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とある「博士号をもった司書」を偲んで

2016-11-21 22:18:01 | 図書館・情報学
  去る11月8日に気谷陽子先生が亡くなられた。享年64歳。僕は彼女の生前の最後の3年半ほどを仕事を通じて知っているだけで、このような話をネットで告知するようなかたちとなることには少々ためらいはあるのだが、彼女の講義を受けた人も多くいるはずであり、追悼の意味でここに記しておきたい。

  気谷先生は長らく筑波大学図書館に勤務し、その間に図書館情報学の博士号も得ている。実務経験と研究業績を兼ね備えた図書館の専門家だった。定年退職の前後から南関東のいくつかの大学で非常勤講師をはじめ、獨協大学、専修大学、聖学院大学など司書資格課程を置く大学で教鞭をとった。もっとも目立った仕事は、放送大学での講義「情報メディアの活用」の講師だろう。同タイトルの教科書では山本順一先生との共編著者として名を連ねている。放送大学での講義は今年7月末にも放映されており、それを見た知人は「おそらく撮影時期はずっと以前だろうが」と断ったうえで「お元気そうだった」と述べていた。このときはもうすでに体調を崩されていたのだ。

  文教大学では非常勤ながら2013年に司書資格課程を設置した時からの講師で、半期の授業を5コマ持って頂いていた。授業では大学図書館とコンピュータ教室を使ってベテラン司書のノウハウを学生に伝えていた。僕の母ほどの年齢だったが、受講生からは「かわいい」と評判だった。彼女も文教大の受講生の真面目な雰囲気を教えやすいと気に入ってくれていた。今年度初めの4月にガンで闘病中であることを僕に知らせてくれたが、投薬治療しながら日常生活を送り、前期は予定通り出講もするとのことだった。その際は血色もよく見え、いつもと変わりない印象だった。後期も1コマだけ出講していただいていたのだけれども、9月にお会いしたときは体調の悪い様子だった。そして10月に緊急入院した後に亡くなられた。

  文教大学でもうあと5—6年は一緒に働けると考えていただけに、とても残念である。始まったばかりで伝統も実績もこれからという本校の司書資格課程だったが、その船出に協力していただいたこともあって、僕としては感謝の言葉しかない。気谷先生、ご冥福をお祈り申し上げます。そして、ありがとうございます。
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