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金塊密輸DJのデビュー作は知られざる和製ボサの良品

2018-03-08 22:31:48 | 音盤ノート
Studio Apartment "Paraiso Terrestre" RD Records, 2002.

  今日DJが金塊密輸で逮捕されたというニュースを目にした。記事を読んでも「森田昌典?誰?」という感じだったが、Studio Apartmentのメンバーだったか。個人的には1stと2ndだけ聴いたことがある。1stはけっこう気に入っていて、今でもたまに聴くことがある。このアルバムがそれだ。

  この頃はまだ三人組で、DJ、ピアニスト、ベース兼打ち込み担当という編成だった。音はボサノバとアシッドジャズの混交ハウスである。阿部登のピアノソロは巧いし、ゲストの女性ボーカルも力みすぎることなく爽やかに歌う。けれども、洒落ているように装っていても、リズムとメロディセンスにどこか垢抜けなさも感じる。このあたり、Kyoto Jazz Massiveにも共通する和製ハウスの限界であり魅力でもある。軽やかさと同時にかすかに密室性も漂わせており、ちょっとしたカルト臭が感じられなくもない。

  そうした点が僕のツボだったのだが、メンバーとしては克服したい弱点だったのだろう。2ndの"World Line"(New World, 2004)になるとボサノバ要素が減少し、歌いあげるスタイルのボーカリストを雇って線の細さを払拭した。逞しく健康的な二人組ハウスユニットに変貌してしまった。僕の耳からすれば「普通」で面白くない。2ndは発売時に特典付きCDを購入したのだが、あまり聴くこともなく短期間で中古盤屋に売り払った。でも商業的にはこちらの方が成功したみたいだ。以降は彼らのことを追っていない。

  というわけで1stは打込みボサの愛好家は聴く価値あり。歌詞は英語とポルトガル語、およびスキャットで、洋楽のように聴き流せる。ただし、CDは廃盤のようなのでストリーミングで聴くべし。Studio Apartmentもこの路線に戻ってきてくれないかな。
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