耐震診断・耐震補強の怪-2 の 補足

2009-10-24 10:33:17 | 地震への対し方:対震

先回の終りに、かつての日本人の「補強」の考え方の一例として「慈照寺・東求堂」の小壁を例にしていますが、「木造住宅読本」では、もう少し詳しく書いていますので、その箇所をそのままスキャンしました。上掲のコピーです。

要は、かつての日本人は、建物を「日常」のためにつくったのに対して、
現在の法令では、建物は「耐震」のためにつくるかのように変貌をとげている、と言ってよいでしょう。
極端な言い方をすれば、「日常」は、耐震のためなら犠牲にしてよい、そういう考え方なのです。

かと言って、かつての日本人が地震について考えなかったわけではありません。
日本が台風や地震に頻繁に見舞われることは百も承知。
そのような状況下で、「日常」を、いかに維持するか、それが彼らの念頭にあったのです。
あたりまえの話です。

上掲の解説にも書きましたが、現在の建築家・建築学者は、開口部を広くとりたいという住み手の気持ちを無視して、壁で塞いでしまうでしょう。
現に、耐震補強の例として、今でも農家建築に多い二間続きの座敷(大抵は八畳ないしは十畳二間)の間仕切:襖部を、補強のための耐力壁で仕切ってしまう策が、模範例として提示されているほどです。

人は耐震のために毎日を過ごすのではありません。あたりまえのことです。
「技術の意味」を忘れたくないものです。

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