山手線はlocal線だ・・・・「地方」とlocal

2007-06-07 00:03:45 | 居住環境
 東京など都会と「地方」の「格差」が話題になって久しい。
 ところで、この「地方」という語、英語では何と言うのだろうか。

 最近、茨城県では石岡と鉾田を結んでいた鹿島鉄道が廃線になった。この鉄道のことを、多くのメディアは「ローカル鉄道」と呼んだ。各地に「ローカル鉄道」「ローカル線」と呼ばれる鉄道がある。
 日本語の「ローカル」、その意味は多分「田舎」である。要するに田舎の田園を走る鉄道を「ローカル線」と呼ぶ「風習」が日本にはある。「ローカル」の語の、このような日常的な会話での「理解」は、まあよしとしよう。
 だからと言って、その日本語の語源である英語“local”の意味が「田舎」であると理解してしまうと大きな禍根を残すだろう。英語“local”には、そんな意味はないからである。

 ところが、あるとき、都市計画・都市工学を専攻する大学生に“local”の意味を問うたところ、大半が「地方」=「田舎」「田園」・・の意と答えた。と言うことは、おそらく多くの都市計画の専門家も(「都市」「都会」に対する)「田舎」の意味で、この語“local”を理解しているのではなかろうか。そして、もしかすると、翻訳書などにも、この「誤解」を基に訳された専門書があるかもしれない・・・。

  註 そのとき、ついでに、“local”の対語は何か、とも訊ねた。
    その答の大半は、“central”“city”であった!
    「都会と田舎」「中央と地方」という対立軸で考えている証拠。
    さらにその裏に、「地方」は「中央」に劣るという意識、
    「田舎」は「都会」よりもダサイという意識、が垣間見える。
    その昔、都に向うことを「上り」、地方へは「下る」と言った
    その《名残り》か?
    
    ちなみに、かつては京都へ向うのが「上り」、
    今は東京に行くのが「上り」。鉄道はそうなっている。
    ところが、関西のJRでは、〇〇方面行きと言い、
    「上り」「下り」を使わないのをご存知ですか。
    東京行きを「上り」と言うのが、「伝統」に反し
    気分として不快だからか・・?


 このような「誤解」が日本人に根深く存在することを熟知していたからであろう、研究社の英和辞典は、“local”の項に、わざわざ次のような注釈を付している。いわく

  『首都に対するいわゆる「地方」の意ではなく、
  首都もまたlocalである;cf.provincial』

 つまり、localとは、「ある地域の」、という意味。だから、local線とは、複数の地域を結ぶ鉄道ではなく、地域内の鉄道というのが語の本来の使い方。ゆえに、本来の意味に立ち返れば、東京の山手線は立派な「ローカル線」。

 本当に「地方」のことを考えるにあたっては、ややもすると陥りやすいこの誤解:「中央と地方、都会と田舎という対立概念で考える考え方」:から脱する必要があるだろう。

 私は、誤解を招きやすい「地方」ではなく、「地域」という語をなるべく使うようにしている(このブログでも)。

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