それはとんでもない話だった。ロケ隊は1か月半も佐賀に宿泊することになる。松竹本社からは連日電報が届いた。「ロケヲチュウシシ イマスグ カエレ」

<補足> 祭りの中を追跡する大木実のバックに“赤穂”精肉店の看板がみえる。32年後、“男はつらいよ 第42作 僕の伯父さん”で、寅次郎がここでバイ(売り)をしているシーンがあった。