柴田悠『子育て支援が日本を救う:政策効果の統計分析』勁草書房, 2016.
社会学ということになっているが、マクロ経済学でもある。タイトルで「子育て支援」が強調されているが、それは福祉、すなわち厚生を高めるからよいという理由からではなく、あくまでも経済成長と財政余裕(税と社会保険料による収入から社会保障支出を引いた額)を改善するから良いという理由で肯定されている。
OECD28ヵ国のパネルデータを用いての統計分析で、期間は1980-2009年。採りあげられている変数は、一人当たりGDPから離婚率、開業奨励金のGDP比率など60以上にのぼる。このうちいくつかの政策の支出を要因として、政策実施の一年後の財政余裕、労働生産性の上昇率、女性の労働力率、合計特殊出生率、自殺率、子どもの貧困率などにどの程度影響するのかを探ったものである。一階階差一般化積率法推定なる分析手法を用いているが、僕にはよくわからない。いちおう図表は重回帰分析の結果のように読むことができる。
結論は公共事業を行うより保育サービスのほうが経済成長に対して効果的だということ。保育サービスは女性労働力率と合計特殊出生率を高め、それらが労働生産性を上昇させ、最終的には経済成長率が高まり財政余裕が改善されるという。財源の議論もあって、特定の税ではなく、所得税・相続税・消費税ほかいくつかの税を世論の反発を買わない程度に上げたほうがよいという現実的な提案がなされている。
政府も女性労働力率を高める方向で取り組んでいるわけで、結論に大きな驚きがあるわけではない(もちろん、まだまだ不十分という批判もありうるが)。本書のメリットは、それがどの程度の政策効果が見込めるのか、その程度を数値で示しているところだろう。ただし、仮説を立てて統計分析して数値の解釈をするという硬い記述が続き、読み物として気軽に手にとれるというものではない。一般向けではなく、まったき研究書である。
社会学ということになっているが、マクロ経済学でもある。タイトルで「子育て支援」が強調されているが、それは福祉、すなわち厚生を高めるからよいという理由からではなく、あくまでも経済成長と財政余裕(税と社会保険料による収入から社会保障支出を引いた額)を改善するから良いという理由で肯定されている。
OECD28ヵ国のパネルデータを用いての統計分析で、期間は1980-2009年。採りあげられている変数は、一人当たりGDPから離婚率、開業奨励金のGDP比率など60以上にのぼる。このうちいくつかの政策の支出を要因として、政策実施の一年後の財政余裕、労働生産性の上昇率、女性の労働力率、合計特殊出生率、自殺率、子どもの貧困率などにどの程度影響するのかを探ったものである。一階階差一般化積率法推定なる分析手法を用いているが、僕にはよくわからない。いちおう図表は重回帰分析の結果のように読むことができる。
結論は公共事業を行うより保育サービスのほうが経済成長に対して効果的だということ。保育サービスは女性労働力率と合計特殊出生率を高め、それらが労働生産性を上昇させ、最終的には経済成長率が高まり財政余裕が改善されるという。財源の議論もあって、特定の税ではなく、所得税・相続税・消費税ほかいくつかの税を世論の反発を買わない程度に上げたほうがよいという現実的な提案がなされている。
政府も女性労働力率を高める方向で取り組んでいるわけで、結論に大きな驚きがあるわけではない(もちろん、まだまだ不十分という批判もありうるが)。本書のメリットは、それがどの程度の政策効果が見込めるのか、その程度を数値で示しているところだろう。ただし、仮説を立てて統計分析して数値の解釈をするという硬い記述が続き、読み物として気軽に手にとれるというものではない。一般向けではなく、まったき研究書である。