続・RC造とは何か・・・・窓のつくりかた

2009-07-16 11:32:04 | RC造

昨日、竣工後26年経つ建物を久しぶりに訪れた。
RC壁式構造:壁だけでつくる:の「心身障害者更生施設」(この名称は、役所用語)である(下段の写真は、建物の玄関まわり)。一部二階建て。改修と増築をすることになったための下見。

屋根は寄棟型をRCのスラブでつくり、要所にRCのリブ:補強梁を入れた構造。逆さにすれば、いわばRC製の舟。スラブ厚は10cm(設計ではそれ以下だったが、打設のことを考え、重くなることは承知の上で、10cmにした記憶がある)。
この逆舟型に直接アスファルトシングルを葺いてあるが、これまで、雨漏りはまったくない。

上の写真は、この建物でつくった窓のいくつか。
左2枚は、基礎から屋根スラブまで、上から下まで全面を開口にして、腰壁をコンクリートブロックで積み、天井~屋根スラブまでは「小壁」をつくって所定の開口をつくっている。

右は、浴室の窓。面積の制約で(註参照)、壁際まで目いっぱい使うため、やむを得ず、通常のRCの壁に窓を開ける方式を採った。
当然開口補強筋を入れてあるが、ものの見事に、と言うより、「RC壁に孔をあけると、こうなりますよ」という見本のような亀裂が入っている。

左の2枚のような方式がすぐれていることが歴然と分る。

なお、RC面とブロック面には塗装をかけてあるが、塗装は当初のままである。

この建物では、写真を撮らなかったが、RCの厚10cmの枠を四周にまわした出窓をつくった場所もあるが、これもまったく亀裂は生じていなかった。土蔵の窓の額縁と同じ効能である。


この「施設」は、いわゆる「心身障害者」をかかえる父母が集まり、基金を自らつくり、東京都の助成を受けて設立した建物。
そのため、乏しい資金でつくらざるを得ず、ぎりぎりの面積になった。
そして今、居住者の高齢化がすすみ(開設当初は10代~20代が中心だった)、それへの対策をも含め、30周年の記念事業として、改修・増築で質の向上を目指している。

例の「構造改革」路線、簡単に言えば、「何となく抗いがたい響き」を持つ「自己責任」という「御旗」の下に、「金にならない」ことからは手を引く、という国の方針全盛の中で、このような施設の運営・維持は年を追うごとに厳しさが増しているという。

そのあたりの「役所」「役人」の「したたかさ」は、大変見事なものだそうである。
「一旦決まったこと」(自立支援法、後期高齢者医療制度・・・など)の非が指摘されると、納得した、改める、とは口では言っても、決して文章にしないそうである。証拠を残したくない、つまり「自己責任」をとりたくないらしい。

あるいは、「一旦決まったこと」はそのままにして、それに追加して改めたふりをする。
つまり、元を正さず姑息な方策を加え、積み重ねるのだそうである。
その結果、本当は簡単なことも複雑になる。役所独特の手続きが増え、そして役人の仕事は増え、仕事場所も増え・・・、その一方で「施策」のなかみは劣悪化する。
それに加えて、こういう「役所」「役人」に「錦の御旗」を授ける役をすすんで担っている「御用学者」の存在も見逃してはならないようだ。

建築の場面で起きていること、進んでいることとまったく同じなのには「感嘆」した。
この国は、いったい何処へ行こうというのだろうか?

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 組積造・土塗大壁の開口部-... | トップ | 暑中お見舞い・・・・落水荘 »
最新の画像もっと見る

RC造」カテゴリの最新記事