会社帰りにレイトショーで宮崎アニメ最新作の「風立ちぬ」を観てきました。
意識して予備知識を極力排除したため、あー、こういう映画だったのかと色んなことを感じながらの鑑賞となりました。
感想は「とても良かった!」です。
★★★★☆:90点でしょうか。
私の感性や好みにかなりフィットしました。
まだ観ておられない方が多数おられるはずなので、あまり細かいことは書かず、ストーリーは映画公式サイトにあったものを転記しました。
かつて、日本で戦争があった。
大正から昭和へ、1920年代の日本は、
不景気と貧乏、 病気、そして大震災と、
まことに生きるのに辛い時代だった。
そして、日本は戦争へ突入 していった。
当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?
イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、
後に神話と化した零戦の誕生、
薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。
この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く。
堀越二郎と堀辰雄に
敬意を込めて。
生きねば。
これまで、宮崎アニメでは「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」をベストスリーに挙げていましたが、そこに本作「風立ちぬ」を加えた4本をベストフォーというか四天王(?)とします。作品のテイストなどが異なるため、あえて順位はつけません。
宮崎アニメ特有の浮遊感・飛翔感は本作でも素晴らしく、更に作品名ともつながる「風」をこれまでの作品以上に強く感じました。風を切り裂いて飛ぶ飛行機(紙ひこうきも)、風になびく髪や草、風に飛ばされる帽子・傘、風と共に降り注ぐ雨、汽車のデッキで感じる風、爆風や火災による風・・・。爽やかで清々しい風もあれば、暗く重苦しい風もある。それらの描写が見事でした。
そして、風だけでなく、光と影、緑、木洩れ日、青空、雲、雨、雪、水辺や水面などの自然描写の美しさ。建物(煉瓦造や石張り、下見板張りの洋館。離れや縁側といった和館の佇まい、レトロな店舗 etc.)や街並みの描写の緻密さ、素晴らしさ。主題である飛行機はもちろん、自動車(バス)・汽車・路面電車などの乗り物へのこだわり。そして設計者・技術者魂と男たちのロマン。友情。師弟の絆。
愛も丁寧に描かれています(夫婦愛、親子愛、兄妹愛)。関東大震災が発生した日の菜穂子との運命的な出会い。軽井沢での再会。まさに純愛で、上司である黒川夫妻の媒酌で突然あげることになったひそやかな結婚式シーンの美しさ。終盤は悲しさ、寂しさも伴いますが、二郎と菜穂子の愛は短くも美しく燃えたのでしょう。
二郎の落ち着いた物腰、その一方で、夢にかける思いの強さと凄まじいまでの集中力なども印象的でした。また、二郎と共に必死に生きようとし、しかし、最後は自らの運命を受け入れる菜穂子の強さにも惹かれました。
ユーミンの主題歌「ひこうき雲」、久石譲のシャンソン風あるいはクラシック風の曲も素晴らしかったです。
レイトショーでしたが、最終的には若い人を中心に8~9割の入りだったでしょうか。ファンタジーではありませんし、作品的に子供をターゲットにはしていません。若い人は果たしてどこまでこの作品が描いた時代のことを心に受け入れたのでしょうね。
戦争が作品に大きく影を落とし、もちろん戦闘機や爆撃機、空母なども登場しますが、実際の戦闘シーンは殆どありません。戦争そのものを描いた映画や反戦を訴える映画などではなく、私は必死に生きようとした青春物語・純愛物語だと思いました。
映像的には飛行シーンの素晴らしさはもちろんのこと、私は序盤の関東大震災の映像表現に鳥肌がたちました。アニメ的な誇張があるものの、これは凄かった。。。また、サナトリウムの静謐なシーンも印象的でした。
この映画は万人向けではないかもしれません。
ですが、私は自信を持ってオススメします。
宮崎駿&スタジオジブリ、よくやった!