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21世紀に必要となる新しい「読解力」らしい

2020-01-27 09:16:45 | 読書ノート
新井紀子『AIに負けない子どもを育てる』東洋経済新報, 2019.

  『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の続編。前半は著者らが開発したReading Skill Test (RST)の解説、後半はRSTに対応するトレーニング法や授業例の紹介である。AIの話はほんの少しだけで、国語教育論だと思って読んだほうがよい。

  RSTは6分野で構成される。1) 主語、術語、目的語を見分ける「係り受け解析」、2) 代名詞が指すものや省略された主語・目的語を把握する「照応解決」、3) 二文の意味が同一かどうかを判定する「同義文判定」、4) 常識を動員して意味を理解する「推論」、5) 図やグラフと文の意味が一致するかどうかを判定する「イメージ同定」、 6) 定義と一致する具体例を探す「具体例同定」である。著者は、これらを文章の正確な読み取りのために必要なスキルだとする。それぞれの分野の問題例が4つづつ紹介されており、一人1500円払えば受検できるとのことである。

  後半は、RSTの受容の現状や、RSTで試された読解力を伸ばすための授業方法の紹介である。付随して、義務教育における国語において文学的文章の比重が高すぎることや、教師作成プリントによくみられる「重要概念の穴埋め」形式が、論理的に読む能力を低めるものとして批判されている。

  以上。RSTが測る「読解力」は、これまで国語教育できちんと認識されてこなかったものだ。こうした「読解力を構成するパーツ」が、AI研究によって浮かび上がってきたというのが、個人的には面白かった。ただ、短文のテストで長文読解の能力を判定できるのか、という点は気になった。RST成績と長文読解力との相関はある程度存在するのは当然であるとしても、RSTによって測られていない他の「読解力を構成するパーツ」もあるのではないだろうか。
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